全国の主要スキー場でリフト券の高騰が止まりません。全国のスキー場の2025年シーズンのリフト券価格を調査したところ、前年度に比べ平均で約9%値上がりしていて、大規模スキー場では大人1日券8,000円台が増加しています。
3シーズン連続で約10%値上がり
2024-2025年のスノーシーズンに突入しました。全国のスキー場が発表したリフト券価格を当サイトが調査したところ、大人1日券が平均で約9%も値上がりしていることがわかりました。
スキー場は、照明や圧雪、暖房などで光熱費がかさみます。円安や燃油費高騰によるインフレにより、2022-23年、2023-24年シーズンも、各スキー場でそれぞれ10%程度の値上げをしてきています。今シーズンもインフレは止まず、3シーズン連続で10%程度の値上がりとなりました。リフト券価格は、3年で3割程度、値上がりしたことになります。
この調査は、2024-25年シーズンのリフト券価格を発表している主要スキー場61箇所(一部で共通リフト券との二重計上を含む)を対象におこないました。ウェブサイトなどで公表している大人1日券(土休日)の窓口販売価格を調べています。
2024/25リフト券価格比較
2024年と2025年シーズンの、主要スキー場リフト券価格調査の結果は下表の通りです。(表の無断転載を禁じます)
スキー場 | 2025年 | 2024年 | 値上率 |
---|---|---|---|
富良野 | 7,500 | 7,000 | 7% |
トマム | 7,500 | 7,000 | 7% |
ニセコ全山 | 10,500 | 9,500 | 11% |
ニセコヒラフ | 9,500 | 7,800 | 22% |
ニセコビレッジ | 8,800 | 7,800 | 13% |
ニセコアンヌプリ | 7,000 | 6,700 | 4% |
ルスツ | 14,500 | 11,500 | 26% |
カムイ | 5,300 | 3,800 | 39% |
サホロ | 8,000 | 7,700 | 4% |
札幌国際 | 5,800 | 5,000 | 16% |
テイネ | 7,900 | 6,600 | 20% |
キロロ | 8,000 | 7,400 | 8% |
夏油高原 | 6,400 | 6,000 | 7% |
安比高原 | 7,500 | 7,000 | 7% |
蔵王温泉 | 7,500 | 6,500 | 15% |
ネコマ | 5,700 | 5,500 | 4% |
猪苗代 | 5,600 | 5,600 | 0% |
会津高原たかつえ | 5,500 | 5,500 | 0% |
ハンターマウンテン | 6,000 | 5,700 | 5% |
たんばら | 5,500 | 5,200 | 6% |
万座温泉 | 3,000 | 5,500 | -45% |
MtNaeba | 9,000 | 8,000 | 13% |
苗場 | 7,200 | 6,800 | 6% |
かぐら | 7,200 | 6,800 | 6% |
岩原・上国 | 5,500 | 5,500 | 0% |
神立 | 5,900 | 5,700 | 4% |
GALA | 6,800 | 6,500 | 5% |
川場 | 6,200 | 5,800 | 7% |
尾瀬岩鞍 | 6,000 | 6,000 | 0% |
丸沼高原 | 6,000 | 6,000 | 0% |
軽井沢プリンス | 8,800 | 8,000 | 10% |
パラダ | 5,600 | 5,300 | 6% |
湯の丸 | 5,000 | 4,800 | 4% |
菅平高原 | 5,700 | 5,400 | 6% |
志賀高原 | 8,000 | 7,500 | 7% |
志賀高原焼額山 | 7,500 | 7,000 | 7% |
竜王 | 5,500 | 5,200 | 6% |
野沢温泉 | 7,300 | 6,800 | 7% |
戸隠 | 6,500 | 5,000 | 30% |
斑尾高原 | 7,700 | 6,500 | 18% |
斑尾タングラム | 8,000 | 7,000 | 14% |
赤倉観光 | 6,500 | 5,300 | 23% |
妙高杉の原 | 7,000 | 6,000 | 17% |
アライ | 7,500 | 6,600 | 14% |
白馬岩岳 | 6,500 | 5,200 | 25% |
白馬五竜/47 | 8,500 | 7,500 | 13% |
白馬八方尾根 | 8,000 | 7,200 | 11% |
