JR東日本は、2021年春のダイヤ改正で、東海道線特急「湘南」の運転を開始し、「踊り子」とあわせて新たな着席サービスを導入します。指定席と自由席の区別をなくし、「空いていれば座っていい」というシステムです。利用者からみて、どのように変わるのか、まとめてみました。
「湘南」「踊り子」の2本立てに
2021年春のダイヤ改正で登場する新しい特急「湘南」は、新宿・東京~小田原間を走ります。これまでの「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」にかわり運転するもので、E257系を使用します。
東海道線特急には、新宿・東京~伊豆急下田・修善寺を結ぶ「踊り子」もあります。「踊り子」は、185系を長く使用してきましたが、2020年よりE257系の投入を開始。2021年春のダイヤ改正で185系の使用を終了し、E257系に統一します。つまり、東海道線特急は「湘南」と「踊り子」の2本立てとなり、どちらもE257系になるわけです。
E257系は、窓側席にコンセントを設置。荷物置き場も整備するなど、シンプルな快適性を追求した車両です。
そのほか、東海道線特急には、2020年に登場したばかりの「サフィール踊り子」もあります。これは最新型のE261系で運転され、全車グリーン車でプレミアムグリーン車も備える別格の豪華列車です。
新たな着席サービスとは
E257 系で運転する「湘南」「踊り子」の普通席には、新たな着席サービスと特急料金制度を導入します。
新たな着席サービスでは、普通車の「指定席」「自由席」の区別がなくなり、全ての座席が指定可能となります。つまり、「全車指定席」で、乗車する場合は事前に指定席券を購入するのが原則となります。
ただし、これまでの「指定席」と違い、座席の指定を受けなくても、空席があれば座ってもかまいません。
座席上方にランプが設置されていて、ランプが「緑」ならその座席は指定されていることを示します。「赤」なら指定されていません。「黄」は、まもなく指定されている区間になることを示しています。
座席の指定を受けている場合は、指定の座席のランプが「緑」になっていますので、そこに座ります。座席の指定を受けないで乗車する場合は、「座席未指定券」を購入し、「赤」のランプの座席に座ることになります。
なお、グリーン席はこれまで通りの指定席制度が継続します。
座席未指定券利用の注意点
「座席未指定券」利用の場合、注意点として、ランプが「赤」でも、途中でその色が変わることがある、ということです。
乗る前は空席だった座席が、乗っている途中に誰かに販売されてしまったら、ランプは「黄色」→「緑」と変わります。つまり、空席に座ったと思っても、乗っている間にその席が売られてしまい、途中駅で立つハメになってしまうこともあるのです。
これまでの自由席なら、一度確保した座席は降りるまで有効でしたが、「湘南」「踊り子」の新着席サービスではそうではありません。したがって、できる限り事前に指定席券を購入して乗車するのがいいでしょう。
座席指定の料金は不要
新たな着席サービスでは、座席を指定しても、指定しなくても料金は同額です。つまり、座席指定のための追加料金はかかりません。
列車と座席を指定する場合は「指定席特急券」を買い、指定しない場合は「座席未指定券」を買います。満席の場合は座席指定ができませんが、「座席未指定券」を買えば、任意の列車、車両に乗車できます。
車内で特急券を買った場合、座席指定ができず、「座席未指定券」の扱いになります。車内料金は事前料金より260円高く設定されていますので、車内で特急券を買った場合、旅客は「高い上に指定できない」という不利益を被ります。
したがって、空席があるのにあえて座席未指定券を購入する理由はありません。また、これまでのような「自由席」は、特急「湘南」「踊り子」には連結されません。
新たな着席サービスの特急料金
新たな着席サービスの特急料金は以下の通りです。これまでの価格と比較してみます。
営業キロ | 区間例 | 新料金 (事前料金) |
旧自由席料金 | 旧指定席料金 | 旧ライナー券 |
50kmまで | 東京~大船 | 760円 | 520円 | 1,050円 | 520円 |
100kmまで | 東京~小田原 | 1,020円 | 950円 | 1,480円 | 520円 |
150kmまで | 東京~伊東 | 1,580円 | 1,360円 | 1,890円 | — |
新たな料金体系では通常期・繁忙期・閑散期の区分はなくなり、年間を通じて同一の料金となります。
また、上表にはありませんが、「えきねっとチケットレスサービス」を使うと、一律で100円引きになります(2021年9月30日までのキャンペーン期間中は300円引き)。
旧料金の自由席やライナー券と比較するとおおむね値上げ、指定席からみれば値下げになります。
ライナー券と比較した場合、51km以上(東京~藤沢、小田原など)では、倍近くの金額になるので、負担感が大きそうです。実質値上げと言われても仕方ないでしょう。
ただ、普通列車のグリーン車と比較すると、見え方が異なります。51km以上の場合、普通列車の平日グリーン料金が1,000円ですので、それとのバランスを考えれば、「湘南」「踊り子」の1,020円は妥当な印象もあります。
チケットレスなら100円引きなので、普通列車グリーン車よりも安くなります。ネットで座席指定できるのは便利でしょう。
JR東日本では、常磐線、中央線に続き、東海道線でも新たな着席サービスを導入することになりました。おそらくこの流れは今後も続き、遠くない将来に房総特急でも導入されそうです。