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「ローカル路線バスの旅W 第1弾 中禅寺湖→野島崎灯台」の正解ルートを考える【1】「女子バス旅」のデビュー戦
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」のルート検証、話を実際ルート3日目に戻します。
千葉北部の難路
一行は、千葉県北部の難しい乗り継ぎをこなし、なんとか柏駅に到着しました。ここで進路に悩みますが、聞き込みでバス待ちの乗客から沼南車庫の存在を教えられます。沼南車庫では、セブンパークアリオ柏から新鎌ケ谷へのルートを聞き出し、局面の打開に成功しました。
このあたりはバス路線が複雑なうえ、運行会社が複数にまたがることから、ルートを探すのに苦労します。そこを聞き込みで見事に乗り切ったのは、鮮やかと言うほかありません。
他にもっと良いルートはないかと探してみましたが、筆者が調べた限りでは「アリオ柏から新鎌ケ谷へ抜ける」以上の乗り継ぎはなさそうです。つまり、柏駅の局面において、一行はベストルートを選択したように感じられます。
新鎌ケ谷から千葉市方面に関しては、白井から切り返して船橋を目指さずとも、千葉ニュータウン中央に出る方法もありますし、津田沼を目指すルートもあります。
どれが最短かは判断しかねますが、一行は歩かずに千葉市まで乗り継げたので、「正解ルート」のひとつをたどったとみてよさそうです。
外房ルート
一行は3日目の夕方に千葉駅に到着し、館山へのアプローチを検討します。難関は浜野駅~八幡宿駅間で、案内所にてバスがないことを知らされます。実際には、早朝に1便だけ走っていますが、日中便はすべて運休となっています。
では、一行が諦めた、外房ルートはどうでしょうか。千葉駅から茂原を目指すと、以下のようにつながります。
▽3日目
稲毛駅16:55→17:20千葉駅19:05→19:36浜野駅東口
▽4日目
浜野駅東口06:35→07:12ロングウッドステーション07:30→07:57浜町08:03→08:40大多喜車庫08:55→09:28勝浦駅10:00→10:18興津駅→徒歩6.3km→誕生寺入口13:02→13:31安房鴨川駅13:37→14:37館山駅前15:15→15:51野島崎灯台口
このように、茂原(浜町)から大多喜を経ると勝浦までバスがつながります。茂原駅まで行ってしまうと乗り継げないので、浜町でのショートカット技が重要になります。
その先、興津~鴨川間で6kmほど歩かなければなりませんが、ゴールは可能です。ただ、徒歩距離が長いので、外房ルートがとくに優れているとはいえません。
すなわち、一行が浜野から木更津を目指した道のりは間違っていませんでした。
「カピーナ号」ルート
実際ルートに戻ります。4日目、一行は木更津への難しい乗り継ぎを聞き出し、最終的に安房鴨川から館山へつながる、ゴールへの道筋を見つけ出しました。
ただ、一行がたどったルート以外にも、たとえば、以下のような乗り継ぎがあります。
▽4日目
八幡宿駅06:20→06:52姉ヶ崎駅07:25→07:40天羽田杉浦09:43→10:58安房鴨川駅112:25→13:25館山駅前14:15→14:51野島崎灯台口
天羽田杉浦から乗車するのは、高速バス「カピーナ号」です。「カピーナ号」は、天羽田杉浦から下道経由なので、ルール上利用できます。
ここまでの検討でも、すでに「カピーナ号」を使った乗り継ぎを使用しています。このバスの情報をつかめれば、安房鴨川への道筋はぐっとラクなものになっていたでしょう。
内房ルート
一行は、当初、内房線に沿って木更津まで南下するルートも検討していたようです。その通りに進んだらどうなるでしょうか。
▽4日目
八幡宿駅06:20→07:03別荘下→徒歩2.3km→代宿団地08:00→08:27袖ケ浦駅南口/北口09:00→09:36木更津駅西口
八幡宿からJR内房線に沿って進むならこのルートですが、途中で2.3kmも歩きますし、代宿団地のバス停は見つけにくい場所にありますし、木更津駅到着時刻は実際ルートより遅いですし、いいことはありません。
したがって、八幡宿駅から木更津駅へのアプローチは、実際ルートが正解といっていいでしょう。このあたりの聞き込み力は、4日目にして腕を上げてきた観がありました。
内房・大貫ルート
内房ルートにこだわるならば、木更津からさらに君津方面へ南下することになります。その場合は、以下のようになります。