つがいけ | 7,500 | 6,400 | 17% |
車山高原 | 6,000 | 5,200 | 15% |
白樺高原/2in1 | 5,800 | 5,400 | 7% |
ブランシュたかやま | 5,500 | 5,400 | 2% |
開田高原 | 5,200 | 4,800 | 8% |
高鷲ダイナ | 5,900 | 5,700 | 4% |
めいほう | 5,800 | 5,500 | 5% |
鷲ヶ岳/ホワイトピア | 5,900 | 5,700 | 4% |
ウイングヒルズ白鳥 | 5,700 | 5,500 | 4% |
スキージャム勝山 | 5,800 | 5,500 | 5% |
奥伊吹 | 5,900 | 5,700 | 4% |
びわ湖バレイ | 6,500 | 6,300 | 3% |
ハチ・ハチ北 | 5,500 | 5,000 | 10% |
だいせん | 5,500 | 4,900 | 12% |
平均 | 6,801 | 6,240 | 9% |
※土休日と平日の価格が異なる場合、土休日価格を掲載。
ルスツは3年で2.2倍に
調査した主要スキー場でもっともリフト券価格が高額なのはルスツリゾートです。
2025年シーズン(今年度)の価格は14,500円で、2024年シーズン(前年度)の11,500円から、26%の値上げとなっています。ルスツは2022年シーズンは6,500円でしたので、3年で2.2倍の価格となりました。
ただし、ルスツはオンライン購入の価格は11,200円に抑えていて、窓口販売より22%も割り引いています。各スキー場ともオンライン販売の価格を値引く傾向はありますが、20%以上の大幅割引は珍しいです。
ルスツの高額なリフト券価格の背景には、窓口販売をできるだけ減らすために、窓口価格を高く設定している、という側面もありそうです。
ニセコも1万円突破
ルスツのほかに1万円を超えたのは、ニセコ全山共通券の10,500円です。ウェブ販売でも10,000円となり、大台に乗りました。
ニセコはヒラフ・花園が9,500円、ビレッジが8,800円、アンヌプリが7,000円となっていて、単独ゲレンデでも、リフト券価格が全て7,000円を上回りました。
北海道ではリフト券相場が高騰しています。ルスツ、ニセコのほか、キロロ、トマム、富良野、サホロといった大型リゾートでは、いずれもリフト1日券が7,000円台後半から8,000円台が相場になってきました。
カムイも大幅値上げ
北海道内で低価格路線を貫いていたスキー場といえば、カムイスキーリンクスが有名です。そのカムイも、今シーズンは、ついに大幅値上げに踏み切りました。
前年度が3,800円のところ、今年度は5,300円となっています。39%の値上げ率は、調査した61スキー場で最大です。
カムイスキーリンクスは、旭川市が施設を保有する公設のスキー場です。そのため、この数年、近隣ゲレンデが値上げをするなか、リフト券価格を抑えてきました。
しかし、最近の物価高騰や設備更新の必要性から、旭川市が段階的な値上げを提案。今年度を5,300円とし、来年度は7,000円となることが決まりました。
北海道の他の大規模スキー場のリフト1日券の相場は、7,000~8,000円となっています。そうしたなか、カムイの規模からすれば5,300円でもまだ割安で、7,000円で相応、という印象でしょうか。
したがって、カムイの今シーズンの39%値上げは、いわば「水準訂正」の範囲内で、「高騰」とまでは言えなさそうです。
プリンス系の値上げ続く
本州のスキー場では、MtNaeba(苗場・かぐら共通)の価格がもっとも高く、9,000円となっています。前年度が8,000円でしたので、1,000円の値上げです。
次いで、軽井沢プリンスが8,000円から8,800円に値上げしていています。プリンスホテル系では、妙高杉の原が前年の6,000円を7,000円にしており、17%の大幅値上げです。
強気な姿勢が目立つプリンス系スキー場のなかで、万座温泉は、5,500円を3,000円に値下げしました。リフトのケーブル盗難による営業縮小の影響です。今回調査した範囲で、リフト券の値下げをしたのは万座温泉スキー場だけです。
白馬も8,000円台に
本州で値上げの傾向が強いエリアは、長野県です。とくにリフト券価格が高騰しているのは、外国人に人気の高い白馬エリアでしょう。
白馬で最もリフト券が高い白馬五竜/47では、7,500円を8,500円に値上げしました。つづく八方尾根は、7,200円を8,000円に値上げしています。白馬の主要ゲレンデが、8,000円台に突入したことになります。
