JR西日本が京阪神地区から山陽、山陰方面に向かう「新たな長距離列車」を2020年夏までに導入すると発表しました。豪華列車「トワイライトエクスプレス瑞風」よりも低価格で、気軽な鉄道の旅を提案します。JR西日本の発表や、各社報道などから、現在わかっている情報をまとめてみました。
117系電車を改造
JR西日本の「新たな長距離列車」は、2016年11月に導入が予告されていました。その概要が発表されたのが、2017年6月20日の来島達夫社長の定例記者会見です。
それによりますと、「新たな長距離列車」は、複数の種類の座席とフリースペースを組み合わせた編成です。各社報道によりますと、車両は「新快速」などで活躍した117系6両編成を改造して使用します。朝日新聞6月20日付によりますと、定員は約100名です。
列車の編成イメージは、「グリーン車1列+2列」「普通車2列+2列」「普通車コンパートメント」「フリースペース」「フルフラットシート(ノビノビ座席)」「グリーン車個室」といった形です。フリースペースは乗客が食事などで自由に利用できる位置づけで、いわゆる「ロビーカー」のようなものとみられます。
多様性、カジュアル、くつろぎ
JR西日本が挙げる列車のコンセプトは、「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」。「多様性」とは、複数の種類の座席を設置するとともに、時季によって複数の区間を運行することなどを示します。
「カジュアル」はリーズナブルな価格設定などを示します。「くつろぎ」は、快適性の高い設備と、利用者が歓談や食事で自由に使えるフリースペースにより実現します。JR西日本では「リーズナブルな価格設定としながらも高い快適性を提供して、『カジュアル』と『くつろぎ』の両立をめざします」としています。
車両のデザイナーは、株式会社イチバンセンの川西康之氏。これまでに、えちごトキめき鉄道のリゾート列車「雪月花(せつげっか)」の設計デザインや、土佐くろしお鉄道中村駅のリノベーションなどを手がけています。営業運転開始は、「2020年の東京オリンピック前まで」を目指すとしています。
夜行運転も予定
JR西日本は、この新列車を「地域と一体となった観光振興推進策の一環」と定義したうえで、「西日本各地の魅力に触れていただきたい」としており、観光周遊列車と考えているようです。走行区間は京阪神~山陽・山陰などで、期間を定め複数の区間を運行します。
117系を起用したことから、走行区間は直流電化区間に限られます。山陰といっても伯備線経由で出雲市までしか行くことはできませんし、「瑞風」のような西日本一周ルートの設定はできないと思われます。北陸方面へも行けません。
日本経済新聞6月21日付は「京阪神から山陰または山陽方面を1泊2日で巡る。(中略)瑞風と同様に立ち寄り駅で観光するほか、地域の名産品の販売も検討する」としています。また、朝日新聞は「夜行の運転も予定している」と報じています。
本格的な寝台車両が用意されていないので、夜行運転の場合、乗客は座席で過ごすことになりそうです。「ノビノビ座席」は30名程度しか収容できないでしょうから、定員100名全員が横になるのは難しいでしょう。
利用者のおもなターゲットは、シニア世代や訪日外国人とのことなので、一晩座席で過ごしてもらうのは大変ではないかと、ちょっと気がかりです。
きっぷは駅で販売されるか
価格ですが、毎日新聞6月20日付によりますと、「指定席特急料金がかかる程度」とのこと。各地で走っている一般的な「観光列車」と同じような価格体系になるのでしょう。
たとえば大阪~出雲市(397.2km)の乗車でA特急料金を適用すると、指定席で3,110円。運賃6,480円とあわせて、片道9,590円となります。
「瑞風」のようなツアー扱いの団体臨時列車になるのか、駅の窓口で指定席券が販売される不定期列車になるのかは、はっきりとした情報はありません。ただ、JR西日本は「『気軽に』『自由に』ご利用いただける」としていますので、団体臨時列車に限られない可能性が高そう。
そうなれば、途中乗車、下車もできますので、自分の旅に自由に組み合わせることができそうです。(鎌倉淳)