テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第18弾が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。今回のマドンナは、元SKE48の松井珠理奈です。
今回の舞台は中部地方。石川県輪島市から3泊4日で静岡県御前崎市を目指します。チェックポイントはありません。例によって正解ルートを検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者の推定です。
▽1日目
輪島駅前09:45→10:38穴水駅前12:06→12:35曽福→徒歩15.6km→大橋駐車場16:23→16:46七尾駅前17:00→17:39脇17:50→18:54高岡駅前19:35→20:15富山駅前
▽2日目
富山駅前07:00→07:56猪谷09:15→09:57神岡営業所10:10→10:33双六口10:33→11:44平湯温泉12:55→14:23松本BT15:00→15:24寿台東口→徒歩2.3km→まつもと医療センター→徒歩8.0km→塩尻駅
▽3日目
塩尻駅09:35→10:06御野立口→徒歩3.5km→岡谷市看護専門学校前10:48→11:09岡谷駅12:30→13:26茅野駅13:55→14:26原村役場14:50→15:06富士見駅→徒歩12.1km→下教来石下17:32→18:12韮崎駅
▽4日目
韮崎駅07:00→07:42甲府駅前08:10→09:28河口湖駅11:05→13:12新富士駅13:46→13:56富士駅前→そば食事処金時14:01→14:05橋下南→徒歩3.0km→富士川駅→徒歩1.2km→蒲原病院→徒歩8.1km→由比駅→徒歩5.2km→新浦安橋19:27→19:48清水駅前
ということで、最終日に粘りを見せたものの、清水駅にて失敗となりました。一行の徒歩距離は4日間で約60kmにも及ぶという苦難の道のりでした。とくに、最終日の由比から清水に至る薩埵峠越えは相当に厳しく、史上最年少の若きマドンナ・松井をして「本当に無理だと思った」と振り返らせています。
そもそも輪島~御前崎というお題は中部山岳地帯を越える設定で、一見して難易度が高いことが察せられます。番組告知では「史上最難関」と称されましたが、ゴール可能なルートはあったのでしょうか。検証してみましょう。
※Googleマップのルートは概略です。正確に表示しているとは限りません。(以下同)
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第18弾 石川・輪島~静岡・御前崎
【放送日】2022年1月8日(土) 18時30分~20時54分(テレビ東京系列)
【出演】田中要次、羽田圭介、松井珠理奈
【ナレーター】津田健次郎
能登中島方面に向かったら
1日目、一行は輪島駅を09時45分発のバスで穴水に向かいます。輪島からは能登半島西岸にある門前総持寺方面へのバスもありますが、乗ってしまうとそこで行き詰まります。のと里山街道(自動車専用道)を経由するバスは使えないようで、穴水に行く以外のルートは封じられていました。
曽福まで順調に乗り継ぎますが、そこでバスが途絶えます。その先、1.3km南で横見集会所という七尾市のコミュニティバスのバス停を見つけたものの、土休日は運休です。やむなく一行は能登島に渡り、計15kmを歩き七尾へのバスを見つけました。
このとき、能登島に渡らずに、能登半島沿いに能登中島を経て七尾市街へ向かっていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
輪島駅09:45→10:43穴水駅12:04→12:33曽福→徒歩14km→大津口17:12→17:42七尾駅前18:30→19:09脇
▽2日目
脇07:05→08:10高岡駅前08:55→09:39富山駅前10:30→11:29猪谷/猪谷駅11:43→12:31神岡営業所13:10→14:25平湯温泉14:55→16:23松本バスターミナル17:00→17:34村井駅→徒歩7.6km→塩尻駅
曽福から14km先に大津口というバス停があり、北鉄能登バスの高浜線が運行しています。この路線は土休日も運休しませんので乗れそうですが、1日目に着くのは氷見市の脇が限界で、実際ルートの富山市に遠く及びません。歩く距離はどちらのルートも大差ないので、能登島に渡ったのはファインプレーでした。
