JR北海道は、札幌から旭川方面を結ぶ特急列車について、全車指定席とする方針を明らかにしました。先行して全車指定席化した函館・帯広方面の特急列車で導入したイールドマネジメントの成果を踏まえたようです。
道内特急を全車指定席に
JR北海道は、2025年度の事業計画を発表し、そのなかで、旭川・北見・網走・稚内方面への特急列車「カムイ」「ライラック」「オホーツク」「宗谷」「サロベツ」について、全車指定席とする方針を盛り込みました。
実施時期は2025年度中としており、2026年3月ダイヤ改正でおこなわれる見込みです。
JR北海道では、2024年3月のダイヤ改正で、室蘭・函館方面の特急「すずらん」「北斗」と、帯広・釧路方面の特急「とかち」「おおぞら」について、全車指定席化をおこなっています。
旭川方面の特急列車が全車指定席化されれば、北海道内の在来線特急の全列車が全車指定席となり、自由席がなくなります。
割引は「トクだ値」に統一
JR北海道では、2024年の「北斗」「おおぞら」などの全車指定席化にあわせて、割引制度も見直しています。
具体的には、駅で発売する割引きっぷを廃止して、「えきねっと」の「トクだ値」に統一しました。トクだ値では、需要に応じて価格が変動するイールドマネジメントを導入しています。
JR北海道では、「カムイ」「ライラック」などの全車指定席化について、「イールドマネジメントシステム効果を最大化」することを理由に挙げています。
イールドマネジメントで成果
では、道内の特急列車は、これまでの指定席化施策とイールドマネジメントにより、収支が改善したのでしょうか。
JR北海道の収入概況によりますと、2024年4月~2025年2月の実績で、特急列車が走る主要都市間3線区の利用者数は、前年比105.1%です。
一方、おもに特急列車の収入を示す「中長距離収入」は、対前年比111%です。
おおざっぱにいえば、2024年春に函館・帯広方面で全車指定席化を実施し、割引きっぷにイールドマネジメントを導入した結果、2024年度の特急の利用者数は5%増、収入は11%増という実績を残しているわけです。
利用者は主要3線区、収入は中距離全体の数字なので、正確な比較ではありませんが、傾向としては「利用者増を上回る収入増」を実現していることがみてとれます。全車指定席化とイールドマネジメントの導入は、JR北海道において成果を上げていることになります。
こうした実績を背景に、旭川方面でも全車指定席化を実施することになったのでしょう。
客離れも発生
特急列車の自由席料金は、通常期の指定席料金の正規価格より530円安く設定されています。そのため、利用者からみると、自由席廃止は負担増につながります。
インターネットで指定席の割引きっぷが販売されるとはいえ、自由席の割引きっぷを駅で購入するよりも、面倒と感じる方は多いでしょう。そのため、全車指定席化による客離れも懸念されます。
実際、2024年度の利用状況をみると、札幌~岩見沢間の利用者数が前年比108%なのに対し、東室蘭~苫小牧間は103%、南千歳~トマム間は99%となっていて、全車指定席化を実施した区間は、未実施の区間より利用者数が伸び悩んでいます。
自由席を廃止することによる客離れが、ある程度、発生していることを示唆しています。
収入増のデメリットが大きく
しかし、ライバルとなる高速バスは、運転士不足で減便を余儀なくされていて、利用者がバスに流れたとしても限定的にならざるをえません。また、運転士不足を背景に、バスも今後は値上げを余儀なくされていくでしょう。
あとは普通列車への流出ですが、これについては、JRの利用に変わりはないので、痛手は小さいでしょう。
こうした状況から、JR北海道としては、利用者の逸失というデメリットよりも、収入増のメリットが大きいと判断したとみられます。
フリーパスはどうなる?
旅行者として気になるのは、自由席が乗り放題のフリーパスの扱いがどうなるか、という点でしょうか。
これについては、「北斗」「おおぞら」などの全車指定席化の際に、座席指定を受けないで乗車した場合、空席があれば着席できるという運用が開始されました。「カムイ」「ライラック」などでも、同様の扱いになりそうです。(鎌倉淳)