京都市の主要な鉄道路線が乗り放題となる乗車券「歩くまち・京都レールきっぷ」が、初めて夏期に発売されます。1日1,300円で京都のJR、私鉄、地下鉄やなどが乗り放題になるチケットです。使いこなしを考えてみましょう。
JR、京阪、阪急、地下鉄、嵐電が乗り放題
「歩くまち・京都レールきっぷ」は、京都市営地下鉄と京福電鉄(嵐電)の全線のほか、JR西日本、京阪電車、阪急電鉄の対象区間(主に京都市内)が乗り降り自由となります。動物園や美術館など、京都市が運営する10施設で料金割引などの優待も受けられます。利用期間は2016年7月1日~9月30日です。
「歩くまち・京都レールきっぷ」には、1日版と2日版があり、価格は1日版が1,300円、2日版は2,000円(大人用のみ、子ども用はなし)です。
「フリーパス」から「レールきっぷ」へ
京都市は、観光客が公共交通機関を利用するよう促す取り組みを進めています。その一環として最初に発売されたのが「電車・バスでまわる『歩くまち・京都』京都フリーパス」。京都市内の複数の交通機関が利用できるチケットで、2010年度に販売開始されました。
「京都フリーパス」は京都市内の主な鉄道のほか、バスも利用でき、これ1枚あれば京都市内が自由自在という画期的なチケットでした。ただ、1日券の価格が2,000円と高めで、元を取るのが難しいきっぷだったためか、販売数は伸び悩んだそうです。
そのため、利用できる交通機関を絞って値段を下げることとし、2015年度登場したのが「歩くまち・京都レールきっぷ」。バスを乗車対象から外し鉄道に絞ったフリーきっぷです。
「京都レールきっぷ」は好評を博し、「京都フリーパス」の売り上げが年間で5,666枚だったのに比べ、「京都レールきっぷ」は1日版と2日版あわせて8,114枚を記録。この成果を受けて、2016年度は初めて夏に発売することになりました。
きっぷの設定は微妙
ただ、このきっぷ、設定は少し微妙かもしれません。フリーエリアは主に京都市内ですが、近鉄京都線や叡山電車は、京都市内であっても利用できません。また、京津線は浜大津までがエリアと広いですが、JRでは大津はエリア外です。JRでも亀岡や宇治はエリアに含まれます。
「京都レールきっぷ」は発売場所が限定されていて、京都市交通局は市バス地下鉄案内所と定期券発売所で買えますが、JRでは京都駅でしか購入できません。京阪では三条駅のみ、阪急では河原町駅と桂駅、京福電鉄は嵐山駅だけです。それ以外には、京都観光案内所「京なび」などでしか購入できません。
つまり、フリーエリアの端にあたる洛西口や桂川、宇治、亀岡、山科では購入できませんから、エリア外から来てエリア入口できっぷを手に入れることは事実上できません。また、2日版は、「エクスプレス予約」「プラスEX」を利用して京都駅まで乗車した利用者にのみ発売されるので、JR東海かJR西日本の「会員」のみが販売対象と、限定されています。
購入前に検討を
ということで、会員以外が買えるのは1日券だけですので、1日券でどういう使い方をしたらいいかを考えてみましょう。
乗りつぶし目的の方はご自由にしていただければ良いのですが、京都観光を考えている方は、買う前に少し検討した方がいいでしょう。京都の観光地は鉄道駅から遠い場所も多く、暑い夏に駅から歩いて観光するのは大変だからです。「鉄道フリーきっぷだけで京都を観光する」のは、真夏には無謀かもしれません。
京都郊外へ行く人向けのきっぷ
具体的にいうと、金閣寺や銀閣寺は鉄道駅から離れているので、夏の暑い時期はバス利用のほうがいいでしょう。平安神宮や南禅寺、清水寺も、鉄道利用は微妙。駅から歩けば歩けますが、バスのほうがラクかもしれません。また、このきっぷでは叡山電車が使えないので、涼しげな貴船方面にも行けません。
いっぽう、嵐山エリアに行くには便利。JR、阪急、嵐電のいずれも使えますから、お好きな交通機関で楽しめます。伏見稲荷や宇治方面への足としても使うにもいいでしょう。
チケットの価格1,300円は、京都のバスの1日乗車券と比べ安いとはいえません。そのため、総じて言えば、京都の中心部よりは、郊外をぷらぷらしようという人向けのきっぷといえそうです。(鎌倉淳)