日本とネパールが航空協議を行い、乗り入れ地点や便数の拡大などで合意しました。一方、ネパールは中国との間で、鉄道建設に関する共同文書に署名。ネパールの旅は、これから大きく変わっていきそうです。
航空協議がまとまる
日本とネパールの航空当局間協議は、2018年6月18日に都内で行われました。国土交通省によりますと、主に以下の3点について合意したということです。
(1)乗り入れ地点の拡大
日本側は、ネパール国内の全ての地点(現行はカトマンズのみ)。ネパール側は、羽田を除く日本国内の全ての地点(現行は関西空港のみ)。
(2) 便数の拡大
双方週14便まで (現行は双方週2便まで)
(3) コードシェアの枠組みの設定
自由なコードシェアの枠組みを新たに設定
今回の協議はネパール側の求めにより開催されました。したがって、上記の合意内容はネパール側の要望に応じたものとみられます。となると、ネパールの航空会社による、成田空港への乗り入れが、近く実現しそうです。ネパール側の報道によりますと、以遠権も認められているということです。
ネパール航空が就航計画
「Aviation Nepal」によりますと、ネパール航空は最近、2機のA330-243を導入。この到着後、ソウル、東京、ダンマーム、シドニーへの航空路線を新設する計画を持っているそうです。日本とネパールの航空協議がまとまったことから、ネパール航空による成田・カトマンズ線の就航計画が近いうちに正式発表されそうです。
日本とネパールは、1993年に航空協定を締結しています。ただ、このときの協定は上記の通り、日本側の発着地は関西空港に限られ、週2便が限度でした。
1994年にロイヤル・ネパール航空(現ネパール航空)が関西~カトマンズ線を上海経由で開設。B757型機で週2便を運航していましたが、2007年に運休しています。このため、ネパール航空の日本乗り入れが再開すれば、十数年ぶりとなります。
EU域内乗り入れ禁止問題
ネパールの航空会社は、2013年に国際民間航空機関(ICAO)により、「重大な安全上の懸念(SSC)」の指定を受けています。この指定は、2017年に解除されましたが、今でも安全性の懸念から、EU域内への乗り入れが禁止されています。
EUのルールは日本を規制しませんが、EU域内に乗り入れられない航空会社の乗り入れを、日本が許可するかという問題は残ります。そのため、成田路線開設は、EU域内乗り入れ解除が決まってからになるかもしれません。
ネパール人渡航者数が急増
日本政府観光局(JNTO)の資料をみると、ネパール人の来日渡航者数は急増しています。2012年に13,082人だったネパール人訪日数は、2016年度に33,564人に達しました。
観光客増もありますが、留学や就労目的のネパール人も多いようです。前出「Aviation Nepal」によれば、ネパール人の海外留学先として日本は第2位で、毎年1万人以上のネパールの学生が日本に進学しているそうです。ネパールが直行便の開設を計画するのも、こうした流動増が背景にあります。
チベット・ネパール鉄道も建設へ
一方、ネパールと中国は、2018年6月21日に、両国を結ぶ鉄道の建設を含む経済協力を推進する方針について合意し、共同文書に署名しました。ネパールの首都・カトマンズと、チベット自治区のキドンという町を結ぶ予定と報じられています。鉄道建設に関する合意内容の詳細は明らかにされていません。
ネパールと中国を結ぶ鉄道については、『中国が「チベット・ネパール鉄道」を計画』という記事に詳しく書きました。当時の中国側の報道によると、建設距離は540kmで、5年以内の完成を目指すとのこと。
日本からすれば、恐ろしく早い建設スピードですが、最近の中国の実績を考えれば、あながち夢物語とはいえません。完成したら、北京~カトマンズ間約5000kmに直通列車が登場することも考えられます。
日本人渡航者は増えるか
ヒマラヤ山脈を貫く「チベット・ネパール鉄道」に関しては賛否あるでしょうが、実現すれば、ネパールの旅がより魅力的になるのは確かでしょう。
最近、日本人のネパール渡航者数は減少傾向です。しかし、直行便が開設され、チベット・ネパール鉄道」が開業すれば、美しきヒマラヤの国へ足を運ぶ人が増えるかもしれません。(鎌倉淳)