格安航空会社LCCのピーチ・アビエーションは、病欠が相次ぎ機長を確保できないとして、5月19日~6月30日の間、国内線、国際線の448便を計画減便すると発表しました。「計画減便」はピーチの表現ですが、事実上の欠航です。このまま補充が進まなかった場合、夏ダイヤが終わる10月25日までに最大2088便が欠航する可能性があります。
欠航が決まったのは、関西空港と札幌、仙台、松山、福岡、鹿児島、那覇、ソウル、香港を結ぶ路線です。具体的な欠航便は以下の通りです。ただし、以下の便が毎日欠航するわけではなく、欠航日は便によって異なります。
ピーチ欠航対象便
関西~札幌 101,105,109,102,106,110
関西~福岡 151,157,152,158
関西~鹿児島 191,192
関西~仙台 133,137,134,138
関西~沖縄 215,219,216,220
関西~松山 301,302
関西~ソウル 005,006
関西~香港 067,068
(※いずれの区間も、欠航日は便によって異なる)
上記のうち、欠航は札幌線、仙台線、松山線、福岡線、沖縄線が中心です。人気の高い台湾への便は欠航がありません。予約の少ない便を中心に欠航し、なるべく影響を小さくしようと配慮した様子がうかがえます。
448便というと多いようにも見えますが、1日あたり平均9便程度ですので、経営の屋台骨を揺るがす規模ではなさそうです。448便の欠航で影響する乗客は約16,000人で、払戻や別便への変更に応じます。
機長は2割近く不足か
井上慎一最高経営責任者CEOは、国土交通省で記者会見し謝罪しました。欠航理由は、機長52人のうち8人が病気やけがで長期欠勤していることと、当初見込んでいた機長の増加10人が5人にとどまったことだそうです。病欠者が増えたのは、けが人などが相次いだためで、感染症などによるものではありません。
ピーチの4月末時点の運航乗務員は108人で、機長が52人、副操縦士は56人とのこと。ピーチによると、機長の長期欠勤は5人まで計画に織り込んでいるとのことで、差し引き3人が不足という計算になります。さらに、機長の新規雇用が5人不足したとしていますので、計8人が足りないことになります。稼働中の機長が44人ですから、実に2割近い欠員状態ということになります。これだけの欠員をすぐに埋めるのは難しく、欠航が6月までで済むかどうかは予断を許しません。
7月以降も機長の補充がうまくいかなかった場合、10月までに最大2088便が欠航します。これは、ピーチ社全便の約16%に当たります。2割機長が足らないのなら、その程度の欠航になるのは仕方ないことでしょう。この場合、乗客約26,000人に影響し、約30億円の収入が失われることになるそうです。
パイロット不足は世界的な傾向で、とくにアジアでは航空需要の急増とともに、パイロット不足が深刻化しています。ピーチはエアバス機材を使用していますが、エアバスを操縦できるパイロットが日本には少ないことも、ピーチの機長不足の背景にあるでしょう。
ピーチはLCCの中でも好調な業績を維持している企業です。それでも、経営基盤はまだまだ盤石にはほど遠いことを、今回の大量欠航は物語っています。