「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第15弾が放送されました。太川陽介の率いるチームと河合郁人の率いるチームが、長野県内の市町村を陣に見立てて競いました。
乗り継ぎで気になった部分を検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)
市町村を取り合う
「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」は、ローカル路線バスを乗り継いで「陣」に見立てた各市町村の名所・名物を体験し、その数を競うテレビ番組です。
その第15弾が2025年2月6日にテレビ東京系列で放送されました。対決したのは、太川陽介が率いるチームと、河合郁人が率いるチームです。
太川チームには、コスプレイヤーのえなこと、お笑いコンビ、マシンガンズの西堀亮が参加。河合チームには、2024年パリオリンピックにも出場したバスケットボール選手・髙田真希と、読売ジャイアンツに所属した元プロ野球選手・元木大介が加わりました。
どちらのチームも使っていいのはローカル路線バスのみ。ただし、両者とも1万円までタクシーを利用できます。
スタートは松本市の松本駅。ゴールは飯山市の飯山城址公園です。長野県内の76市町村を「陣地」に見立て、1泊2日でどちらのチームがより多くの陣地をとれるかを競います。ゴール時刻は17時までで、より多くの陣を確保したチームが勝ちです。
![ローカル路線バスの旅陣取り合戦15弾](https://tabiris.com/wp1/images/2025/01/jindori15.jpg)
水バラ ローカル路線バス乗り継ぎ旅 第15弾 陣取り合戦in長野
【出演】太川陽介、えなこ、西堀亮(マシンガンズ)、河合郁人、髙田真希、元木大介
【放送日】2025年2月6日(木) 18時25分~21時54分(テレビ東京系列、見逃し配信あり)
太川チームの実際ルート
まずは、両チームが実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻をわかる範囲で確認しました。番組ではっきり示されなかった時刻や距離、経路は、筆者による推定です。
なお、ロケは2024年4月に行われたようなので、現在のダイヤと異なっている場合があります。わかる範囲で当時のダイヤに依拠していますが、不明な場合は現在のダイヤに即して確認、検証していきます。
最初に太川チームのルートです。☆は獲得した「陣」の市町村名です。★は空振りです。
▽1日目(太川チーム)
松本BT09:30→10:18鹿教湯病院前→さいとう菓子工房(☆上田市)→鹿教湯病院前11:01→12:22下秋和→徒歩7.5km→14:10びんぐし湯さん館(☆坂城町)15:00→15:18坂城駅→タクシー4.7km、2,800円→戸倉国民温泉(☆千曲市)→新戸倉温泉信金前16:19→16:51屋代駅17:00→17:25松代駅17:30→18:04長野駅→徒歩0.5km→18:15幸先(☆長野市)→徒歩0.5km→長野駅19:40→20:08松代駅
▽2日目(太川チーム)
松代駅06:10→07:07須坂駅→徒歩0.2km→コモリ餅店(★須坂市)→徒歩5.5km→08:31イチニー(☆小布施町)→タクシー7.9km、4,200円→10:50中野市役所→徒歩0.5km→11:15カフェ・マッシュルーム(☆中野市)13:00→徒歩0.7km→信州中野駅13:10→13:48飯山駅→徒歩1.6km→14:10飯山城址公園(☆飯山市)
1日目は鹿教湯温泉から上田市方面に展開し、長野市に入りました。通過した沿線市町村の陣をきっちり確保し、松代駅で行動を終えました。2日目は、須坂市の陣をスルーし、小布施町、中野市の陣を確保。ゴール飯山市の陣も抑え、14時すぎに行動を終える余裕をみせました。
太川チームが確保した陣は、上田市、坂城町、千曲市、長野市、小布施町、中野市、飯山市の計7陣です。
河合チームの実際ルート
つづいて、河合チームの実際ルートです。
▽1日目(河合チーム)
松本BT0940→10:20四賀支所→徒歩9km→龍門淵公園(☆安曇野市)→徒歩0.5km→明科駅12:50→13:02ハーブセンター→道の駅池田(☆池田町)→徒歩4.8km→15:00信濃松川駅→タクシー4km、2,000円→道の駅安曇野松川(☆松川村)→タクシー8km→仁科神明宮(☆大町市)→タクシー+徒歩、計7km、7,000円→16:37信濃大町駅17:30→18:45長野駅東口→徒歩0.5km→幸先(★長野市)→徒歩0.5km→19:18長野駅19:40→20:25綿内駅
