「ローカル路線バスの旅W 第4弾 姫路城→松山城」の正解ルートを検証する。深夜行軍に意味はあったか

これに乗れって言っている気がするんですよ

テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」の第4弾が放送されました。第3弾に参加した髙木菜那をリーダーに据え、村上茉愛とハシヤスメ・アツコを新たに迎えました。

今回の目標は、兵庫県の姫路城から、愛媛県の松山城まで、路線バスを乗り継いで3泊4日で到達する、というものです。例によって、この正解ルートを検証してみましょう。

いつものことですが、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解のうえ、お読みください。

※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。

ローカル路線バスの旅W第4弾
Ⓒテレビ東京

「土曜スペシャル ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」第4弾 兵庫県・姫路城→愛媛県・松山城
【放送日時】2024年10月12日(土) 18時30分~20時54分(テレビ東京、見逃し配信あり)
【出演】高木菜那、村上茉愛、ハシヤスメ・アツコ
【ナレーション】日野聡

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実際ルート

最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者による推定です。

▽1日目
大手前通09:09→09:15姫路駅10:10→10:48JR網干駅11:12→11:26山電網干12:00→12:10釜屋→徒歩16.8km→17:00新町17:36→17:47相生駅18:50→19:19テクノ中央

▽2日目
芝生広場06:15→06:35上郡駅07:40→08:55播州赤穂駅11:46→12:40吉永病院14:25→14:53片鉄片上/片上15:11→16:28岡山駅(大元往復)岡山駅20:20→21:15倉敷駅前21:55→22:23霞橋→徒歩2.9km→23:11新倉敷駅

▽3日目
新倉敷駅07:25→08:06寄島総合支所前→徒歩3.2km→09:06乗時09:10→09:33笠岡駅前11:25→12:22福山駅前12:40→13:27尾道駅前15:00→16:03耕山寺17:21→17:30殿山→徒歩4.6km→19:14大三島BS19:15→20:12今治駅前

▽4日目
今治駅前08:35→09:47松山市駅10:22→10:30ロープウェイ前

ということで、4日目10時30分ごろに、松山城下のロープウェイ前バス停に到達。無事ゴールとなりました。

4日目午前中の早い時間のゴールとなりましたので、今回は大成功と言えます。ルート検証の必要もなさそうですが、気になる部分もありましたので、全体を振り返っていきましょう。


※Googleマップのルートは概略です。実際のルートとは異なります。(以下同)
※配信先でGoogleマップが表示されない方は、こちらのサイトでご覧ください。

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龍野ルート

最初に気になったのは、姫路駅での選択です。龍野から播磨科学公園都市を経て上郡へ抜けるルートの情報を得たものの、接続がよくない様子。そこで一行は海岸線のルートに賭けました。

このとき、仮に龍野ルートを選択していたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
姫路駅10:10→10:59龍野12:19→12:38新宮駅13:31→13:46テクノ中央16:01→16:20上郡駅

▽2日目
上郡駅07:40→08:55播州赤穂駅

龍野ルートでは、1日目の14時前にテクノ中央に到達できます。ただし、テクノ中央での待ち時間が長く、上郡から赤穂への最終バスも早いため、この日は上郡泊となります。

さらに翌朝、上郡で実際ルートに追いつかれますので、結果としては実際ルートに収束します。つまり、一行は海岸線ルートで余計に歩いてしまったものの、上郡でリカバーできていた、ということです。

要するに、海岸線ルートを選択したことは、大勢に影響を及ぼしませんでした。ただ、歩く距離をだいぶ増やしてしまいました。

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釜屋からの相生ルート

実際ルートに戻ります。一行はJR網干駅から山電網干に到達しますが、目指す大浦方面行きのバスは6時間待ち。やむを得ず、御津総合支所行きのバスに乗り、終点手前の釜屋に至りますが、そこで路線が途絶えます。

鰯浜で相生行きのバスを狙いますが便がなく、結局、釜屋から新町まで約17kmも歩くハメになりました。ここを迂回するルートはなかったのでしょうか。

結論を書いてしまうと、海沿いに他の路線バスはありません。そのため、バスを乗り継ぐなら内陸方面に戻る必要がありました。じつは、山電網干から乗車したバスを終点の御津総合支所まで乗れば、隣接する御津文化センターバス停から内陸に向かうコミュニティバスが走っていました。一行が実際に降りた釜屋停留所からでも0.3kmくらいの距離です。

