「バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅」第20弾のルート検証、ここからは鉄道チームの検証です。
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「バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」第20弾 知多~志摩を分析する【1】
鉄道チームの検証
あらためて、鉄道チームの実際ルートを再掲しておきます。
▽鉄道1日目
坂井海岸→徒歩1.5km→11:28上野間駅11:48→11:54富貴駅12:13→12:21河和駅→徒歩+タクシー1,030円+タクシー630円、計12km→14:55師崎港15:00→高速船2,130円→15:10日間賀島東港(★)16:25→西港16:40→高速船4,260円→17:00河和港→徒歩0.3km→河和駅17:21→18:14名鉄名古屋駅/名古屋駅18:35→19:49松阪駅19:56→20:04漕代駅→徒歩0.8km→20:15ドリームオーシャン(★)→徒歩0.8km→漕代駅21:29→21:45伊勢市駅
▽鉄道2日目
伊勢市駅05:36→06:06松尾駅→徒歩9km→08:10はちまんかまど(☆1,000円)11:45→徒歩4km+タクシー5km、2,000円→松尾駅13:42→14:08賢島駅/賢島港14:50→高速船2,400円→15:15和具港→徒歩3km→15:50真珠の里(☆1000円)16:20→和具港17:05→高速船2,400円→17:30賢島港/賢島駅17:40→17:47志摩横山駅→徒歩2.5km→18:25頃横山展望台(☆)
内海に向かっていたら
鉄道チームが坂井海水浴場から歩いて上野間駅に到着したのは11時28分。放送を見る限り、一行は迷いもなく河和方面に向かったようですが、実際には、内海方面に向かう選択肢もありました。以下のようになります。
▽鉄道1日目
坂井海水浴場→1.5km→11:28上野間駅11:39→11:51内海駅→12km→師崎港15:00→高速船2,130円→15:10日間賀島東港
内海駅から師崎港への距離と、河和駅から師崎港への距離は、どちらも12km程度で大差ありません。そのため、途中でタクシーを使ったと仮定すれば、師崎港15時発の便に乗るという同じ結果になるでしょう。
ただ、歩き始めの時刻が、内海駅発は河和駅発に比べて30分程度早くなります。そのため、タクシー代を多少節約することはできていたでしょう。実際ルートで乗車した、2台目のタクシー代(630円)は不要だったかもしれません。
そのお金があれば、第2チェックポイントで200円を払い、シャトーブリアンを味わえた可能性もあるでしょう。
河和~日間賀島航路の使いどころ
実際の鉄道チームは、河和駅に到着後、徒歩とタクシーを組み合わせて師崎港へ向かいました。
鉄道チームにも、河和港から高速船の選択肢はありました。しかし、バスチームが乗った河和港12時10分発の日間賀島行きに鉄道チームが乗ることは不可能で、次便は14時05分発です。それを待つのは無駄なので、鉄道チームが徒歩で先を急いだ判断は間違っていなかったといえます。
一方、日間賀島からの帰路は、タイミングよく西港から河和港行きの高速船があったので、飛び乗りました。河和までのタクシー代と船賃を比較すると船賃のほうが安いので、時間があえば高速船が効率的です。したがって、この判断も適切といえます。
河和駅から名古屋駅を経由して、第2チェックポイント最寄りの漕代駅に着いたのは20時過ぎ。総じて見ると、1日目の鉄道チームのルート取りに大きな無駄はありません。一つだけ「ミス」があったとすれば、初手で内海駅に向かっていたら、よりタクシー代を節約できていただろう、ということくらいでしょうか。
松尾駅へタクシー代を使わなければ
2日目、鉄道チームは伊勢市駅を始発で出発し、松尾駅から第3チェックポイントのはちまんかまどまでの9kmを歩ききり、先着ボーナスを獲得します。
ただ、ミッションに時間がかかり、松尾駅13時42分発の列車に乗るにはタクシーを使用せざるを得なくなりました。第4チェックポイントでの先着ボーナス獲得を見込んで、タクシー代を2,000円投入。何とか間に合いました。
仮に、ここでタクシー代を使わなかったらどうなっていたでしょうか。
▽鉄道2日目
松尾駅14:42→15:08賢島駅/賢島港15:45→16:10和具港→徒歩3km→16:50真珠の里(☆1,000円)17:20→徒歩+タクシー18km→志摩神明駅
17時頃に、第4チェックポイントの真珠の里に到着します。バスチームが実際ルートをたどるのであれば、ここでの先着ボーナスは獲得できる可能性が高いです。ただし、和具港から賢島港へ連絡船は17時05分発が最終便なので、この乗り継ぎでは間に合いません。
真珠の里から最寄駅(志摩神明駅)までは18kmもあり、残りのタクシー代では到底、足りません。結局、時間切れリタイアに追い込まれていたでしょう。
したがって、松尾駅までタクシーを使った「大博打」には、大きな意味があったといえそうです。
最終局面の乗り継ぎは
ここで、両チームの最終局面の乗り継ぎを整理してみます。バスチームのゴール最寄りバス停の横山登山口停留所と、鉄道チーム最寄りの志摩横山駅の位置はほぼ同じです。
■バスチーム
A:志摩スペイン村13:45→15:14越賀集会所前16:26→17:24横山登山口
B’:志摩スペイン村13:45→15:14越賀集会所前17:16→18:14横山登山口
