GALA湯沢の利用者が急増しています。2025年1月の利用者は、前年比約18%増となりました。湯沢地区の他のスキー場も利用者数を伸ばしていて、アクセスを担う上越新幹線の輸送力が足りてないようにも感じられます。
湯沢地区全体で利用者大幅増
新潟県湯沢町の統計によりますと、ガーラ湯沢の2025年1月の利用者数は79,420人となりました。前年が67,580人でしたので、約18%の増加です。
湯沢町内の他のスキー場も利用者を増やしています。町内最大規模の苗場スキー場は、対前年比24%増の116,860人。二番手の岩原スキー場は107,000人で27%増です。
湯沢地区全体では56万2170人で、対前年比19%の伸びとなっています。
今シーズンの湯沢地区のスキー場の利用者数が堅調な理由は、インバウンドの増加に加え、積雪に恵まれたことが大きいでしょう。1月上旬に大雪があり、豊富な積雪が利用者を呼び込んでいます。
2014年度比で87%
近年の湯沢地区のスキー場入り込み客数は、コロナ禍を経て、伸び悩んできました。
新潟県の統計によれば、2014年度の湯沢町のスキー場利用者は238.7万人です。これが、2023年度には172.1万人に減っています。
ところが今年度は1月までに、対前年比で20%近くも利用者が増加しているわけです。2月に入ってからも大雪続きで、新雪がさらなるスキー・スノボ客を呼び込んでいる可能性が高いでしょう。
このままのペースで推移すれば、最終的に、シーズンの利用者数は206万人程度になるでしょう。2014年度比で、87%程度にまで回復する計算です。
上越新幹線で積み残し
湯沢地区のスキー場利用者の増加にともない、アクセスを担う上越新幹線も混雑しているようです。
筆者は2月10日に東京駅06時24分発の「たにがわ71号」でガーラ湯沢を訪れましたが、東京駅出発時点で、自由席は通路まで客が立つほどの混雑でした。大宮出発時点では、お盆や正月でも珍しいほどのすし詰めになりました。
帰路の17時04分発「たにがわ86号」も、ガーラ湯沢駅出発時点で、同様の大混雑です。ガーラ湯沢駅の改札では大行列が起こり、指定席デッキも自由席に開放。それでも、越後湯沢駅では積み残しが発生しました。
越後湯沢駅ホームでは、対面ホームの「とき」号待ちの自由席の列も長く伸びていました。旅客の荷物が多いこともあり、全員が乗り切れるのか、心配になるほどです。
供給座席が足りていない?
こうした混雑は、連休中の特異日だからという側面もあります。
ただ、筆者は1月の平日にも越後湯沢へスキーに訪れましたが、その際も、越後湯沢駅を17時台に出発する列車は、自由席も指定席も軒並み満席で、立ち客もみられました。
今シーズンを見る限り、上越新幹線で、スキー・スノボ客に対する供給座席が不足しているように感じられます。積雪量増による利用者増を、JR東日本が読み切れていなかったのではないか、とも察せられます。
スキー・スノボ客は、積雪量が増えれば増え、雪不足なら減ります。
それを、臨時列車の運行を決める数ヶ月前に見通すのは困難です。せめて、積雪量が増えた1月の段階で、2月の増発を決められないのか、とも思いますが、そう簡単な話ではないのでしょう。
2014年と比較してみる
振り返れば、上越新幹線のスキー・スノボ客向け列車は、北陸新幹線が開業した2015年3月に削減されました。さらに、絶大な輸送力を誇った2階建て新幹線E4系も、2021年に引退しています。
往年に比べて、列車本数も車両の座席数も削減されているわけです。
どのくらい減ったかを知るために、JR新幹線の越後湯沢駅発着の列車本数を、2014年と2025年とで比べてみます。
下りは7~9時台に越後湯沢駅に到着する列車、上りは16~18時台に越後湯沢駅を出発する列車の本数を調べてみました。
【上越新幹線の冬季の列車本数】
2015年→2025年
平日朝下り 8本→9本
土曜朝下り 12本→12本
平日夕上り 10本→8本
土曜夕上り 13本→11本
※越後湯沢駅に発着する「とき」「たにがわ」の総数。
日によって運転本数に多少の違いがありますし、前後の時間帯も勘案しなければなりませんが、とくの上りの帰京時間帯の本数が削減されていることがわかります。
2階建て新幹線が引退し
2014年には、2階建て新幹線E4系が現役で、ピーク時には16両編成で走っていました。16両編成の定員は1,634人なので、E7系の934人の1.7倍です。同じ運転本数なら、当時のほうが輸送力が格段に大きかったわけです。
E4系の引退で、上越新幹線のスキー・スノボ客の輸送力は大きく低下したはずですが、それを補うほどの増発は行われていません。一方で、スキー場利用者数は、当時の9割近くまで回復してきたわけです。これでは、列車が混雑するわけです。
上越新幹線が冬季に混むのは昔からで、以前から立ち客もいました。とはいえ、ダイヤの削減と車両定員の削減により、上越新幹線のスキー、スノボ客の輸送能力は、利用者が増えた現状に対応し切れていないようにも見受けられます。
「JR SKISKI」と銘打つならば
JR東日本は「JR SKISKI」と銘打って、国内のスキー・スノボ客を集客しています。急増する訪日外国人観光客にも、GALA湯沢スキー場を手軽なスノーリゾートの場としてPRしています。
しかし、その実態は、ピーク時に十分な輸送力を提供せず、客を立たせて詰め込んで運んでいるわけです。
混雑している新幹線の通路には、小さな子どもと一緒に立っている外国人旅行者もいました。「快適な新幹線スノーリゾート」を体験しに来たはずが、日本の「すし詰めラッシュ」を体験してしまったわけで、同情の念を禁じ得ません。
JR東日本が、新幹線と自前のスキー場を抱えて、ウィンターリゾートを内外にPRするなら、利用者数に応じた十分な座席を供給すべきでしょう。盆や正月とは異なり、自ら誘客しているのですから、「詰め込んでも運べればいい」という話にはなりません。
それができないなら、混雑時間帯は、全車指定席にするのも一案でしょう。座席を確保していない客は基本的には乗せず、どうしても乗る必要のある客には立席特急券で対応する形が、適切ではないでしょうか。(鎌倉淳)