▽1日目
山電網干12:00→12:10釜屋→徒歩0.3km→御津文化センター12:36→13:38播磨新宮駅14:25→14:49テクノ中央15:09→15:35相生駅→徒歩11.8km→19時ごろ播州赤穂駅

御津文化センターからのバスは播磨新宮方面行きで、乗り継いでテクノ中央を経て相生駅に抜けられます。釜屋からほとんど歩かずに、実際より2時間も早く相生駅に着けるわけです。

実際ルートでは、一行は相生駅で情報収集後にテクノ中央に抜け、翌日、上郡に向かっています。それに即せば、上記の乗り継ぎでも、テクノ中央に着いてから相生駅には向かわないかもしれません。

しかし、上郡方面への乗り継ぎが悪いことがわかれば、相生から赤穂を目指す考え方が浮上しても不思議ではありません。歩かずに相生駅に15時半に着いていれば、体力にも余裕があるはずです。その場合、上記のように歩いて播州赤穂に19時ごろに着けたということです。

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龍野・相生ルート

関連して、「龍野ルート」と「相生ルート」を組み合わせると、以下のような乗り継ぎも可能です。

▽1日目
姫路駅10:10→10:59龍野12:19→12:38新宮駅13:31→13:46テクノ中央14:39→15:05相生駅15:32→15:46佐方→徒歩8.9km→18時ごろ播州赤穂駅

相生駅に15時過ぎまでに着いていれば、西相生方面のバスがあり、それに佐方付近まで乗れば播州赤穂駅までの徒歩距離を減らせます。そうると、18時ごろに播州赤穂駅に到着できます。

1日目に赤穂に着くことを目指すのであれば、このルートがもっとも合理的だったように思えます。

ただ、いずれのルートであっても、播州赤穂駅から吉永病院行きのバスは、実際ルートでも使った翌日11時46分発までありません。この路線以外でつながりそうなルートもありませんので、播州赤穂を経由するのであれば、いずれにしろ、赤穂で実際ルートに収束します。

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三石ルート

実際ルートに戻ります。2日目、一行は播磨科学公園都市に宿泊し、始発のバスで6時半ごろに上郡駅に到着します。そこから播州赤穂駅に至り、吉永病院を経て片上に達しました。

地図を見ると、上郡から岡山方面に向かうなら、わざわざ赤穂を経由せずとも、そのまま三石へ抜けたほうが近いようにも思えます。調べてみると、以下のようなルートが見つかりました。

▽2日目
芝生広場06:15→06:35上郡駅08:30→08:45梨ヶ原→徒歩3.3km→三石09:43→10:04片鉄片上/片上10:35→11:48岡山駅12:00→12:47中庄駅→徒歩5.0km→14:00倉敷駅14:45→15:18倉敷芸科大15:30→15:42新倉敷駅17:10→17:51寄島総合支所前17:56→18:10里庄駅→徒歩5km→笠岡駅前

上郡駅を8時30分に出るバスに乗り、終点の梨ヶ原から3kmあまり歩けば三石に達します。三石をちょうどいい時間に出るバスがあり、片上まで利用できます。片上での接続もよく、岡山に12時前に到着。実際ルートより4時間半も早く岡山駅に着けます。

そのまま実際ルートに即して進むと、2日目は里庄駅まで乗り継げます。ただし、里庄駅周辺に宿泊施設は乏しそうなので、歩いて笠岡駅近辺で泊まることになるでしょう。

さらに、3日目以降は以下のように乗り継げます。

▽3日目
笠岡駅前08:10→09:14福山駅前10:30→11:17尾道駅前11:55→12:58耕三寺14:35→14:44殿山→徒歩4.6km→16:00大三島BS16:15→17:07今治駅前

▽4日目
今治駅前06:45→07:57松山市駅

4日目の早朝に松山市駅に到着できます。松山城ゴールは9時ごろでしょうか。今治から松山へのバスの最終便には間に合わず、3日目のゴールはできませんが、しまなみ海道ルートでは、実現可能な最速のゴール時刻と思われます。

現実には、早朝の上郡駅での情報収集は難しく、県境を越えた三石からのコミュニティバスの時刻を知る術はなさそうです。そのため、三石ルートの実現性は小さかったでしょう。