▽4日目
木更津駅西口09:45→10:11青堀駅10:46→11:01大貫駅東口/大貫駅前15:03→15:21笹毛→徒歩2.5km→上総湊17:40→17:57東京湾フェリー金谷港
大貫駅までは順調ですが、次のバスは15時03分。その後、金谷港までは行き着けますが、そこで断念となります。
このルートの場合、実際には大貫駅の段階で木更津に戻るか、無理矢理歩くかという選択になるので、上記のような乗り継ぎにはならないでしょうが、いずれにしろ、ゴールするのは厳しそうです。
内房・マザー牧場ルート
あるいは、マザー牧場を目指すかもしれません。その場合は、以下のようなルートになります。
▽4日目
木更津10:05→10:37君津駅南口10:45→11:25マザー牧場12:45→13:08佐貫町駅前→徒歩5.0km→上総湊15:30→15:42高島別荘入口→2.9km→東京湾フェリー金谷港17:05→18:02安房鴨川駅
この場合は、金谷から安房鴨川に至り、そこで断念となります。調べた限りでは、内房ルートでゴールするのは難しく、木更津から君津方面へ向かわなかったのは正解といえます。
水戸ルート
ここで話を1日目に戻します。宇都宮に戻って、水戸を経由するルートを見てみましょう。以下のようになります。
▽1日目
中禅寺温泉11:00→11:40日光駅12:05→13:23宇都宮駅16:59→17:51市塙駅18:05→18:48烏山駅前
▽2日目
烏山駅前08:12→08:47高部車庫09:13→09:57大宮営業所10:30→11:26水戸駅北口12:00→13:10茨城空港13:35→14:10石岡駅15:55→16:40土浦駅17:30→18:20江戸崎
▽3日目
江戸崎07:00→08:00佐原駅08:25→09:26京成成田駅10:20→10:58八街駅12:40→13:17沖十文字14:14→14:38千城台駅14:45→15:14千葉駅15:35→16:06浜野駅東口
▽4日目
浜野駅東口06:47→06:53八幡宿駅西口07:05→07:37姉ヶ崎駅08:15→08:30天羽田杉浦09:43→10:58安房鴨川駅12:25→ 13:25館山駅前14:15→14:51野島崎灯台口
1日目に烏山方面へやや北上して1泊。2日目に水戸から土浦を経て霞ヶ浦沿いに進んで江戸崎に至ります。3日目に成田から千葉に至り、浜野駅付近で宿泊。4日目は「カピーナ号」を捕まえるという乗り継ぎです。このルートならば、全区間でほとんど歩かずにゴールできます。
現実には、宇都宮から烏山方面へ北上するのは抵抗があるでしょう。また、上記乗り継ぎでは、浜野駅にて16時頃に活動を終了し、宿泊しています。浜野駅~八幡宿駅間のバスが早朝1本しかないからですが、現実感のある乗り継ぎではありません。
とどのつまり、「徒歩なし乗り継ぎ」は机上の理想解にすぎないのですが、いちおう「バスだけで乗り継げる」ルートも用意されていた、ということです。
水戸・浜野徒歩ルート
ちなみに、上記乗り継ぎで、浜野駅で泊まらずに先に進んだら、以下のようになります。
▽3日目
浜野駅→徒歩2.5km→八幡宿駅西口17:00→17:32姉ヶ崎駅東口18:06→18:21天羽田杉浦19:38→20:50安房鴨川駅
▽4日目
安房鴨川駅07:27→08:27館山駅09:05→09:41野島崎灯台口
3日目は安房鴨川まで進むことができ、4日目の午前中にゴールできます。
要するに、那須烏山を経由する大回りルートであっても、急げば途中3km弱の徒歩だけで、4日目の早い時間にゴールできる、ということです。
逆算してみると
ここまでお読みいただいて、今回は多彩なルート選択が可能だったことがおわかりいただけたかと思います。それだけ時間に余裕のある設定だったということです。
そこで、おおむね実際ルートに即して、ゴール可能な乗り継ぎを逆算してみましょう。
▽3日目
小山駅西口06:40→07:10間々田駅西口→徒歩8.3km→松原町会館前10:18→10:25古河駅西口10:45→11:09境町11:31→11:35新町13:00→13:24いちいのホール13:27→14:38野田市役所14:46→15:21西亀山→徒歩3.3km→江戸川台東口17:44→18:07柏の葉キャンパス駅東口18:19→18:42柏駅西口/柏駅東口18:57→19:13セブンパークアリオ柏前19:30→19:53新鎌ヶ谷駅