▽2日目(河合チーム)
綿内駅07:19→07:35末広町→徒歩0.2km→07:51コモリ餅店(☆須坂市)09:10→徒歩5.5km→イチニー(★小布施町)→徒歩8km→12:03信州中野駅12:10→12:44湯田中駅→徒歩0.6km→湯田中ブルワリー(☆山ノ内町)→湯田中駅13:43→14:14信州中野駅14:45→15:16木島→徒歩1km→道の駅ファームス木島平(☆木島平村)→タクシー2.5km→飯山城址公園
1日目は、四賀支所方面に向かい、犀川沿いに陣を確保していきます。ただ、バスの時間があわず、1日目にタクシー代のほとんどを使い尽くしてしまいました。そのうえ、長野市の陣では、太川チームに先を越されてしまいます。
2日目は、タクシー代の不足も響き、小布施町でも太川チームに先陣を許します。それでも、終盤に山之内町、木島平村に展開し、それぞれ陣を抑えて挽回しました。
結果として、河合チームが抑えた陣は、安曇野市、池田町、松川村、大町市、須坂市、山之内町、木島平村の計7陣。最後の粘りが効いて、引き分けに持ち込みました。
太川チームの検証
「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」では、訪問しなかった陣の位置が不明なので、全面的な検証はできません。ここでは、番組で気になった場面について、部分的に検証してみます。
最初に太川チームの検証です。
1日目、松本から鹿教湯温泉行きのバスに乗り、鹿教湯で上田市の陣(さいとう菓子工房)を確保します。その後、上田駅を通過して、下秋和に12時30分ごろに到着しました。
しかし、坂城方面のバスは14時34分発までありません。そのため、坂城町の陣(びんぐし湯さん館)まで、計7km以上も歩くことになってしまいました。
下秋和でバスを待ったら
では、仮に、下秋和で坂城町方面のバスを待っていたら、どうなっていたでしょうか。
以下のような乗り継ぎになるでしょう。
▽1日目(太川チーム)
下秋和14:34→14:58びんぐし湯さん館(☆坂城町)15:50→タクシー7.8km→16:10戸倉国民温泉(☆千曲市)16:40→タクシー7.9km→17:00屋代駅17:40→18:05松代駅18:10→18:44長野駅
このように、下秋和から坂城町の陣(湯さん館)までバスに乗れますが、湯さん館から坂城駅までのバスが15時発なので間に合いません。実際ルートで湯さん館から乗ったバスこそが、下秋和からのバスだからです。
次のバスは16時56分発です。そんなに待てないので千曲市方面へタクシー移動し、千曲市の陣(国民温泉)に達したとしても、その先、屋代までのバスにも、おそらく間に合いません。結果として、屋代駅から松代駅に向かうバスも、実際ルートの17時発には間に合わず、長野駅の到着も遅れてしまいます。
長野駅の到着が遅れると、長野市の陣(幸先)も、河合チームに奪われてしまいます。つまり、下秋和で待っていたら、1陣を失い、敵に1陣が渡ってしまうので、大きな失策となっていました。
東御市は狙えたか
では、下秋和からのバスが14時過ぎまでないことを知っていたとして、上田市周辺の陣の確保を目指していたら、どうなっていたでしょうか。
鹿教湯からのバスは、途中、大屋駅前を通ります。大屋駅は上田市内ですが、東御市との市境近くにあります。東御市の陣が大屋駅から徒歩圏だったとすると、東御市の陣が得られるでしょう。
仮に、東御市の陣が、大屋駅から近い足穂神社と仮定すると、たとえば以下のような形で陣を得られます。
▽1日目(太川チーム)
鹿教湯病院前11:01→11:52大屋駅前→徒歩1.1km→足穂神社(☆東御市)→徒歩1.1km→大屋駅前13:32→14:02下秋和14:34→中略→18:44長野駅
ここでは、わかりやすさのため、大屋駅近くの神社を「東御市の陣」と仮定しましたが、もう少し遠くても、大屋駅から約1時間半で往復できる範囲に陣があれば、獲得することはできたでしょう。
青木村は狙えたか
あるいは、上田駅で降りて、青木村に向かう考え方もあるでしょう。
▽1日目(太川チーム)
鹿教湯病院前11:01→12:11上田駅12:13→12:42青木バスターミナル(☆青木村)13:00→13:40下秋和14:34→中略→18:44長野駅
上田駅での2分乗り継ぎが厳しいですが、それをクリアすれば、青木村まで往復できます。青木村のミッションが、それほど時間がかからないのであれば、陣を確保できるでしょう。
