東海道・山陽新幹線の割引きっぷ「EX早特」が値上げされます。東京~新大阪間を例にとって、格安チケットがどう変わるかを見てみましょう。
5月7日乗車分から新価格に
JR各社は、2025年春より、新幹線のインターネット販売商品の価格を改定すると発表しました。4月1日のJR西日本、JR九州、JR北海道の運賃改定にともなうものですが、同時に「EX早特」をはじめとした格安チケットも価格改定や商品の変更があります。
改定内容は多岐にわたりますが、ここでは、東海道新幹線の東京~新大阪間を例にとり、格安チケットの状況がどう変わるのかを見ていきます。
なお、「EX早特」の現在の商品(価格)は2025年4月24日で利用を終了し、新商品(新価格)は5月7日乗車分から利用開始となります。
正規価格は据え置き
最初に、東海道新幹線東京~新大阪間の価格(運賃・料金の総額)を見てみましょう。
東京~新大阪間はJR東海の営業エリアなので、4月1日に運賃や料金の改定はありません。したがって、東京~新大阪間の正規価格は据え置きです。価格は以下のとおりです。
【東京~新大阪間の価格(通常期)】
普通車指定席(のぞみ) 14,720円
普通車指定席(ひかり・こだま) 14,400円
普通車自由席(のぞみ・ひかり・こだま) 13,870円
※2025年春に価格改定の予定はありません。
最も多くの人が利用する「のぞみ」の普通車指定席を利用する場合、通常期の価格は14,720円です。
「EX早特21」は値上げ
続いて、気になる「EX早特」の価格改定ついてみていきましょう。
まず、改定により、「のぞみ」を使った現行最安値の「EX早特28ワイド」が廃止されます。また、「EX早特21ワイド」は、列車の変更ができない「EX早特21」となり、値上げされます。
▼「EX早特28ワイド」12,240円→廃止
▼「EX早特21ワイド」12,370円→「EX早特21」12,980円
新しい「EX早特21」は、定価(普通車指定席)に比べて約12%の割引、自由席に比べて約6%の割引になります。
21日前までの予約が必要で、列車の変更が一切できないにもかかわらず、自由席に比べて890円安いだけなので、格安チケットとしての魅力は下がりそうです。
「EX早特7」を新設定
次に、東京~新大阪間で新設されるのが「EX早特7」です。「ひかり」「こだま」限定の格安チケットです。普通車指定席が利用できます。
東京~新大阪間の価格は、以下の通りです。
▼「EX早特7」12,490円(新設)
定価(ひかり・こだま普通車指定席)に比べて約13%の割引、自由席に比べて約10%の割引です。
7日前までの予約で、列車変更も手数料不要で可能(差額は必要)なので、使い勝手は良いでしょう。しかし、「のぞみ」に乗車できないのが大きな難点です。
人気が出そうなのは「ひかり」ですが、列車本数が少ないので、販売座席数は限られたものになりそうです。
「ファミリー」2種を改廃
現在の東京~新大阪間では、2人以上の利用で割引率が高いきっぷとして、「EXのぞみファミリー早特3」「EXこだまファミリー早特3」があります。
4月改定では、この2種を廃止する一方、「EXファミリー早特7」を新設します。東海道新幹線の「ひかり」「こだま」を、2~6名(おとな・こどもを含む)で利用可能な商品です。
東京~新大阪間の価格は、以下の通りです。
▼「EXファミリー早特7」 12,000円
※「EXのぞみファミリー早特3」12,570円と「EXこだまファミリー早特3」10,080円は廃止
2人以上で「こだま」を利用してきた利用者には、実質的に値上げとなり、購入期限も7日前に繰り上がります。また、2人以上で「のぞみ」を安く利用できるきっぷはなくなります。
「グリーン車用」も値上げ
東京~新大阪間で、隠れた人気があったのが「EXグリーン早特3ワイド」「EXこだまグリーン早特3」の、グリーン車用の格安チケットです。4月以降は「EX早特3」の名称に統合し、実質的に値上げします。
