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ANA「LCC的新運賃」は約10%割引、手荷物には個数制限。新運賃制度を徹底解説

国内線運賃をリニューアル

ANAが国内線運賃を2026年5月19日から刷新します。座席指定のできないLCC的な新運賃を導入し、預け手荷物には個数制限を設けます。新運賃制度の変更点を徹底解説します。

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3種類の運賃区分に

ANAは、国内線運賃をリニューアルすると発表しました。適用は、1年後の2026年5月19日搭乗分からです。国際線とのシステム統合によるもので、運賃を3種類に区分するのが大きなポイントです。

新たな国内線運賃は、「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3つです。順に説明していきましょう。

ANA札幌

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運賃区分による違い

新運賃の基軸となるのは、「スタンダード」です。フルサービスキャリアとして基本的なサービスを提供する運賃で、これまでの「バリュー」などの事前割引運賃に相当します。

「スタンダード」では、事前の座席指定やアップグレードなどができます。購入後の予約変更も、手数料を支払えば可能です。購入は搭乗の前日までで、当日購入はできません。

「フレックス」はスタンダードの上位にあたる運賃で、いわゆる「ノーマル運賃」です。事前座席指定やアップグレードのほか、空席待ちや、予約便の変更も無料でできます。搭乗日当日まで購入可能です。

「シンプル」は付帯サービスを最小限に抑えた新運賃です。事前座席指定はできず、座席指定は出発24時間前からとなります。予約変更やアップグレードも不可です。購入は搭乗前日までです。

無料手荷物の許容量は、全ての運賃で共通で、23kgまでです。ただし、「シンプル」は1個、「スタンダード」「フレックス」は2個と、預けられる個数に違いがあります。

マイル積算率は「フレックス」が100%、「スタンダード」が80%、「シンプル」が70%です。

ANA新運賃
画像:ANA

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取消手数料の違い

運賃区分によって、取消手数料は異なります。まとめると、以下のようになっています。左からシンプル、スタンダード、フレックスです。

【取消手数料】 
45日前まで 20% 10% 500円
28日前まで 40% 20% 500円
出発時まで 60% 30% 500円
出発時刻後 100% 100% 100%

ご覧の通り、シンプルがフレックスに比べて、取消手数料(キャンセル料)が倍となっています。出発日27日前を過ぎると、シンプルのキャンセル料は60%にもなりますので、注意が必要です。

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具体的な運賃例

では、それぞれの運賃は、具体的にいくらなのでしょうか。

ANAが発表した2026年5月19日以降の片道運賃(ローシーズン)から、最低額と最高額を見ると、以下のようになっています。

■羽田~新千歳
【シンプル】11,550円~41,910円
【スタンダード】13,420円~45,540円
【フレックス】47,520円~56,870円

■羽田~伊丹
【シンプル】9,680円~26,620円
【スタンダード】10,450円~28,930円
【フレックス】32,010円~39,600円

■羽田~福岡
【シンプル】12,760円~44,770円
【スタンダード】14,740円~49,060円
【フレックス】52,250円~62,150円

■羽田~那覇
【シンプル】11,990円~44,660円
【スタンダード】13,090円~48,950円
【フレックス】57,750円~68,640円

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割引率10%前後

ご覧のように、「シンプル」が最安値ですが、激安というほどでもありません。

最低価格でみると、羽田~伊丹のような中距離路線でも1万円程度しますので、破格値ではありません。「スタンダード」との比較では、羽田~伊丹で1,000円程度、羽田~札幌、福岡で2,000円程度、安くなるようです。割引率でいうと、10%前後でしょうか。

これは最低価格の比較であり、実際の販売額ではもう少し差がつくのかもしれません。それでも、この程度の差なら、「シンプルが超お得」というほどではなさそうです。

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手荷物に個数制限

このほかの運賃制度の改定点として重要なのは、無料の預け手荷物に個数制限を導入することでしょう。

普通席の場合、これまで20kgまでなら個数制限はありませんでした。しかし、これからは、運賃区分により個数が1~2個までに制限されます。一方、重量は23kgまでに拡大されます。

