2025年3月15日に実施される鉄道各社のダイヤ改正の概要が発表されました。今回は鉄道新線などの話題はなく、比較的規模の小さな改正です。
そのなかで、ダイヤ改正の注目ポイントをランキング形式でまとめてみました。ランキング順位は筆者の主観で、旅行者にとって関心の高い内容と、サプライズ性が高いものを上位にしています。
似たトピックは近い順位に並べ、全国のダイヤ改正の傾向が理解しやすいようにしてあります。細かい順位の違いに、たいした意味はありません。ランキングの異論は認めます。
1位 東海道新幹線「のぞみ」指定席を2両に
2025年3月ダイヤ改正に大きな目玉がありませんが、多くの旅行者にとって影響がありそうな項目といえば、やはり「のぞみ」指定席の2両化でしょうか。
東海道・山陽新幹線で運行する全ての「のぞみ」の3号車を指定席とします。これにより1列車あたりの普通車指定席が85席増加し、自由席がその分減少します。自由席は1~2号車のみとなります。
着席保証を求める利用者が増えていることを踏まえての措置ですが、好きな席に座りたい旅行者には残念なお知らせでしょう。
自由席数が減少すると、それ自体が「着席不安」を生みますので、今後、「のぞみ」利用者での指定席志向が、より強まる可能性もありそうです。
2位 奈良線で全快速列車に「うれしート」設置
着席保証という点でいえば、JR西日本で有料座席サービス「快速うれしート」の対象線区を拡充します。
琵琶湖線・JR京都線・嵯峨野線・JR宝塚線で新たにサービスを開始するとともに、JR神戸線・奈良線での本数を拡大します。
なかでも驚くのが奈良線で、平日・土休日すべての快速列車に「快速 うれしート」を設定します。追加設定は、平日54本、土休日50本に達します。インバウンド需要などを狙っているのでしょうか。
JR西日本では、JR神戸線の通勤特急「らくラクはりま」も1往復を増発します。着席サービスの拡充に余念がありません。
3位 中央線快速でグリーン車サービス開始
着席サービスでいえば、中央線快速でのグリーン車サービス開始も大きなトピックスです。中央線快速の東京~大月間、青梅線の立川~青梅間で、グリーン車による有料着席サービスを正式に開始します。
中央線グリーン車の連結計画が発表されたのは、2015年2月。それから各駅のホーム延伸工事に着手。当初のサービス開始予定は2020年度でしたので、構想発表から10年、当初計画時期から4年遅れで、ようやく実現します。
グリーン車は、正確には「着席保証」ではありませんが、着席ニーズに応える設備であるのはいうまでもありません。
なお、グリーン車導入あわせて、特急「はちおうじ」「おうめ」は廃止となります。
4位 ハピラインふくい、敦賀~武生間大増発
ハピラインふくいは、日中時間帯に敦賀~福井間の列車を大増発します。武生発着の列車を敦賀まで延伸運転し、敦賀~福井間で、9時~16時台に12本増の28本運転となります。
一部時間を除き概ね30分間隔です。これにより、敦賀でのJR線との接続時間が短縮され、乗り換え列車の選択肢が増えます。
敦賀に10時台から16時台に到着するJR新快速・普通からは、おおむね5分で乗り換えできるようになります。
また、敦賀でJR特急と30分以内に乗り換え可能な列車は、上下合わせて、特急「サンダーバード」は9本増、特急「しらさぎ」は6本増となります。
さらに、大阪方面から敦賀に一番早く到着する特急「サンダーバード」から接続する、快速福井行きを設定します。
ハピラインふくいのダイヤ改正からは、北陸新幹線敦賀~福井間の客を奪いに行く姿勢を感じます。ただ、経営戦略としてやっているというより、利用者からの要望が強いのでしょう。
それだけ、敦賀駅での新在乗り換えが不評なのでしょう。とくに、武生や鯖江の利用者にとっては、要望の強かった改正と言えるかも知れません。
新幹線に対して、並行在来線会社が勝負を挑むようなダイヤ設定は、これまで、あまり見られませんでした。その点で注目度は高く、4位としました。
5位 JR四国、特急大幅削減
JR四国では、特急列車の大幅削減を実施します。
