「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第5弾 茅野~上田城を分析する。休日運休が厳しくて

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河合チームの検証

ここからは、河合チームのルート検証です。河合チームは茅野駅から諏訪市、松本市を経て上田市に入るルートを選択しました。これを「松本ルート」と呼ぶことにします。

最初に疑問に思ったのは、茅野駅から上諏訪駅まで、車山高原経由のバスで2時間半もかけたことでしょう。それだけ時間をかけるなら、上諏訪駅まで歩いた方が早いのでは?と思った方もいるのではないでしょうか。

茅野駅から上諏訪駅の距離は約7km。歩けば2時間程度ですから、確かに歩いたほうが早いです。が、そんなに歩かずとも、諏訪市内に入ってしまえば、コミュニティバスを利用することができました。

▽1日目
茅野駅→徒歩2.8km→諏訪ステーションパーク10:15→10:54片倉館前→徒歩0.7km→諏訪湖間欠泉センター(☆諏訪市)

このように、11時頃に諏訪湖間欠泉センターに着きます。

間欠泉が噴出する時間は9時30分、11時、12時30分と1時間半おきです。片倉館前に10時54分に着いて、700メートルを7~8分で歩いたとしてギリギリです。ただ、噴出している時間は5~6分程度ありますので、寄り道さえしなければ、何とか噴出中に写真を撮ることはできたでしょう。

間に合った場合、次のように乗り継げます。

▽1日目
茅野駅→徒歩2.8km→諏訪ステーションパーク10:15→10:54片倉館前→徒歩0.7km→諏訪湖間欠泉センター(☆諏訪市)→足湯前11:36→11:50下諏訪駅→徒歩0.8km→諏訪大社下社秋宮(☆下諏訪町)→タクシー4.7km、概算1,940円→あら川(☆岡谷市)→徒歩1km→岡谷駅13:40→13:59岡谷市看護専門学校前→タクシー13.5km、概算5,440円→塩尻駅前→徒歩0.4km→元祖山賊(☆塩尻市)

あら川はうなぎ店なので、焼くのに時間がかかると思われ、上記のように実際に乗り継げるかは微妙ですが、実現可能性のある最速ルートとしては上記のようになります。

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松本まで先を急いだら

上記のように、岡谷駅13時40分のバスに乗れれば、塩尻峠の近くの岡谷市看護専門学校前まで到達できます。そこからタクシーに乗車したとして、塩尻市の陣である元祖山賊に、15時前には着けそうです。

塩尻市の陣である元祖山賊の営業時間は17時からなので、これをスルーして村井駅まで歩くと仮定すると、以下のようになります。

▽1日目
岡谷駅13:40→13:59岡谷市看護専門学校前→タクシー13.5km、概算5,440円→塩尻駅前→徒歩0.4km→元祖山賊(スルー)→徒歩7.4km→村井駅16:54→17:24松本バスターミナル

このように、1日目に松本まで到達できます。ただ、無理して松本まで来たとしても、上田へのバスは17時20分発でギリギリ間に合いません。

となると、上田行きのバスは実際ルートと同じ2日目10時40分発になります。それまでの時間を使って、山形村のほか、朝日村か安曇野町を訪問したとして、諏訪・松本周辺で合計6陣は獲得できそうです。7陣以上は難しく、陣の数では実際ルートと同じ結果に終わります。

要するに、茅野から上諏訪方面へ歩いたとしても、実際ルートより多く陣を獲ることはできなかったということです。

塩尻峠越えの他のルートは

話を塩尻峠の前に戻しましょう。河合チームの大きな決断は、岡谷駅からタクシーに乗車したことでした。塩尻市内でバスが走っている可能性に賭けましたが、この賭けには敗れ、一行はタクシー代の大半を岡谷~塩尻間で失ってしまいます。

他に選択肢ないのかと検討してみましたが、塩尻市のコミュニティバスは休日運休ですし、辰野町方面も同じで、有効なルートは見つかりません。選択肢があったとすれば岡谷市に泊まることですが、まだ15時台でもあり、現実的ではなさそうです。

そう考えると、茅野市から諏訪湖方面に出てしまった以上、岡谷~塩尻間のタクシーは避けられなかったとみるべきでしょう。

結局のところ、松本ルートで、上田到着までに獲得できるのは、実際ルートと同じ6陣が限界に思えます。その意味で、河合チームにミスはなかった、ということになりそうです。