そのほか、つがいけが6,400円を7,500円に、白馬岩岳が5,200円を6,500円に大幅値上げしました。
岩岳は、前年度の値上げ幅が200円と小さかったので、今年度に一気に値上げした形です。
戸隠は30%値上げ
長野県で値上げ率が高かったのが、戸隠スキー場です。前年度の5,000円が、今年度は6,500円となっていて、じつに30%の大幅値上げです。
戸隠スキー場も、カムイと同じく公設スキー場で、長野市が施設を保有しています。そのせいか、これまで値上げ幅が抑えられていましたが、今シーズンは大幅な値上げに踏み切り、近隣ゲレンデと同じような価格水準になりました。
大都市近隣で値上げ小さく
リフト券を前年度から据え置いたスキー場は、調査した範囲で、猪苗代、会津高原たかつえ、岩原・上越国際、尾瀬岩鞍、丸沼高原の5箇所です。スキー場の競争の激しい、関東・南東北エリアのスキー場が並びました。
近年値上げのペースが早かったGALA湯沢は、5%(300円)の値上げで6,800円に。湯沢エリアで存在感を高めている神立は、4%(200円)の値上げで5,900円となっています。
首都圏から近いスキー場は、総じて値上げ幅が小さめです。首都圏だけではなく、岐阜県・滋賀県のスキー場でも、値上げ幅が比較的小さくなっています。大都市に近いスキー場で、値上げ幅が小さめということです。
平均9.1%値上げ
調査した61スキー場のリフト1日券の平均価格は、6,801円でした。前年の6,240円から571円、高くなっています。平均値上げ率を計算すると9.1%となっています。
調査対象に小規模ローカルスキー場は含んでいないので、「全スキー場の平均」とは異なります。あくまでも、大型スキー場の平均です。つまり、大型スキー場において、リフト1日券の相場が7,000円に近いところにまで来たことがわかります。
過去4シーズンの推移を取ると、以下のようになります。
2025シーズン=6,801円
2024シーズン=6,240円
2023シーズン=5,626円
2022シーズン=5,241円
3年前に5,200円程度だったリフト1日券が、今シーズンは6,800円程度になったわけです。
表を見ていると、大型スキー場でリフト1日券が6,000円前後だと「安い」と感じるようになりました。5,000円台だと「激安」です。数年前には考えられなかったことです。
リフト1日券が8,000円以上のスキー場は12箇所(共通券含む)を数えました。前年度の4箇所から3倍に増えています。
リフト1日券が7,000円台以上のスキー場は26箇所(同)にも達しています。7,000円以上のスキー場は、2シーズン前には4箇所しかありませんでした。
公有ゲレンデにも値上げのカゲ
全体でみると、値上げの傾向が強いのは、北海道と長野県です。いずれも、インバウンドの流入が多く見込める大型スキー場やリゾートスキー場を抱える地域です。
こうした大型スキー場では、リフトの更新やレストハウスの整備なども進められていて、単に値上げするのではなく、設備投資もしっかりおこなわれています。
一方、首都圏や中京圏・近畿圏から比較的近く、日本人の割合が高いスキー場では、値上げ率が控えめです。こうしたスキー場では、経費を抑えながら、やりくりしているのかもしれません。
そうしたなか、これまで低価格を維持してきた公設民営など地元主導型のスキー場が、耐えきれず値上がりし始めているのが今年の特徴です。公有ゲレンデにも値上げのカゲが忍び寄ってきたわけです。
公有ゲレンデは、手続き上、値上げが難しい場合があるのですが、そんなことを言っていられないくらい、諸物価の高騰が著しいのでしょう。
使いやすいチケットを探す
窓口とウェブ販売に価格差をつけるスキー場も増えています。調べてみると、インバウンドの割合の高い超大型スキー場ほど、ウェブ販売の価格を低めにする傾向があります。それだけ、外国人に対する窓口販売の負担が重いことが察せられます。
高額なスキー場では、分割して使える25時間券など、地元客やリピーター向けに手頃なチケットを設定していることがあります。インバウンド客から十分な収益を得ながら、地域ゲレンデとしての役割を果たそうという工夫でしょうか。
スキー・スノボは、もともとお金のかかるスポーツですが、リフト券の高騰で、庶民からは手の届かないレジャーになってしまわないか、心配です。
利用者としては、スキー場を選ぶ際に、ウェブ販売や、時間券など、使いやすいチケットを探してみるのがよさそうです。(鎌倉淳)