▼「EX早特3」(のぞみグリーン車) 16,560円
▼「EX早特3」(ひかりグリーン車) 14,670円
▼「EX早特3」(こだまグリーン車) 13,870円
※「EXグリーン早特3ワイド」15,940円、「EXこだまグリーン早特3」11,410円 は廃止
「EXグリーン早特3ワイド」で「ひかり」に乗車していた利用者は値下げになりますが、レアケースでしょう。「のぞみ」のグリーン車と、「こだま」のグリーン車用の割引きっぷが、それぞれ値上げされる、ということです。
お得感が高かった「EXこだまグリーン早特3」の実質値上げには、落胆の声が高まりそうです。
東京~新大阪間の新旧格安チケットまとめ
東京~新大阪間の割引きっぷについて新旧をまとめると、以下のようになります。
【現行】
EXグリーン早特3ワイド 15,940円
EXのぞみファミリー早特3 12,570円
EX早特21ワイド 12,370 円
EX早特28ワイド 12,240 円
EXこだまグリーン早特3 11,410円
EXこだまファミリー早特3 10,080円
【改定】
EX早特3(のぞみグリーン車) 16,560円
EX早特3(ひかりグリーン車) 14,670 円
EX早特3(こだまグリーン車) 13,870円
EX早特21 12,980 円
EX早特3(ひかり・こだま) 12,490円
EXファミリー早特7(ひかり・こだま) 12,000円
【参考:正規価格】
グリーン車(のぞみ)19,590円
グリーン車(ひかり・こだま)19,270円
普通車指定席(のぞみ)14,720円
普通車指定席(ひかり・こだま)14,400円
普通車自由席(のぞみ・ひかり・こだま)13,870円
最低価格は12,000円
ご覧になってわかるとおり、改定により、「EX早特」における東京~新大阪間の最低価格は「EXファミリー早特7」の12,000円となります。
一人で旅行する場合は、「ひかり」「こだま」利用の「EX早特3」になるでしょうか。ただし、「ひかり」の席数制限が厳しそうなのが心配です。
一言で言えば「全面値上げ」で、格安チケットを探しにくくなるでしょう。
「ぷらっとこだま」に注目
「こだま」を利用するなら、EXダイナミックパックの「ぷらっとこだま」のほうがいいのでは、と思う方も多いでしょう。座席数限定、変更不可の旅行商品ですが、前日までインターネットにて予約可能で、3日前や7日前予約が多くなった「EX早特」に比べ、使い勝手は良いでしょう。
「ぷらっとこだま」の現行価格は東京~新大阪間が普通車11,210円、グリーン車が12,470円です。この価格が続くならば、「こだま」利用の場合、「EX早特」よりも「ぷらっとこだま」がおすすめです。
ただし、「ぷらっとこだま」の価格が据え置かれる保証はありません。
最近の「ぷらっとこだま」は、じりじりと値上がりしています。春以降、「EX早特」の価格が上がれば、「ぷらっとこだま」も値上がりしていく可能性があります。
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自由席がお得
総じて見れば、正規価格の自由席が、もっともお得で使いやすく感じられます。とくに、指定席料金が高くなる繁忙期には、お得さが際立ちます。
ただ、2025年3月ダイヤ改正で「のぞみ」の自由席は2両に減少します。そうなると、自由席利用の際には、着席の不安がよぎります。臨機応変に動ける一人旅ならともかく、予定をきっちり固める複数人の旅行では使いづらいでしょう。
「のぞみ」で指定席を望むなら、「EX早特21」くらいしか割引きっぷが見当たりません。しかし、「EX早特21」は、変更不可にしては割引率が低いので、割にあわない印象です。
となると、5月以降に「のぞみ」指定席に乗るなら、多くの場合、正規価格を支払うことになるのでしょうか。(鎌倉淳)