2014年度の航空会社別「旅客収入」の統計がまとまりました。国土交通省の「特定本邦航空運送事業者に関する航空輸送サービスに係る情報」で公表されています。
この統計では、「旅客収入」「輸送人員あたりの旅客収入」「輸送人キロあたりの旅客収入」が公表されています。ここでは、それらの2014年度(2014年4月~2015年3月)の数字をランキングにまとめて、順にみていきます。
なお、「日本航空」は、日本航空、ジェイエア、ジャルエクスプレスの合計、「全日空」は、全日本空輸、ANAウイングスの合計です。小型機使用のフジドリームエアラインズやアイベックスなどは、この統計の対象外です。また、統計対象は国内線であり、国際線は対象外です。
旅客収入でジェットスターが5位浮上
まずは、旅客収入ランキングを見てみましょう。( )内は前年度の数字です(以下同)。
【旅客収入ランキング】
- 全日空 6,724億円(6,638億円)
- 日本航空 4,217億円(4,196億円)
- スカイマーク 791億円(848億円)
- 日本トランスオーシャン 327億円(330億円)
- ジェットスター 326億円(210億円)
- エアドゥ 285億円(298億円)
- ソラシドエア 226億円(222億円)
- スターフライヤー 221億円(240億円)
- ピーチ 179億円(171億円)
- バニラ・エア 51億円(34億円)
- 春秋日本 12億円
計 1兆3395億円(1兆3192億円)
旅客収入では、全日空と日本航空の大手2社が3位以下に大きな差を付けています。この大手2社が堅調に収入を伸ばしている一方、中堅航空会社は伸び悩んでいます。スカイマークが大きく収入を減らしたのは経営の問題が影響していると思われますが、エアドゥ、スターフライヤーの両社も微減です。
LCCはジェットスターの大幅増が目に付きます。前年度比55%増で、300億円台に載せました。スターフライヤー、ソラシドエア、エアドゥの中堅3社をごぼう抜きで全体5位に浮上です。この勢いなら今年度は全日空、日本航空、スカイマークに次ぐ国内4位になるかもしれません。
一方のピーチは前年度とあまり変わりありません。ピーチは2014年度は国際線の展開に注力し、国内線の増便をあまり行わなかったためとみられます。バニラはもとの数字が小さかったのですが、50%増と健闘しています。
「客単価」では日本航空が首位
次に、輸送人員あたりの平均旅客収入を見てみます。いわゆる「一人あたりの客単価」です。コードシェアを実施している場合は、自社販売分の数字です。
【輸送人員あたり旅客収入ランキング】
- 日本航空 15,700円(15,900円)
- スターフライヤー 15,600円(15,200円)
- 全日空 15,500円(15,200円)
- エアドゥ 14,900円(15,400円)
- ソラシドエア 14,100円(14,300円)
- 日本トランスオーシャン 12,200円(12,200円)
- スカイマーク 11,700円(12,600円)
- バニラ・エア 8,000円(7,600円)
- ジェットスター 7,800円(7,200円)
- ピーチ 7,200円(8,000円)
- 春秋日本 5,400円(–)
平均 14,600円 (14,600円)
客単価では、スターフライヤーが前年度比増で、運賃政策が巧くいっているようにみえます。大手2社は微減ですが、上述したように全体の旅客収入は伸びていますので問題ない範囲でしょう。
中堅航空会社のうち、エアドゥとスカイマークは客単価を落としています。スカイマークはA330グリーンシートを導入して客単価増を狙ったはずですが、民事再生が足を引っ張ったこともあってか、結果には反映されていません。
LCCは明暗を分けました。バニラ・エアとジェットスターの首都圏2社は客単価をしっかり伸ばしていますが、ピーチは1割も下げています。ピーチは旅客収入で伸び悩み、客単価が下がっているわけです。春秋航空日本はお察しです。
「イールド」でピーチとジェットスターが僅差に
最後に、客単価に平均搭乗距離を勘案した単価をみてみましょう。「輸送人キロあたり旅客収入」という数字でわかります。簡単にいえば、1kmあたりの客単価で、航空業界では「イールド」といい、重要視される数字です。
【輸送人キロあたり旅客収入ランキング】
- 全日空 17.4円(17.5円)
- 日本航空 16.9円(17.1円)
- スターフライヤー 16.2円(16.0円)
- エアドゥ 16.1円(16.6円)
- ソラシドエア 13.3円(13.5円)
- 日本トランスオーシャン 13.0円(13.2円)
- スカイマーク 11.7円(12.2円)
- ピーチ 7.8円(8.6円)
- ジェットスター 7.7円(7.0円)
- バニラ・エア 6.4円(6.3円)
- 春秋日本 5.7円(–円)
平均 15.7円 16.0円
この数字の見方ですが、たとえばイールドの数字が「17」の航空会社では、1,000kmあたりで平均17,000円の収入があることになります。ちなみに、羽田~福岡間が約1,000km(1,041km)ですから、全日空や日本航空では、同区間の平均客単価が17,000円程度であろう、と推測できます(もちろん、実際は路線によって異なります)。東京~福岡の普通運賃は43,890円ですが、これを見ると、大手航空会社の「普通運賃」がとても高く、そんな値段で乗っている人が少ないであろうことが推測できます。
さて、イールドでは、全日空が首位で、日本航空が続きます。その後にスターフライヤー、エアドゥが16円台で続きます。
LCCではピーチがイールドを落とし、ジェットスターが上げて、両社はほぼ同水準になりました。これまで、ピーチは国内LCCの成功例とされてきましたが、この数字を見る限り、ピーチとジェットスターの差はなくなりつつある、といえます。
ピーチのイールドは7.8です。イールド7.8ならば、1,000km運んだ客単価が7,800円ということになります。いくら効率経営を徹底しても、この収入で黒字を出すのはなかなか難しいだろう、という気もします。
好調が伝えられるピーチですが、これらの数字を見る限り、国内線では苦労していそうです。最近のピーチは、国内線よりも国際線に重点を置いています。まったくの想像ですが、国内で思うように利益を上げられていないからかもしれません。
【2015年7月22日追記】
当記事は掲載当初、”航空会社の「旅客収入」ランキング2014年度版。ジェットスターとソラシドエアが健闘。ピーチは国内で意外と苦戦?”というタイトルでした。ソラシドエアの数字が良く、【輸送人員あたり旅客収入ランキング】で首位だったからです。
ところが、記事掲載後にソラシドエアより連絡があり、国交省に提出した「旅客収入」情報に訂正が生じ、数字が変更された旨が伝えられました。これを受け、当記事の数字も変更後のものに修正しました。
修正により「ソラシドエアが健闘」とはいえないランキングになりましたので、タイトルも変更しました。また、記事中からソラシドエアに関する記述を全て削除しました。ご了承ください。