ただ、1日目に脇までしか行けなくても、2日目に上記のように乗り継げば塩尻駅まで到達できますから、結果として塩尻で実際ルートに収束します。
神岡の選択
能登島のファインプレーが功を奏し、一行は1日目に富山で宿泊できました。2日目、松本方面を視野に入れて猪谷を経て神岡に到着したところ、今回の番組で最大の選択を迫られます。濃飛バス神岡営業所で、高山を経て中津川へ抜けるルートの情報が得られたからです。
神岡営業所では時間がないこともあって、先発の平湯温泉方面行きのバスに乗車。平湯温泉の案内所で改めて聞き込みをした結果、高山方面へのバスには乗車せず、これまでに2度通過したことのある安房峠道路を経由する松本方面を選択しました。
「中津川は未知が多すぎるけれど、松本・諏訪は割と知っている」と、羽田は自らの経験に賭けました。中津川へ向かえば全く別の展開が待っていたのですが、それについては後述します。
奈良井方面に向かったら
一行が松本バスターミナルに到着したのは14時半頃。比較的早い時間ですが、その先、塩尻市内のコミュニティバスは日曜運休です。そのため、松本以降は思うように進めず、塩尻での宿泊を余儀なくされました。翌朝、午前9時に開いた案内所で聞き込みをした後、岡谷方面に向かいます。
塩尻駅の案内所では、奈良井方面へのルートを確認しました。鳥居峠でつながらないと聞き諦めましたが、仮に奈良井から木曽谷へ向かっていたら、どのような乗り継ぎになったでしょうか。
〔木曽谷ルート〕
▽3日目
塩尻駅前10:05→11:15権兵衛橋→徒歩14.4km→木曽駒入口15:28→15:45木曽病院16:19→16:46バス回転場所(上松町)
▽4日目
バス回転場所08:57→09:57坂下診療所10:36→11:02中津川駅前
鳥居峠を越えた薮原駅にコミュニティバスはありますが、うまく乗り継げません。結局、14kmを歩いて木曽町のコミュニティバスに乗り、上松町のコミュニティバスに乗り継ぐことになったでしょう。
木曽町に入れば、上記の通り中津川までバス路線はつながるのですが、中津川着は翌日になります。時間的にゴールは到底不可能で、一行が木曽谷ルートを採らなかったのは正解といえます。
伊那谷に向かったら
塩尻から伊那谷方面に向かった場合も検討してみます。塩尻駅から小野駅まではコミュニティバスがあり、その先の乗り継ぎを試してみると、以下のようになります。
〔伊那谷ルート〕
▽3日目
塩尻駅前08:55→09:33小野駅→徒歩13.2km→ベルシャイン伊北店12:27→13:41赤木駅前→徒歩5.8km→昭和病院16:35→17:05飯島駅17:30→17:40チャオ(中川村片桐)
このように、伊那谷もバスがつながりにくく、駒ヶ根の先、飯島町に着いたあたりで日が暮れてしまいそうです。
結局のところ、塩尻駅から木曽谷、伊那谷のどちらを選択してもゴールは不可能に感じられます。したがって、一行が塩尻の時点で甲府方面に向かった選択は間違っていませんでした。
塩尻を早発したら
気になるのは、塩尻駅で案内所のオープンを待ったことです。岡谷方面に向かうなら、案内所のオープンを待たずに、もっと早く出発する方法もありました。07時40分にみどり湖方面に行くバスがありますので、それに乗ると、どうなるでしょうか。
〔甲府ルート〕
▽3日目
塩尻駅07:40→08:05みどり湖花公園→徒歩5.8km→今井10:02→10:46茅野駅11:15→11:46原村役場12:00→12:24富士見駅→徒歩11km→下教来石下14:42→15:22韮崎駅15:30→16:13甲府駅前17:10→18:28河口湖駅
▽4日目
河口湖駅09:05→10:40富士宮駅10:50→11:39蒲原病院12:40→13:01由比駅→徒歩5.2km→新浦安橋14:42→15:04清水駅前15:28→16:10新静岡16:40→18:08藤枝駅前・藤枝駅南口18:18→19:26相良局前19:32→19:57御前崎海洋センター
このように、塩尻駅を07時40分のバスに乗れば、3日目に河口湖駅に到達でき、時刻表上は4日目の20時頃にゴールできます。