また、サイズは3辺(縦、横、高さ)の合計が158cm以内となります。これまでは203cm以内でしたので、かなり厳しくなります。スーツケースの場合、100Lクラスまでなら収まりそうですが、スキー板は3辺158cmに収まりません。

3辺合計が158cmを超える手荷物(292cm以下)の追加料金は、区間にかかわらず5,500円となっています。

手荷物ルールの変更は、非常に重要なポイントなので、大型荷物や、ベビーカー、スポーツ用品を持ち込む際には、注意する必要があります。また、お土産などで荷物の個数が増えないようにしておきたいところです。

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幼児運賃の適用年齢拡大

ファミリーに影響がある変更としては、幼児の対象年齢が2歳以下から1歳以下になります。つまり、2歳の子どもは、座席の確保が必要となります。

これまでは、2歳児でも座席を確保しなければ無料でしたが、今後は、2歳児は有料になるということです。

現実問題として、2歳児を膝の上に置くのは大変ですし、国際的なルールでも、2歳児には座席の確保を求めています。つまり、国際基準にあわせたということでしょう。

いっぽうで、1歳以下の乳児に関しては、海外では僅かな運賃を求める航空会社も多いようですが、ANAでは無料が維持されました。

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往復運賃導入、経由地は24時間以内

そのほかのルール変更として、新たに往復運賃を導入します。単純往復のほか、往復の到着地と復路の出発地が異なる場合でも、往復として利用できるようにします。往路・復路を同じ運賃で同時購入する場合に適用します。

往復運賃の割引率は、公表された運賃表から計算すると、5%程度のようです。「シンプル」、「スタンダード」、「フレックス」のいずれの運賃タイプでも、往復割引が設定されます。

また、出発地と最終到着地までを経由便で利用する場合、経由地での乗り継ぎ時間を24時間以内までに拡大します。これにより、24時間以内なら、たとえば翌日の便も利用できますので、経由地での宿泊も可能になります。

特典航空券は、国内線の乗り継ぎ旅程を拡大します。

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「LCC的運賃」か

以上が、ANAの国内線運賃リニューアルの概要です。注目は、なんといっても、事前座席指定不可の「シンプル」運賃の導入でしょう。付帯サービスを絞った仕組みはLCCを彷彿とさせますので、「LCC的運賃」の導入とも受けとめられます。

じつは、大手航空会社の「LCC的運賃」は、欧米では2010年代後半から広まっています。LCCの攻勢に対抗するために導入が進んだもので、海外では珍しくありません。

ただ、LCCの基本運賃と違い、ANAの「シンプル」では、荷物を預けられます。一般的に、LCCでは荷物を預けるのは有料オプションなので、この点を無料としたのは大きな違いです。

出発当日の空港での混乱や、手荷物料金収受の手間を考えて、「一つまで無料」という形にしたのかもしれません。

逆に、手数料を払っても事前座席指定ができないのも、LCCとは異なります。事前座席指定をしたいのであれば、1,000~2,000円高い「スタンダード」を選んでください、ということなのでしょう。

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少し安く、少しサービスが悪い

「シンプル」運賃は、価格的はLCCほどは安くありませんが、ルールもLCCほどは厳しくない、というところでしょうか。付帯サービスを抑えているとはいえ、手数料で儲けるLCCとはビジネスモデルを異にしていますので、「LCC的運賃」は言い過ぎかもしれません。

まとめると、「シンプル」運賃は、「スタンダード」運賃に比べ、少し安く、サービスが少し悪く、キャンセル料が少し高い、という程度です。

定着するかどうかは実際の販売価格によると思いますが、変更可能性が小さく、荷物も少ない旅行には適しているといえそうです。(鎌倉淳)

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