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東急田園都市線「急行削減」が映す不都合な現実。3月改正、夕ラッシュも準急に

人口増加と減少の狭間で

東急田園都市線で「急行」を「準急」にする動きが加速しています。2026年3月ダイヤ改正で、一部の時間帯の急行を準急に変更します。目的は利用者増に対応する混雑緩和ですが、背景には設備による制約という「不都合な現実」もありそうです。

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3月14日ダイヤ改正

東急電鉄は2026年3月14日ダイヤ改正の概要を発表しました。

大きな動きがあるのが東急田園都市線です。平日渋谷発18時台~19時台に、中央林間方面行きの急行を、一部を除き準急に変更します。

また、土休日の中央林間発9時~13時台は、渋谷方面行きの急行を、一部を除き準急に変更します。

平日夕ラッシュ時と土休日の午前中という、利用者の多い時間帯に、急行を大きく削減する形です。

東急田園都市線

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混雑の平準化

東急田園都市線では、今回のような「急行の準急化」をコロナ禍前から進めてきました。目的は大きく分けて3つあります。

一つは「混雑の平準化」です。

急行と準急の大きな違いは、渋谷~二子玉川間の停車駅です。急行は三軒茶屋以外を通過しますが、準急は各駅に停まります。

そのため、準急は渋谷~二子玉川間で追い越しがありません。急行は桜新町で各駅停車を追い越しますが、急行運転を取りやめると、都内での追い越しがなくなるのです。

追い越しをなくすことで、都内区間は「平行ダイヤ」となります。どの列車に乗っても先着となるので、乗車率を平準化できます。後発列車を待つためにホームに滞留する客も減らせるため、ホームの混雑も緩和できます。

混雑の平準化を目的に、朝ラッシュ時はすでに全面的な準急化が実施されていますが、今回のダイヤ改正で、それを夕ラッシュにも広げます。

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世田谷区内の利用者増

二つ目の目的が、世田谷区内駅の利用者増への対応です。

新型コロナ禍の収束後、田園都市線全体の利用者が増加していますが、とくに利用者が増えているのが、都内の世田谷区区間です。池尻大橋~用賀間の2024年度の乗降客数と増加率は以下の通りです。

○池尻大橋 63,191人(3.7%増)
◎三軒茶屋 136,375人(3.3%増)
○駒沢大学 74,266人(3.3%増)
○桜新町 68,296人(4.0%増)
○用賀 65,061人(2.9%増)
◎二子玉川 89,150人(1.6%増)
※◎急行停車駅、○準急停車駅

世田谷区内各駅は軒並み3~4%の利用者増で、田園都市線全体の増加率(2.6%)よりも高くなっています。実数としても、どの駅も6万人以上の乗降者数で、満遍なく多くの利用者がいます。

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毎時12本の停車へ

利用者の多い世田谷区内駅ですが、池尻大橋、駒沢大学、桜新町、用賀の4駅は、急行が通過するため、土休日の午前中は毎時9本の停車です。

この場合、急行の後を走る各駅停車は、前の各駅停車との運転間隔が広がるため混雑します。この問題を解消するため、急行を準急化し、世田谷区の全駅で毎時12本の停車とするわけです。

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増発すればいいのだが

ここで疑問として湧くのは、全体の利用者が増えていて、各駅停車の運転本数が少ないなら、各駅停車を増発すればいいのではないか、ということです。

田園都市線は、溝の口~長津田間で、日中時間帯に毎時15本を運転しています。しかし、そのうち3本が溝の口から大井町線に流れるので、二子玉川~渋谷間は毎時12本になってしまっています。つまり、世田谷区内で毎時3本を増発できるスジがあるわけです。

世田谷区内の利用者が多く、増発できるスジもあるのに、世田谷区に入ると列車本数が減るという、奇妙な状況に陥っているのです。

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半蔵門線直通と渋谷駅の問題

ここで東急田園都市線特有の理由として、全列車が東京メトロ半蔵門線に直通しているという問題があります。半蔵門線は、日中時間帯に毎時12本で十分なので、それ以上の列車が田園都市線から来ると、輸送力過剰になってしまいます。

とはいえ、渋谷駅で折り返そうにも、1面2線と設備が貧弱なので、混雑時間帯ほど折り返しができません。

そのため、コロナ禍前までは、折り返し設備のある半蔵門で折り返す列車も存在していました。半蔵門~渋谷間は回送で、渋谷~中央林間のみ営業するという列車です。ただ、要員と車両繰りに無駄が多いからか、コロナ禍以降に復活していません。

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ホーム増設計画は存在したが

渋谷駅ホームの容量問題は、夕ラッシュ時の準急化にも関係しています。

現状の狭小なホームでは、来た列車にできるだけ客を乗せていかないと、ホームに人があふれてしまいます。後発の急行を待つ行列ができると、ホームの混雑が激しくなります。

その解消が、今回の夕ラッシュ時準急化の理由の一つです。したがって、もし、ホームがもう1面あれば、後発列車を待つ列があっても問題は小さく、急行を削減する必要はなかったかもしれません。

渋谷駅にホームを増設する計画は実際に存在し、現在進められている渋谷駅周辺の再開発に合わせて実施できないか、検討もされていたようです。しかし、コロナ禍で沙汰止みになったままです。

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輸送力適正化の側面も

東急田園都市線の急行の準急化の3つめの目的は、長津田~中央林間間の輸送力の適正化です。

長津田~中央林間間では、急行は南町田グランベリーパーク駅のみ停車ですが、準急は各駅に停まります。そのため、急行を準急にすれば、途中駅の停車本数を維持しながら、各駅停車の運転本数を減らせます。

準急化により、長津田~中央林間の優等を削減することで、長津田折り返しの列車を増やして輸送力を適正化し、要員や車両の運用を減らす目的もあるということです。

田園都市線は多くの列車が渋谷~中央林間の全線で運転していますが、末端区間で都内と同じ輸送力を提供するのは過剰です。したがって、この区間の準急化は、輸送力適正化としてみれば合理的です。

東急のダイヤ改正の発表内容には、長津田~中央林間間の減便は含まれていませんが、実際には相当数の各駅停車が長津田折り返しになるのではないでしょうか。

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「不都合な現実」

急行や快速といった優等列車を縮小する動きは、全国の通勤各線でみられます。その多くは、人口減少にともなう利用者減に対応して減便し、種別を統合するものです。

しかし、東急田園都市線は全線全駅で利用者が増えていますので、利用者減への対応という見方は当てはまりません。末端区間には輸送力適正化の側面があるものの、全線をみれば状況は異なります。

現状の混雑状況からすれば、本来なら増発が必要にも感じられます。しかし、田園都市線はターミナル駅である渋谷駅などの設備が貧弱という「不都合な現実」が存在し、増発が難しくなっています。

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難しい局面を反映

東京都内では人口増が続いていますが、それもあと十数年程度とみられていて、いずれ減少に転じることは明らかです。田園都市線沿線も例外ではありません。

したがって、目先の利用者増への対応のために、大規模な設備投資をしたり、人員や車両を増やすのに、経営側が躊躇することは理解できます。とはいえ、速達サービスの縮小は、沿線の魅力の低下につながります。

東急田園都市線のダイヤ改正は、人口増加と人口減少の狭間という、難しい局面を反映しているようです。(鎌倉淳)

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