JR東日本が、2022年春に、新幹線や特急の指定席特急料金を繁忙期と閑散期の変動幅を拡大する方針を明らかにしました。どのように変わるのでしょうか。
JR東日本社長が方針示す
JR東日本の深沢祐二社長は、2021年9月7日の定例会見で、2022年春をメドに、新幹線や特急の指定席特急料金を繁忙期に引き上げ、閑散期に引き下げる方針を明らかにしました。
現在の新幹線の指定席特急料金は、通常期に比べ、夏休み期間や年末などの繁忙期は200円増し、6月や9月の平日などの閑散期は200円引きとなっています。2022年春以降に、この金額を変更することになります。具体的な価格は未定です。
繁忙期・閑散期料金はJR旅客6社で共通ですが、深沢社長は記者会見で、JR各社と協議していると述べました。そのため、JR6社が一斉に変更する方向で調整しているとみてよさそうです。
目的はピークシフト
深沢社長によると、指定席料金の変動幅拡大は増収策ではなく、ピークシフトにあるそうです。繁忙期の値段を高くして閑散期の価格を下げることで、おもに観光目的の利用をピークからオフピークに誘導することが目的です。それにより、準備する車両や人員を減らし、整備や運用のコスト削減につなげます。
現在、設定されている繁忙期は、ゴールデンウィーク、盆、正月です。この3シーズンは日本人の伝統的な行楽・帰省シーズンで、サラリーマンが休暇を気兼ねなく取れる数少ない時期です。学休期とも重なりますので、家族旅行が可能な貴重なタイミングともいえます。
閑散期は、2、6、9、11、12月の平日です。9月はともかくとして、それ以外の時期はサラリーマンがまとまった休暇を取りにくい時期で、学休期でもありません。
期間設定を変更?
そのため、繁忙期の値段を少々高くしたところで、観光客や帰省客の多くは、旅行時期を大きくずらすことなどできないでしょう。6月の値段を下げても、夏休みの家族旅行を前倒しすることはできませんし、11月の値段を下げても、年末の帰省時期を繰り上げることはできないのです。
ただ、12月28日と27日の値段を変えたり、1月3日と4日の値段を変えることで、ピークをなだらかにすることは可能かもしれません。となると、今回の特急料金改定は、期間設定の変更を伴うものになる可能性が高そうです。
実際、深沢社長は、記者会見で「繁忙期のピーク前後にシフトすると、お求めやすい価格になる料金制度を検討している」と述べています。通常期、繁忙期、閑散期というおおざっぱな区分から、「繁忙期A」「繁忙期B」などいう形で細分化することを示唆したといえます。
1980年以来初の変更
現在の繁忙期、閑散期料金が導入されたのは、1980年代前半。最初に閑散期が設定され、後に繁忙期が追加されました。はっきりとした年月がわからなかったのですが、手元の時刻表を見ると、1982年頃に閑散期が、1985年頃に繁忙期が設定されたようです。
変動額は当初から200円。当時は国鉄でしたし、公共交通機関での変動料金に馴染みの少ない時代だったために、200円という控えめな金額で、「閑散期は減額」という形でスタートしたのでしょう。いずれ値幅を広げる構想があったのではないか、と推察しますが、1987年の国鉄民営化を経て、約40年にわたり、国鉄時代の金額を据え置いてきました。
現在は、飛行機や高速バスでダイナミックプライシングが一般的になりましたので、JRの新幹線・特急で、繁閑1,000円程度の差が出ても、利用者の抵抗感は小さいでしょう。
一方で、指定席特急料金の金額に比して、変動額が高くなりすぎるのも問題です。JR東日本の50kmまでの指定席B特急料金が1,050円(通常期)であることを考えると、5割増として再繁忙期で500円増くらいが限度ではないか、という気もします。
距離別で金額を変えるなら、もう少し変動額を大きくすることもできますが、そこまで踏み込むかどうか。いずれにせよ、国鉄時代から変わらなかった料金が、コロナ禍により変革の時期を迎えたようです。(鎌倉淳)