上田市周辺でも獲得可能性
つまり、下秋和14時34分発のバスに乗るのであれば、上田市周辺で、東御市か青木村の陣を確保できる可能性がありました。
ただし、上田市周辺で陣を得ていると、長野市の到着時刻が遅くなり、長野市の陣は河合チームに奪われるでしょう。
その場合、1日目の太川チームの獲得陣数は変わりませんが、河合チームに1陣が増えてしまいます。そのため、2日目の行動が変わらないのであれば、河合チームが勝利していたでしょう。
河合チームが取れない上田市周辺の陣よりも、両チームが競合する長野市の陣を確保する方が、価値が大きい、ということです。
まとめると、下秋和から、さっさと歩いて坂城町に向かった太川の判断は、間違っていなかったといえそうです。
須坂の陣を取っていたら
長野市の陣を押さえたことで、1日目は太川チームの優勢で終わりました。2日目も先行し、午前7時過ぎに須坂市の陣(コモリ餅店)に到達しました。
しかし、営業開始は9時からです。2時間もあるので、太川チームはこれを待たずに、小布施町へ進みました。では、仮に、須坂市の陣を確保してから小布施町にタクシーで向かっていたら、どうなっていたでしょうか。
▽2日目(太川チーム)
松代駅06:10→07:07須坂駅→徒歩0.2km→コモリ餅店(☆須坂市)09:10→タクシー5.5km→09:20イチニー(☆小布施町)
太川が須坂市の陣を死守するのであれば、河合チームの行動にも影響を及ぼします。河合チームは、8時頃に須坂市の陣に着きますが、太川チームに確保されているのであれば、小布施町へと急ぐことでしょう。
ただし、河合チームはタクシー代が足りないので、歩くことになります。小布施町の陣(イチニー)に着くのは、09時20分ごろでしょう。太川チームが、須坂市の陣を得てからタクシーで来るのも同じころです。つまり、小布施町の陣に着く時間は両チーム互角です。
ここで太川チームが須坂市、小布施町の両陣の確保に成功すれば、その時点で、ほぼ勝負が付いてしまうでしょう。一方、小布施町の陣を河合が奪えば、勝負は終盤に持ち越されます。
そう考えると、太川チームが須坂市の陣を手放さなくてもよかったかもしれません。とはいえ、小布施町の陣がどこにあるか、開店時刻がいつかもわからない状況でしたし、須坂市で2時間を浪費するよりは、小布施町の陣で先手を打って、相手の行き先を抑えることは、戦術的には有効です。
つまり、須坂市の陣を手放したことは失敗ともいえません。どう転ぶかは結果論なので、正解はなかった、ということになりそうです。
木島平村の陣は狙えたか
太川チームは、中野市の陣を確保した後、飯山市に直行しました。ゴールの陣には2差の価値がありますので、リードしていた太川としては、ゴールを抑えてダメを押すつもりだったのでしょう。
ただ、ゴール近くには木島平村の陣が残されていました。地図を見れば飯山城址公園から木島平村は近く、市村境までは2kmあまりしか離れていません。
河合チームは、このことに気づき、木島平村の陣を狙いました。同じように、太川チームが木島村の陣を狙っていたら、どうなっていたでしょうか。
▽2日目(太川チーム)
カフェ・マッシュルーム(☆中野市)13:00→徒歩0.7km→信州中野駅13:50→14:21木島→徒歩1km→14:35道の駅ファームス木島平(☆木島平村)15:00→タクシー2.5km→15:15飯山城址公園(☆飯山市)
このように、木島平の陣には14時半ごろに到着できるでしょう。河合チームの先手を取って陣を得られます。
このとき、河合チームが、木島平を見送って飯山市に直行した場合、次のようになります。
▽2日目(河合チーム)
湯田中駅13:43→14:14信州中野駅14:45→15:19福寿町→徒歩0.5km→15:30飯山城址公園
河合チームが信州中野駅から乗ったバスを木島で降りなかった場合、飯山城址公園には15時30分ごろに到着します。太川チームが木島平の陣を取っても、タクシーで先を急げばそれより早く到着できますし、急ぎ足でも早着できる可能性があります。
そう考えると、太川チームが最後に木島平の陣を狙っていれば、勝利の可能性は非常に高かったといえます。今回、太川チームが勝ちきれなかった原因は、最後に「あと1陣」を狙わずに、ゴールを急いでしまったことにありそうです。
【続きはこちら】
「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第15弾 松本~飯山を分析する【2】