まず特急「うずしお」の1日1往復の岡山発着を高松発着とし、運転区間を縮小します。高松で特急「うずしお」と快速「マリンライナー」を接続する形に改めます。
また、特急「しまんと」は、特急「南風」と分割・併結する列車2往復の運転を取り止め、「南風リレー号」による宇多津接続とします。
さらに、徳島~阿波池田間の「剣山」2往復と、徳島~牟岐間の「むろと」1往復の運転もとりやめます。「むろと」は列車種別そのものがなくなります。
JR四国では、普通列車でも運行を縮小します。理由として「利用状況を踏まえ、人手不足等の状況を考慮」としており、人員不足が大きな要因であることを認めています。
今回のダイヤ改正は、全体的に小規模ながら前向きな内容が多いのですが、四国の特急削減はドラスチックで、注目度は高そうです。
6位 JR四国、パターンダイヤ拡充
JR四国では、ほぼ全線でパターンダイヤの導入または拡充をします。JR四国のダイヤ改正内容としては、特急削減より、こちらのほうが、本質的にはより重要でしょう。
パターンダイヤの導入・拡充は、予讃線、土讃線、高徳線、鳴門線、牟岐線など、JR四国の多くの区間でおこなわれます。予土線にまでパターンダイヤを導入し、江川崎~宇和島間で、終日おおむね2時間間隔となります。
また、徳島駅では、タクトダイヤ時間帯を拡大し、10時~19時台とします。
7位 特急「大雪」が特別快速に
JR北海道では、石北線旭川~網走間を運行する特急「大雪」2往復が特別快速に格下げとなります。車両はH100形の2両編成です。H100形は、「大雪」用に座席を増設し、座り心地を改善した車両を投入します。
また、特別快速「きたみ」は、快速に格下げのうえ、網走まで延長運転します。これにより、旭川~網走間の直通列車は、特急「オホーツク」2往復、特別快速「大雪」2往復、快速「きたみ」1往復の体制となります。
特別快速「大雪」の停車駅は、基本的には特急「オホーツク」と同じです。一部列車は瀬戸瀬にも停車します。
石北線特急の縮小は、利用率の問題もありますが、それよりも、車両老朽化による側面が大きそうです。JR北海道では、北海道新幹線札幌延伸を控え、近い将来に、特急「北斗」の車両が不要になるため、特急用車両の更新がしづらいタイミングとなっています。
こうしたタイミングで、特急の運用を減らし、快速で凌ぐ形になるわけです。北海道新幹線の延伸開業時期がはっきりしないなか、利用者離れを招かないか心配です。
8位 特急「おおぞら」「北斗」一部速達化
JR北海道では、特急「おおぞら」と「北斗」の一部列車で停車駅を削減し、速達化します。
「おおぞら」の対象は下り「7号」で、追分、新夕張、池田、白糠を通過し、札幌~帯広間を2時間21分、札幌~釧路間を3時間54分とします。
「北斗」の対象は上り「2号」で、伊達紋別、大沼公園、五稜郭を通過とし、所要時間を3時間29分とします。
両列車の沿線では、近年、高速道路の延伸が進んでいます。それを受ける形の速達化のようです。
また、夜間の特急「おおぞら」「とかち」系1往復がトマム駅を通過します。トマム駅の全列車停車が崩れます。
9位 南小谷「あずさ」が白馬発着に
中央線特急「あずさ」は、現状で1日1往復が新宿~南小谷間の運転ですが、ダイヤ改正で、運転区間が新宿~白馬間となります。これにより、白馬~南小谷間を運行する特急列車は廃止となるようです。
南小谷駅の特急乗り入れは1982年に開始しましたので、43年でその歴史に幕を閉じることになります。
大糸線は白馬以北の利用者が少ないため、特急廃止はやむを得ないともいえますが、さらなる利用者増を招く懸念も出てきそうです。
10位 「まほろば」定期化
大阪・新大阪~奈良間を土休日に臨時列車として運行している特急「まほろば」が定期化されます。といっても土休日のみ運行は変わりません。
また、同年4月には、車両の内外装に奈良の魅力を表現したリニューアル車両がデビューします。秋ごろには装いの異なるリニューアル車両を追加で投入する予定です。
これまでJR特急列車が定着しなかった奈良県に、土休日のみとはいえ、特急が定期運行することになります。
【つづきを読む】
2025年3月ダイヤ改正「注目ポイント」ランキング【2】