日本航空(JAL)は1月22日、羽田-ホーチミン線を2014年3月30日からの夏ダイヤ新路線として国土交通省航空局へ申請したと発表しました。羽田空港の深夜早朝時間帯(23時から6時まで)を利用するものです。羽田からのホーチミン線は初めてです。
ボーイング767-300をの新仕様機を投入
使用機材はボーイング767-300ER型機の新仕様機「スカイスイート767」で、羽田を深夜1時25分に出発し、5時15分にホーチミンへ到着するダイヤです。ホーチミンで8時間も駐機し、13時55分にホーチミン発。羽田へは22時に到着します。深夜時間とはいえ、22時に羽田なら、まだ首都圏各地への交通の便は確保できます。
羽田空港の昼間時間帯(6時から23時まで)の発着枠は、2014年3月からANAに11枠、JALに5枠の傾斜配分されました。これにJALが是正を要求したのは新しい話ですが、結局却下され、敗退しています。羽田の昼間のベトナム枠もANAに渡っていたのですが、これに対して、JALは深夜早朝枠を使ってホーチミン線を「電撃申請」したものです。
画像:JAL767 JALホームページより
却下するには理由が必要
一般に、深夜便よりは昼間便のほうが利便性が高いのは明らかですが、羽田を深夜に出発して早朝に目的地に着くダイヤの使い勝手も悪くありません。しかも、最新鋭のスカイスイートですから、ある程度眠りやすい座席でしょう。羽田発のホーチミン線は他社にもなく、JALの電撃作戦はなかなかいいところを付いていると思われます。
JALの植木義晴社長は、路線発表の記者会見で、「認可いただけると確信している」と述べました。さらには、「航空法に照らしてみれば、認められないということはないと思う。もし認められないならば、根拠がどこにあるのかをお伺いしなければならない」と念を押しました。
航空法101条は、航空事業者からの申請について、国土交通大臣は安全性や計画を審査し、「基準に適合していると認めたときは、航空運送事業の許可をしなければならない」と定めています。発着枠に空きがあり、基準を満たしている申請であるならば、これを却下するには相当な理由が必要です。
ANAは反発
あわてたのは羽田昼間枠でハノイ線を開設するANA。日本経済新聞の記事によると、同社幹部は「全くの新規路線で当然制限されるべきだ」と反発しているそうです。その背景には、国土交通省が2013年8月10日に出した「日本航空への企業再生への対応について」という文書(いわゆる8.10ペーパー)があり、そこでJALの新規路線開設について「投資・路線計画について報告を求め、その状況を監視する」とあります。要するに、「企業再生のためにならない路線は不認可にできる」ということです。
ただ、JALはこの夏ダイヤで、伊丹発着を中心に地方路線を6路線復活させます。これらの採算性も疑問であり、もしホーチミン線を不認可にするなら、地方路線も不認可にしなければ道理にあいません。
となると、国土交通省と8.10ペーパーだけを根拠にホーチミン線だけ不認可にするという選択はとりづらいでしょう。このあたり、JALの計画がよく練られたものであることがうかがえます。
ある程度話はまとまっている?
発着枠のある時間の路線開設を却下せよとは、ANAも正面切ってはいいにくいでしょうし、そこまで言えばANAが悪人になってしまいます。それに、JALが全くの事前打ち合わせなしに国土交通省に申請したとも考えにくく、ある程度話はまとまっているとみるのが自然でしょう。
JALとANAの羽田をめぐる攻防。利用者の立場としては、昼にも夜にも便ができるのは良いことで、素直に競争を歓迎したいところです。