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倉敷へ急いでいたら

実際ルートに戻ります。一行は岡山駅に16時半頃到着し、大元の営業所での情報収集を経て、20時20分発の倉敷行きバスに乗り継ぎます。

結果的に岡山駅で4時間近くも停滞した形になってしまいました。ここで営業所に寄らず、「とりあえず倉敷方面」と決め込んで進んでいたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
岡山駅17:20→18:15中庄駅→徒歩5.0km→19:20倉敷駅19:20→19:54霞橋20:12→20:22新倉敷駅

倉敷方面へ向かう「岡倉線」の次発は17時20分中庄行き。中庄駅から倉敷駅までは約5kmで、それを1時間5分で歩けば、倉敷駅から霞橋を経由して、新倉敷駅まで乗り継げます。

ただ、5kmを1時間は、不可能ではないにしろ、先のバス時刻を知らない状況で急ぐには現実的ともいえません。中庄から倉敷まで普通の速度で歩けば新倉敷駅までバスを乗り継げず、結局、以下のように、霞橋付近(精思高校霞丘校入口)から新倉敷駅まで3kmを歩くことになります。

▽2日目
岡山駅17:20→18:15中庄駅→徒歩5.0km→19:30倉敷駅20:00→20:28精思高校霞丘校入口→徒歩3.4km→新倉敷駅

つまり、実際ルートのように岡山20時20分発のバスに乗ったほうが、同じ到達地点(新倉敷駅)に至るのに歩く距離は短いわけです。となると、岡山駅で先を急がず、情報収集に時間を使ったことは、的確な判断だったといえるでしょう。

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倉敷駅に泊まっていたら

岡山での情報収集に時間がかかったこともあって、一行が倉敷駅に到達したのは21時過ぎでした。遅い時間ですし、ホテルも豊富な場所ですので、ここで泊まってもよさそうです。しかし、リーダー髙木の決断で、さらにバスに乗り、3kmを歩いて新倉敷に達しました。

仮に、倉敷駅近辺に泊まり、翌朝の始発バスを待っていたらどうなっていたでしょうか。

▽3日目
倉敷駅07:55→08:32倉敷芸科大学08:52→09:04新倉敷駅11:40→12:20寄島総合支所前12:27→12:36鏡西→徒歩0.8km→乗時14:20→14:42笠岡駅前15:10→16:08福山駅前16:50→18:09クロスロードみつぎ18:25→19:07尾道駅前

▽4日目
尾道駅前07:05→08:08耕三寺09:43→09:52殿山→徒歩4.6km→大三島BS12:45→13:37今治駅前14:39→15:51松山市駅

時刻表をたどっていくと、3日目はほとんど歩かず、4日目も5km程度の徒歩で、15時頃にゴールできます。そのため、倉敷駅に泊まっていても、結果的にはゴールできることに変わりなかった、ともいえます。

ただ、3日目の福山から尾道の乗り継ぎは少し難しく、いったん北に向かって府中市を経由して、クロスロードみつぎから南下するという大回りルート(府中ルート)を採らなければなりません。

この乗り継ぎを福山駅での42分の接続時間で探し出さなければならず、実現できたかは微妙なところです。

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府中ルートを見つけ出せなければ

仮に「府中ルート」を見つけ出せなければ、以下のようになります。

▽3日目
福山駅前16:45→16:59地頭分→徒歩7km→松永駅21:10→21:40尾道工業団地22:00→22:23尾道駅前

3日目に福山市内の地頭分(備後赤坂付近)から松永駅まで歩き、2時間くらいバスを待って尾道工業団地を経て、尾道駅に22時半頃到着する乗り継ぎです。松永駅で待てなかったり、尾道工業団地経由のルートを見つけ出せなかったら、さらに尾道駅まで10kmを歩くことになります。合計17kmの大行軍です。

それでも、3日目に尾道駅まで到達できればゴールは容易なのですが、諦めて松永駅あたりで泊まってしまうと、4日目が苦しくなります。たとえば以下のようになります。

▽4日目
松永駅前06:20→06:47三成07:03→07:24尾道駅前08:15→09:03土生港前10:10→10:40耕三寺11:38→11:47殿山→徒歩4.6km→大三島BS13:42→15:51松山市駅

