東北新幹線、貨物専用車両を考える。先頭車を充当、グランクラスはどうなる?

次世代車両で導入検討

東北・北海道新幹線で、編成の一部に貨物専用車両を設ける案が浮上しています。実現した場合、次世代車両はどのような形になるのでしょうか。考えてみました。

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荷物を運ぶ専用車両

新幹線の「貨物専用車両」を最初に報じたのは朝日新聞。2024年10月1日付で、JR東日本が「荷物だけを運ぶ専用車両を開発する方針を固めた」と報じました。

同紙によれば、「荷物専用車両は座席を完全に取り払う」「乗降ドアは拡大」「1編成に2両程度」「乗客が荷物専用車内を通らずに済むよう、先頭車をあてる」といったことが検討されているとのことです。

日本経済新聞と読売新聞が同日に後追い記事を報じましたが、朝日の記事の範囲内の内容でした。いずれの報道でも、将来的には、全車両が貨物用となる編成の開発も視野に入れるとしています。

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グランクラスをどうするのか

報道が事実とすれば、JR東日本が開発している次世代新幹線車両の先頭車2両を、貨物専用車にする方針が検討されていることになります。

新幹線の具体的な路線名は明かされていませんが、東北・北海道新幹線が対象であるのは間違いないでしょう。つまり、同線の現行E5系の後継車両に、貨物車両を連結する検討が進められているわけです。

最初に気になるのは、現在先頭車に設置されているグランクラスをどうするのか、という点でしょう。グランクラスは、E5系の先頭車両(10号車)に組み込まれています。これを貨物専用車両にするのであれば、グランクラスを廃止にするか、中間車両に移すほかありません。

新幹線が札幌まで開業すれば、グランクラスの需要は高まると思われます。一方で、現状のグランクラスの利用状況をみると、「はやぶさ」はともかく、「やまびこ」や「なすの」において中間車両に移してまで存続させる必要があるのか、と考えてしまいます。

両先頭車を貨物車両にしたうえに、中間車でグランクラスを増やしたら、普通車の座席が減りすぎてしまうでしょう。

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共通運用にするのか

そもそも次世代車両は、「はやぶさ」と「やまびこ」「なすの」を共通運用にするのか、という疑問も湧きます。

東京駅のホームの逼迫状況をみれば、列車名にかかわらず車両はできるだけ同一のほうが、柔軟なダイヤを組むことができ、鉄道会社としては都合がいいでしょう。

しかし、次世代車両は360km/h運転を目標としており、そのために先頭車のノーズが長く、客室に充当できるスペースが減るとみられています。

東北新幹線内のみの運行なら、320km/h運転程度で事足りるため、客室を減らしてまで360km/hにする必要はないと考えることもできます。となると、次世代の東北新幹線車両は、ノーズの長い360km/h車両と、ノーズの短い320km/h車両の2形式を開発する可能性もあるでしょう。

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編成両数の問題

編成両数も不透明です。現行のE5系は10両編成ですが、360km/h車両はノーズが長いため、10両編成のままでは、貨物車両なしでも客席数の減少が想定されます。

しかし、札幌延伸を控え、座席数の減少は避けたいところでしょう。となると、2両を足して12両編成にする案が考えられます。しかし、いわて沼宮内以北の新幹線ホームは10両までしか対応していません。12両編成を投入しても、ホームの延伸をしなければ、客室に使えるのは10両までです。

ならば、先頭車の2両を貨物用にしてしまおうというのは、合理的な考え方です。貨物を扱う駅では貨物用のホームの延伸が必要になりますが、旅客用のそれと比べれば改修は小規模で済むでしょう。ただ、ノーズが長いため、積載できる荷物はあまり多くはなさそうです。

また、12両編成にしてしまうと、「こまち」E6系や、「つばさ」E8系と併結した場合に19両になってしまいます。これでは盛岡駅以南のホームにも収まりません。となると、360km/h車両を12連にした場合、併結はできず、単独運行になります。

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2タイプに分ける?

こうした課題を考えると、東北新幹線の次世代車両は、360km/hタイプと、320km/hタイプに分かれるのではないでしょうか。

360km/hタイプは12両として貨物専用車両を連結し、東京~札幌の直通列車用として単独運用します。320km/hタイプは、現行の編成を踏襲した、貨物車両のない10両編成として運用し、E6系やE8系との併結運転もおこないます。

共通運用ができなくなることによるダイヤの制約が生まれるものの、長距離と中短距離で車両を分けること自体は、不自然ではありません。

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本州内、道内用と分離?

10連と12連を分ければ、上述のグランクラスについても、12連で中間車両に移して残すといったことが可能になります。1室も要らなければ半室でもいいでしょう。10連は本州内運用が主になるので、グランクラスを外すという選択もあり得ます。

本州・北海道直通車両を360km/hの12連とし、本州内車両を320km/hの10連とするなら、道内車両は320km/hの6連から8連でいいかもしれません。道内運行で10連は輸送力過剰ですから、本州直通と分離するのは合理的でしょう。実現するかはともかく、道内車両を専用化すれば函館駅乗り入れ時の運行コスト削減にもつながりますので、三セク会社も助かります。

いずれにしろ、JR東日本社内でも検討中の事柄ですし、何も決まったことはなく、ここまで記したことは、すべて筆者の「感想」です。「予想」ですらありません。それでも、貨物輸送を拡大する取り組みは興味深く、運行本数の少ない地方新幹線に新たな可能性を感じさせてくれます。(鎌倉淳)


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