JR各社から2025年ゴールデンウィークの列車利用状況が発表されました。大阪・関西万博の効果に加え、「パンダ返還」のニュースが加わって、紀勢線特急「くろしお」が大きく利用者数を増やしました。
JRの在来線特急について、詳細をランキング形式で見ていきましょう。
ゴールデンウィークの利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表します。このうち「2025年ゴールデンウィークの利用状況」がこのほど発表されました。各社の情報をまとめて、「全国在来線特急利用者数」をランキングにしてみましょう。
2025年4月25日~2025年5月6日の12日間の統計です。比較として前年比を掲載しています。
在来線特急利用者数ランキング2025年大型連休版
※配信先で表が崩れる場合は、こちらをご覧ください。
順位 | 列車名 | 区間 | 利用者数 (万人) |
対前年比 |
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1 | あずさ、かいじ、富士回遊 | 八王子~相模湖 | 34.2 | 108% |
2 | ひたち、ときわ | 我孫子~土浦 | 31.4 | 112% |
3 | リレーかもめ、みどり | 鳥栖~江北 | 23.7 | 98% |
4 | サンダーバード | 京都~敦賀 | 22.7 | 107% |
5 | マリンライナー | 児島~宇多津 | 18.6 | 108% |
6 | 成田エクスプレス | 千葉~成田空港 | 14.9 | 105% |
7 | ソニック | 小倉~行橋 | 14.8 | 98% |
8 | はるか | 日根野~関西空港 | 14.6 | 113% |
9 | 踊り子、湘南 | 横浜~熱海 | 10.9 | 109% |
10 | しおかぜ、南風など | 岡山~児島 | 9.7 | 99% |
11 | カムイ・ライラック・オホーツク・宗谷 | 札幌~岩見沢 | 7.7 | 98% |
12 | しなの | 名古屋~多治見 | 7.7 | 105% |
13 | くろしお | 和歌山~箕島 | 7.5 | 123% |
14 | 北斗、すずらん | 東室蘭~苫小牧 | 6.7 | 103% |
15 | しおかぜ、いしづち | 多度津~伊予三島 | 6.6 | 104% |
16 | しおかぜ | 児島~宇多津 | 6.4 | 102% |
17 | わかしお、さざなみ | 東京~蘇我 | 5.3 | 92% |
18 | きのさき、まいづるなど | 二条~亀岡 | 4.8 | 98% |
19 | ひだ | 美濃太田~下呂 | 4.7 | 107% |
20 | しらさぎ | 米原~敦賀 | 4.7 | 102% |
21 | やくも | 岡山~新見 | 4.2 | 83% |
22 | 南風 | 児島~宇多津 | 4.0 | 104% |
23 | 南風、しまんと | 多度津~阿波池田 | 3.6 | 107% |
24 | いなほ | 新潟~村上 | 3.0 | 98% |
25 | おおぞら、とかち | 南千歳~トマム | 2.7 | 95% |
26 | こうのとり | 大阪~三田 | 2.7 | 102% |
27 | 宇和海 | 松山~宇和島 | 2.6 | 103% |
28 | スーパーはくと | 姫路~上郡 | 2.4 | 97% |
29 | スーパーはくと | 智頭~鳥取 | 2.2 | 97% |
30 | うずしお | 高松~徳島 | 2.2 | 96% |
31 | しらさぎ | 名古屋~大垣 | 1.8 | 102% |
32 | 草津・四万 | 高崎~渋川 | 1.3 | 100% |
33 | ふじかわ | 富士~富士宮 | 1.0 | 93% |
34 | しまんと、あしずり | 高知~窪川 | 1.0 | 102% |
35 | 南紀 | 松阪~紀伊長島 | 0.9 | 96% |
36 | ふじさん | 御殿場~山北 | 0.8 | 80% |
37 | しらゆき | 直江津~長岡 | 0.8 | 97% |
38 | つがる | 弘前~青森 | 0.8 | 110% |
39 | スーパーいなば | 智頭~鳥取 | 0.7 | 96% |
40 | サンライズ出雲・瀬戸 | 静岡~浜松 | 0.7 | 102% |
41 | スーパーおき | 新山口~益田 | 0.6 | 94% |
42 | いなほ | 酒田~秋田 | 0.5 | 97% |
43 | リゾートしらかみ | 秋田~青森 | 0.4 | 98% |
44 | 伊那路 | 豊川~本長篠 | 0.2 | 104% |
※マリンライナー、リゾートしらかみは快速列車。
上記のランキングは、JR各社から広報発表された数字をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。列車によっては複数区間でランキングに入っています。
「あずさ」「ひたち」強く
今回のゴールデンウィーク期間の調査対象日は4月25日(金)~5月6日(火)の12日間の統計です。
4月26日~29日が飛び石連休、5月3日~6日が4連休という日並びで、連休が前後に分かれました。全体的に利用者数は堅調だったものの、連休前半が飛び石だったこともあり、近場への旅行者が多かったようです。
トップは中央線特急「あずさ」「かいじ」など。ついで常磐線特急「ひたち」「ときわ」が続きます。この顔ぶれは例年通りで、前年比8%、12%増と好調でした。
「くろしお」にパンダ効果
前年比で最大の伸び率となったのは、紀勢線特急「くろしお」です。対前年比23%増は、他を寄せ付けない圧倒的な数字でした。
「くろしお」利用者増の理由は、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドが、ジャイアントパンダ4頭全てを中国に返還すると発表したことでしょう。
発表日は4月24日で、返還日は6月末ごろの予定。見に行くならこのゴールデンウィークしかない、ということで、多くの観光客が特急「くろしお」に乗り、白浜に殺到したとみられます。
「はるか」は万博効果
関空特急「はるか」も、対前年比13%増と高い伸び率を記録しました。いうまでもなく、4月13日に開幕した大阪・関西万博の効果でしょう。国内外からの観光客が大阪を訪れたようです。
同じ空港特急でも、「成田エクスプレス」は5%増にとどまりましたので、万博の誘客効果が高いことが見て取れます。
北陸新幹線延伸の影響落ち着く
北陸新幹線敦賀延伸開業から1年を迎えた湖西線特急「サンダーバード」も7%増となりました。万博効果もありますが、前年に全車指定席化の影響で利用者数が伸び悩んだので、その反動もありそうです。
北陸線特急の「しらさぎ」は2%増。首都圏から福井県の旅客が北陸新幹線経由に移ったため、利用者が減少していましたが、1年を経て落ち着いたようです。
「やくも」に席数減の影響
首都圏や近畿圏の特急はおおむね堅調でしたが、地方の特急は前年割れとなった列車も多くみられました。
大きく数字を落としたのは伯備線特急「やくも」です。前年比83%と振るいませんでした。昨年のゴールデンウィークは、新型車両273系の投入直後とあって人気を博しましたが、1年を経て、ブームも落ち着いたようです。
旧型車両381系に比べて、273系は座席数を絞っています。昨年はまだ381系が走っていましたが、今年は完全引退したので、席数減が利用者数の減少につながった側面もありそうです。(鎌倉淳)