4日目にスムーズにゴールするための要件は、尾道駅07時05分発の生口島直行バスに乗ることです。しかし、この乗り継ぎでは間に合いません。リカバーするには、上記のように、因島(土生港前)まで行き、生口島(耕三寺)までのバスに乗り継ぎ、島内バスに乗り換えなければなりません。

この乗り継ぎを見つけられれば、夕方にゴールできます。因島から生口島のバスを見つけられない場合、大三島まで約15kmを6時間で歩き、大三島15時12分発のバスに乗ってゴールできますが、乗り遅れたらゴールできなくなります。このバスが松山市行きの最終バスだからです。

倉敷泊をまとめると

まとめると、倉敷泊の場合、「福山駅42分接続で、府中ルートを探し出す」「松永駅で21時過ぎの尾道工業団地ルートを探し出す」「福山市内から尾道まで17kmを夜まで歩く」「因島、生口島、大三島と乗り継ぐ」のいずれかを達成しなければゴールできないのです。

今回のメンバーは健脚揃いですし、いずれも実現可能だとは思います。とはいえ、比べれば、霞橋から新倉敷駅まで3kmの徒歩など軽い話です。

つまり、2日目夜に倉敷駅に泊まらずに、無理をして新倉敷駅に至ったことは、3日目以降の負担を大きく軽減する好判断だったといえます。まさに「バスがあるのにステイする論理は弱い」を裏付ける結果と言えるでしょう。

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乗時で乗り遅れたら

実際ルートに戻ります。3日目の一行は、寄島総合支所から乗時へ歩き、わずか3分の待ち時間で笠岡行きのバスを捕まえます。仮にこのバスに乗り遅れていたらどうなっていたでしょうか。

乗時からのバスは当面なく、歩いた先で別路線の停留所を通ったとしても、適当な時刻のバスがないので、結局笠岡駅まで歩いていたでしょう。寄島総合支所から笠岡駅まで合計11kmを3時間20分程度で歩ければ、実際ルートと同じ笠岡駅前11時25分発に間に合います。

しかし、それに乗り遅れると、次は15時10分発になってしまいます。以下のような乗り継ぎです。

▽3日目
新倉敷駅07:25→08:06寄島総合支所前→徒歩3.2km→乗時→徒歩7.5km→笠岡駅前15:10→16:08福山駅前

これは倉敷駅泊と同じ乗り継ぎになるので、先述した4つの難題の一つをクリアしなければゴールできなくなります。一気にゴールの難易度が上がるわけです。

それを避けられたわけですから、寄島から乗時の峠道を急いだことには大きな価値がありました。

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大三島で乗り遅れたら

実際ルートに戻ります。一行は尾道駅から、しまなみ海道の路線バスで生口島の耕三寺まで達し、さらに島内バスで多々羅大橋のたもとにある殿山までたどり着きます。

そこから海を渡って大三島バスストップを発見しました。

大三島では、バス停に着いたと同時に今治への最終バスが来て、その日のうちに今治に達しました。

仮にこの最終バスに乗り遅れていたらどうなっていたでしょうか。3日目を大三島で宿泊することになります。

▽4日目
大三島BS06:40→08:49松山市駅

大三島の始発バスは特急バスで、松山行きです。このバスに乗ると、実際ルートより1時間早く松山に到着します。今治で降車して情報収集する必要もありませんので、実際ルートよりも1時間早くゴールできていたでしょう。

つまり、3日目夜に大三島で間に合わなかったほうが、ゴール時刻は早かった可能性が高いわけです。言い換えれば、3日目夜の最終バスに間に合ってしまったが故に、ゴール時刻が1時間遅くなった、といえなくもありません。

もちろんそれは些細な話です。髙木一行の3日目の乗り継ぎに非の打ち所はなく、今治に到達した時点で、勝利は確定したといっていいでしょう。

【続きはこちら】
「ローカル路線バスの旅W 第4弾 姫路城→松山城」の正解ルートを考える【2】違うルートをたどったら?


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序章 鉄道未来年表 2025~2050
1章 人口減少時代の鉄道の未来
2章 東京圏の鉄道の未来
3章 大阪圏の鉄道の未来
4章 新幹線と並行在来線の未来
5章 地方鉄道の未来
6章 車両ときっぷの未来

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