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松本発を遅らせたら

今回、河合チームの最大のクリーンヒットを挙げるとすれば、2日目に村井駅から山形村へ足を伸ばしたことでしょう。早朝のブルーベリーミッションで陣を一つ獲得し、松本市の陣も抑えた上で、上田市に向かった乗り継ぎは絶妙でした。

一行が松本バスターミナルから乗ったのは、10時40分発の上田行きです。

実は、松本から上田に向かう場合、鹿教湯温泉で乗り継げば、松本駅14時15分発でもゴールに間に合います。実際ルートより約4時間も松本の滞在時間を延ばせるわけです。

ただ、松本市郊外はバス路線が乏しく、4時間で増やせる陣があったとしても1つでしょう。かわりに上田到着が遅くなってしまい、上田市の陣を太川チーム奪われます。したがって、14時15分発まで松本で粘る意味はなさそうです。

上田で粘れなかったのか

実際の一行は、上田到着後、周辺に獲得できる陣はないと判断して、上田城に直接赴きゴールしました。疑問があるとすれば、ここでもう少し粘って他の陣を探せなかったのか、ということでしょう。

一行が上田駅に到着したのは12時10分。東御市方面に行くバスは15時12分までなく、長和町方面へ行くバスは16時30分までありません。坂城町へは、直通バスがそもそもありません。河合チームはタクシー代がほとんど尽きていたので、陣がどこにあるかわからないのに、むやみに打って出るのにはリスクがあります。

こうした状況から総合的に判断すると、時間が早くても先にゴールしてしまった方が、河合チームにとっては良策だったという結論になりそうです。

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立科ルート

さて、ここで、全く別のルートを検討してみます。河合チームが茅野駅から乗ったバスを、途中で乗り換えて立科町に直行するルートで、これを「立科ルート」と呼ぶことにします。

▽1日目
茅野駅09:20→10:00東白樺湖10:35→11:11立科町役場前→徒歩1.6km→蓼科牛いっとう立科本店(☆立科町)→徒歩1.6km→立科町役場前13:00→13:39佐久平駅→北斗の拳デザインマンホール(☆佐久市)→タクシー7.5km、概算3,140円→御代田駅→みよたん顔出しパネル(☆御代田町)→タクシー9km、3,640円→小諸駅→徒歩0.3km→丁子庵(☆小諸市)

このように、立科町を経由することで、立科の陣を確保したうえで、佐久平駅に14時前に到着できます。当然、佐久市の陣も確保可能です。

「陣取り合戦」において、重要な戦略は敵の進出方向の先手を取って塞ぐことです。その点、立科ルートなら、太川チームより3時間以上早く佐久平駅に到着し、先手を取ることができます。その先、上記のように御代田町、小諸市とタクシーでつなげば、17時頃までにそれぞれの陣を確保して、太川チームの進路を塞ぐことができたでしょう。

太川チームは佐久平駅に着くのが17時半頃なので、そこまでされたら打つ手がありません。河合チームの優勢は明らかで、早い段階で勝敗は見えてしまっていたでしょう。

ただ、立科ルートでも、長和町に展開してしまうと、少し風向きが変わります。

▽1日目
茅野09:20→10:00東白樺湖10:35→11:11立科町役場前→徒歩1.6km→蓼科牛いっとう立科本店(☆立科町)→タクシー9.3km、3,840円→マルメロの駅ながと(☆長和町)→徒歩0.9km→古町支所前15:11→16:02上田駅前

1日目の早い時間に上田市に着けるのですが、そこから先がうまく展開できません。近隣の青木村の大法寺や、東御市の雷電生家は日中のみの営業ですし、小諸市方面のバスは週末運休です。

結果として、1日目に獲得できる陣は立科町と長和町だけで終わってしまう可能性があります。2日目に青木村と東御市、坂城町を押さえて、早めにゴールして上田市を押さえたら勝利、手こずれば厳しい展開になっていたかもしれません。

太川チームも使えた

実は、立科ルートは、太川チームも使うことはできました。白駒の池へ着いた後、休日のバス便が乏しい佐久穂町方面へ向かわずに、折り返すという選択です。

▽1日目
茅野駅09:30→10:36白駒の池→徒歩15分→白駒の池(☆佐久穂町)→徒歩15分→白駒の池11:08→12:17茅野駅13:50→14:36東白樺湖15:10→15:46立科町役場前→徒歩1.6km→蓼科牛いっとう立科本店(☆立科町)→徒歩1.6km→立科町役場前17:58→18:25大屋駅前18:36→18:55上田駅前