D:志摩スペイン村14:45→16:39越賀集会所前18:11→19:09横山登山口
■鉄道チーム
B:松尾駅13:42→14:08賢島駅/賢島港14:50→15:15和具港17:05→17:30賢島港/賢島駅17:40→17:47志摩横山駅
D:松尾駅14:42→15:08賢島駅/賢島港15:45→16:10和具港→真珠の里→18km→志摩神明駅20:26→20:30志摩横山駅
バスチームが最善を尽くした場合、第4チェックポイントに先着して1,000円のボーナスを得たうえで、横山登山口に17時24分に到着します。タクシーを1,000円分使ってゴールは17時45分頃。これには鉄道チームはどう急いでも及ばないようです。
一方、志摩スペイン村13時45分発に乗れたとしても、第4チェックポイントの真珠ミッションで手間取ると、B’になります。この場合、登山口到着は鉄道チームの約30分後になってしまいます。
それでも、バスチームは第4チェックポイントに先着しており、タクシー代1,000円は獲得していますので、勝利の可能性は残されています。登山口から展望台までは登り坂の2.5kmなので、タクシー代を考慮すれば互角かもしれません。
バスチームは、志摩スペイン村13時45分発に乗り遅れたら失格です。鉄道チームは松尾発13時42分を乗り逃したら、和具港からの最終船に乗れないため、やはり時間切れ失格となります。
1日目は両チームとも伊勢市内に泊まることは避けられなかったようですし、第3チェックポイントの位置とミッション内容から、両チームとも上記より早い便に乗るのは難しかったように思われます。したがって、最終局面は、上記のパターンに絞られます。
このとき、最善を尽くせば勝利できたのはバスチームなので、本質的にはバスチームに有利な設定になっていたといえそうです。
船賃の割合高く
今回は、両チームとも、資金に占める船賃の割合が高く、タクシーに使えるお金は多くありませんでした。ちなみに、船賃をまとめてみると、以下のようになります。
■船賃(3人分、片道)
1 河和~日間賀島 4,260円
2 師崎~日間賀島 2,130円
3 日間賀島~伊良湖 4,260円
4 伊良湖~鳥羽 5,400円
5 賢島~和具 2,400円
バスチームは1、3、4を使ったので、合計13,920円、鉄道チームは1、2、5(往復)を使ったので11,190円です。スタート時の資金(タクシー代)は13,000円でしたので、バスチームのタクシー代は920円不足、鉄道チームは実質1,810円だったわけです。これにくわえて、途中の先着ボーナスとして、両チームで合計4,000円が分配されます。
要するに、今回は両チームともタクシー使用の余地が小さく、「タクシーの使いどころ」が問われる場面は多くありませんでした。どう進んでも、各チーム2~3パターンの最終乗り継ぎに集約される形になっていたようです。
想定外があったのか
全体を振り返って見ると、今回の勝敗を決定づけたのは、バスや列車の乗り継ぎではなかったように思えます。
最大のポイントとなったのは、第3チェックポイントのミッションの所要時間と、第4チェックポイントまでの徒歩区間の速度でしょう。
番組を見ると、当日は炎天下だったようです。第3チェックポイントのミッションは屋外を歩く内容ですし、その後の徒歩区間は、バス、鉄道両チームともアップダウンの厳しい道でした。ペースも落ちますし、熱中症を避けるために休憩も必要でしょう。そのため、想定以上に時間がかかったのではないでしょうか。
屋外で歩き回るミッションの後に長距離の徒歩を配したので、暑さと疲労で、演出側の想定を大きく超える時間を要したのではないか、ということです。
あるいは、別な「想定外」があったのかもしれませんが、少なくとも、日差しの穏やかな日であれば、バスチームはもう少し早く志摩スペイン村に到着することができていて、失格には至らなかったのではないでしょうか。
勝ち筋が乏しく
「現実」に即した所要時間を前提にすると、今回、バスチームの勝ち筋は乏しかったように感じられます。前述したように、「師崎ルート」で資金を節約する方法くらいしか考えられません。
とはいえ、師崎ルートでは、第2チェックポイントや宿の到着時刻が遅くなりすぎます。かといって、第2チェックポイントへ急ぐため、伊勢市内からタクシーを使ってしまうと、河和での資金節約効果が失われてしまい、結果を覆すことはできません。
現実のミッション時間や徒歩時間を前提にすれば、バスチームの勝ち筋は「師崎ルート」しかありませんが、それが現実的であったかは別の話、ということです。
ミスらしいミスはなかったけれど
いろいろ検討してみましたが、今回は、バスチームが健脚を発揮していれば、最終局面でバスが有利になり得るよう配慮されていたように感じられます。
しかし、現実に即した所要時間に照らし合わせると、バスチームに非常に厳しい設定になっていました。乗り継ぎにミスらしいミスはなかったのに、時間切れになってしまった、という印象です。
強いてミスを指摘すれば、河和港から高速船に乗ってしまった判断にならざるをえませんが、これとて結果論に過ぎません。
ただ、設定が厳しかったのは鉄道側も同様です。第4チェックポイントのボーナスをあてにした「博打」を打たなければ、おそらくゴールできなかったでしょう。つまり、両チームとも時間切れリタイア、という形で引き分けになる可能性も十分あったといえそうです。
そんな状況を打破してゴールに持ち込んだのですから、さすが鬼軍曹。今回は、バスチームのルートを議論するよりも、鉄道チームの奮闘をたたえるべきなのでしょう。(鎌倉淳)