▽4日目
柏駅06:00→06:19沼南体育館前→徒歩6.3km→新鎌ケ谷駅08:40→09:07小室公園09:13→09:43北習志野駅入口09:55→10:32津田沼駅11:04→11:29イオンモール幕張新都心グランドモール前11:44→12:10高洲入口12:24→12:45千葉駅13:05→13:36浜野駅東口→徒歩2.5km→八幡宿駅西口14:20→14:52姉ヶ崎駅東口15:30→15:51天羽田杉浦16:03→17:18安房鴨川駅17:50→18:50館山駅前19:05→19:39野島崎灯台口
このように、実際ルートに近い形で乗り継いでも、4日目朝に柏駅、3日目朝に小山駅にいれば、時刻表上はゴール可能です。
スタートから小山までは1日で到達できますので、丸一日の余裕があるわけです。今回、ゴールへのルートが多数存在するのは、日程的な余裕ゆえといえそうです。
モデルルート
今回は、ルートの選択肢が多いので、何か一つの乗り継ぎを「最適解」として提示するのには無理があります。
とはいえ、それでは愛想がないので、「最適解」ではなく、実現可能で徒歩距離が少ない一つの例を「モデルルート」として検討してみましょう。
まず、水戸経由は歩かずに茨城県に入れますが、宇都宮から北上するのは選択しづらいでしょう。そのため、宇都宮からは石橋ルートで小山に至るのが現実的で、この間約8kmの徒歩は不可避と考えます。
そのうえで、大きな分岐点は小山にあり、結城市からつくば市を経て取手を目指すルートが現実的に選択しうる最善手に感じられます。
本来なら、つくば市から、中核都市である柏市を目指したいところですが、つくば市から柏市は案外難しいので、取手市に至ってしまう、という形です。取手駅で情報収集し、試行錯誤すれば、布佐から千葉ニュータウンに入るルートを探すことは不可能ではなさそうです。
すなわち、「モデルルート」のひとつとして、以下の取手ルートを挙げておきます。
▽1日目
中禅寺温泉11:00→11:40日光駅12:05→13:23宇都宮駅14:30→15:23石橋駅→徒歩7.9km→小金井駅西口18:45→19:16小山駅西口
▽2日目
小山駅東口08:50→09:03犬塚交差点西→徒歩2km→城西病院09:47→10:08結城駅北口10:25→10:44筑西遊湯館11:21→12:11下妻駅13:40→14:38つくばセンター14:50→15:04谷田部車庫15:40→16:40取手駅西口/取手駅17:10→17:31とねっ子公園前17:40→17:50布佐駅/布佐駅東口18:03→18:28千葉ニュータウン中央駅19:01→19:11船尾車庫19:15→20:12津田沼駅20:24→21:02 幕張本郷21:12→21:29海浜幕張駅
▽3日目
海浜幕張駅07:10→07:30稲毛海岸駅07:48→08:25千葉駅08:35→09:06浜野駅東口→徒歩2.5km→八幡宿駅西口10:50→11:22姉ヶ崎駅東口12:25→12:46天羽田杉浦12:53→14:08安房鴨川駅16:05→17:05館山駅前17:15→17:51野島崎灯台口
繰り返しますが、ゴール可能なルートは多数ありますし、「モデルルート」は机上論における筆者の主観にすぎません。そもそも、一行はゴールできたのですから、一行のたどったルートが「正解」であることに変わりありません。
平易なお題
まとめてみると、今回は、ゴール可能なルートが多数あり、時間的にも余裕があります。したがって、お題としては平易だったでしょう。「バス旅Z」の終盤はルート設定が厳しすぎたので、それに比べるとだいぶ簡単です。
今回は、女性3人で構成するチームの初戦ということで、制作側も演者の力量を測りかね、甘めの設定をしたと推察します。
実際には、見事な脚力や思い切りを見せる一方で、聞き込みには甘さもあり、行き当たりばったり感も漂いました。
とはいえ、女子三人組のコミュニケーション力は高く、バス待ち客から沼南車庫の存在を聞き出したときなどは、このシリーズの原点である「人情ふれあい旅」のサブタイトルを思い起こさせてくれました。沼南車庫での聞き込みとあわせ、新鎌ケ谷への道筋を探し出す場面は、今回のハイライトでしょう。
全編を通じてチームの雰囲気は明るく、厳しさが漂いがちな最近の「バス旅」シリーズのイメージを一新させています。次回はどんなメンバーで、どんなルートが用意されるのでしょうか。楽しみです。(鎌倉淳)