このように、1日目にタクシーを使わずに佐久穂町と立科町の2陣を獲って上田駅に到達できます。ただ、佐久穂町、小海町、佐久市、御代田町の4陣を得た実際ルートに比して優れているとはいえません。

また、立科町の陣をスルーして佐久平を目指すと、以下のように乗り継げます。

▽1日目
茅野駅09:30→10:36白駒の池→徒歩15分→白駒の池(☆佐久穂町)→徒歩15分→白駒の池11:08→12:17茅野駅13:50→14:36東白樺湖15:10→15:46立科町役場前15:54→16:33佐久平駅

実際ルートより1時間ほど早く、佐久平駅に到着できます。ただ、その後、乗り継ぐバスがないので、最終的には実際ルートに収斂したでしょう。この場合、小海の陣を取り損ねていますので、実際ルートに劣後します。

要は、麦草峠まで行ってしまったら、折り返して立科ルートに向かう意味はなかった、ということです。

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隙のない戦い

まとめると、今回は「麦草峠ルート」「立科ルート」「松本ルート」の3ルートがありました。このうち、「麦草峠ルート」と「立科ルート」は、佐久市~上田市間で重なる可能性がありますが、「松本ルート」は完全に独立しています。

河合チームが独立した松本ルートを採ったことで、両チームが全く異なる道筋から上田市を目指す展開となりました。

両チームとも、初日はバスの休日運休の厳しさに苦しめられ、選択できる乗り継ぎは限られました。そのなかで、ルイルイがふるさとの森で無理をせず、タクシー代を温存したことは重要で、翌日の行動の自由度を担保したといえるでしょう。

河合チームは、上諏訪までの大回りはもったいなかったですが、岡谷~塩尻で思い切ってタクシー代を投入して、1日目に塩尻市に入ったことで挽回しました。

盛り上がったのは2日目午前中で、河合チームが山形村を拾えば、太川チームは青木村を奪うといったファインプレーの応酬が繰り広げられました。お互いミスらしいミスはなく、隙のない戦いぶりだったように感じられます。

どちらも惜しかった

河合チームにとって惜しむらくは、立科ルートに気付かなかったことでしょう。これに気付いて「佐久市で相手の進路を塞ぐ」という作戦を採っていれば、圧勝できていた可能性が高かったからです。

一方の太川チームにとってやや悔いが残るとすれば、最後に坂城町を目指さなかったことでしょうか。ただ、これは河合チームとの読み合いの結果ですから、やむを得なかったといえます。

あるいは、朝方にタクシー代をつぎ込んで軽井沢町に向かえば、ひょっとしたら陣を得られたかもしれません。坂城町か軽井沢町のどちらかを追加で取れていれば、太川チームは文句のない勝利だったでしょう。

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ゲームバランスは?

おおざっぱな試算ですが、ゴールの上田市の陣を除き、松本ルートは、最後に青木村を押さえたとして最大7陣のようです。立科ルートは佐久平に展開したとして、立科町、佐久市、御代田町、小諸市、東御市、青木村を押さえることができ6陣。さらに坂城町も取れれば7陣となります。麦草峠ルートは軽井沢町か坂城町を得たとして最大8陣でしょうか。

こうしてみると、どのルートでもだいたい同数の陣を得られるようになっていて、ゲームバランスは悪くありません。引き分けという結果は、所与のゲームバランスの通りになったといえそうです。

休日運休という現実

今回、検証をしてみて改めて驚かされたのは、地方の路線バスの「休日運休」の多さです。週末に利用者が少ないという理由のほか、運転手の休日確保のためでもあるのでしょう。地方のバスの利用者減少と運転手不足の深刻さを、再認識させられました。

そうした状況でも、観光路線である八ヶ岳方面は休日に便が多く、平日便主体の生活路線と対照的でした。制作側としては、出演者のスケジュールの制約があるなか、休日は蓼科・八ヶ岳方面のバスに誘導し、平日に生活路線で競わせるという設定を試みたのかもしれません。

マドンナの村重は明るさで太川チームを盛り上げ、笑い飯哲夫は地図読みのうまさで河合チームを盛り立てました。メンバー的にも恵まれた回だったように感じられます。

とまれ、「陣取り合戦」では初の引き分けとなり、通算成績は太川チームの3勝1敗1分となりました。次回の対決も楽しみです。(鎌倉淳)

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