放送を見る限り、そもそも一行は塩尻駅で07時40分発のみどり湖方面行きの存在に気付かずに、早朝にバスがないならと案内所待ちをしてしまったようです。07時40分発に気付いていたら、9時の案内所の営業開始を待たなかったかもしれないとも考えられ、もったいないことでした。
甲府ルートは実現できるか
とはいえ、上記の乗り継ぎは簡単ではありません。
まず、塩尻駅で十分な情報収集ができないなか、岡谷発茅野行きのバスを途中バス停の今井で捕まえられるか、という問題があります。
次に、富士見駅~下教来石下の最短11km(放送では12.1km)を2時間18分で乗り継がなければならないというハードルもあります。
さらに、4日目の藤枝駅での乗り継ぎは10分のみで、バスに遅延が生じたら間に合いません。
こうした問題点を考慮すれば、甲府ルートでのゴールは難しいように感じられます。
とはいえ、まったく不可能というわけでもありません。たとえば、今井乗り継ぎが見つけられずに岡谷駅まで行っても、急いで歩いていれば間に合うかもしれません。
塩尻駅07:40→08:05みどり湖花公園→徒歩8.4km→岡谷駅09:50
富士見~下教来石下は実際ルート12.1kmを2時間26分で乗り継いでいますので、最短ルートをたどれば、あと6分短くできる余地はありそうです。
静岡~藤枝のバスも、当然のことながら定刻運行することもあるでしょう。そう考えると、甲府ルートでもゴールの可能性はあったといえます。
健脚が求められますが、今回のマドンナは史上最年少の松井ですし、過去の田中・羽田の実績からすれば、不可能な乗り継ぎとまではいえません。ただ、全体として相当タイトなスケジュールであることは間違いなく、実現性は高くなかったでしょう。
韮崎のラストチャンス
実際ルートに戻ります。一行は3日目、韮崎駅に18時12分頃に到着したものの、その先の甲府行きのバスは終わっていました。この日は15km以上を歩いていたので、韮崎泊はやむを得ないですが、翌朝早起きして、隣の甲斐市の竜王まで歩いていたらどうなっていたでしょうか。
〔韮崎早発ルート〕
▽4日目
韮崎駅→徒歩8.2km→竜王駅07:10→07:30甲府駅前07:40→08:58河口湖駅09:05→10:40富士宮駅10:50→11:39蒲原病院12:40→13:01由比駅→徒歩5.2km→新浦安橋14:42→15:04清水駅前15:28→16:10新静岡16:40→18:08藤枝駅前・藤枝駅南口18:18→19:26相良局前19:32→19:57御前崎海洋センター
このように、前述の塩尻07時40分発の乗り継ぎに収束し、時刻表上はゴール可能です。
実際のところ、朝7時に韮崎駅発のバスがあるのに、5時に出発して8km歩くというのは非現実的でしょう。竜王まで行けば、より早いバス便があり、それに乗れるかがゴールの成否を分けると知っていればともかく、そんな情報を韮崎駅で入手することはできません。
富士宮で下車していたら
実際ルートに戻ります。最後に気になった点として、4日目、河口湖からのバスを富士宮で降りず、新富士まで乗ってしまった点も検証してみます。仮に富士宮駅で下車していたら、どのようになっていたでしょうか。
▽4日目
河口湖駅11:05→12:40富士宮駅13:10→13:59蒲原病院14:30→14:51由比駅→徒歩5.2km→新浦安橋16:37→17:00清水駅前17:25→18:06静岡駅前18:22→19:40藤枝駅前
このように、4日目に藤枝駅まで到達できます。ただし、御前崎まで到達するには、藤枝駅南口18時18分発に乗らなければなりません。そのため、河口湖発のバスを富士宮駅で降車したとしても、ゴールできないでしょう。それでも、日没後の薩埵峠を越えるという苦行は避けられました。
甲府ルートの成功条件
いろいろ検証してみましたが、甲府ルートでは、塩尻駅を始発に出るバスで岡谷方面に向かうか、韮崎駅~竜王駅を早朝(または前夜)歩く以外に、ゴールできる方法はなさそうです。
しかも、甲府ルートは、体力的な問題や、バスが少しでも遅延したら乗り継げないという不確定要素が絡み、万全を尽くしたとしてもゴールできたか疑問が残ります。とどのつまり、ルートそのものが机上論といえなくもありません。
となると、もっと良いルートがあったのではないかという話になります。振り返ると、気になるのは神岡での選択です。一行が捨てた中津川ルートを選んでいたら、どのような乗り継ぎが実現できていたのでしょうか。