ANAが航空券の取消手数料(キャンセル料)のルールを変更します。変更は2016年10月30日搭乗分からです。その概要をまとめてみましょう。
旅割系は手数料規定を緩和
ANAの取消手数料改定の目玉は、旅割系です。これまでは購入した瞬間からキャンセル料が発生する制度でしたが、2016年10月30日搭乗分から、旅割系チケット(プレミアム旅割28・旅割75・旅割55・旅割45・旅割28・旅割21・乗継旅割)については、搭乗日55日前までは取消手数料がかからなくなりました。
ただし、430円の払戻手数料は、今後もかかりますので、完全な「取消無料」ではありません。これは、他の運賃でも同じで、航空券をキャンセルして払い戻してもらうには「取消手数料+払戻手数料」がかかります。
搭乗54日前以降の取消手数料には、変更はありません。以下のようになります。
今後は、55日前を境に、ぐんと手数料が上がるのでご注意ください。
特割系は路線区分を廃止
特割系チケット(プレミアム特割・特割3・特割1・特定便乗継割引・乗継特割)に関しても、キャンセル料が変更されます。
これまでは取消手数料が路線別にA~Dの4区分に分けられ、500~2,000円とされてきましたが、2016年10月30日搭乗分からはこの路線区分が廃止され、一律で運賃の約5%となります。
羽田~新千歳を例に取ると、これまで路線区分Cで1,500円だったところ、たとえば25,000円で購入したチケットは、1,250円の取消手数料になります。
路線区分に関わらず一律5%というのは、わかりやすくなりました。上記の羽田~新千歳のように、料金が比較的安い区間では、特割系チケットのキャンセル料が値下げになることもありそうです。一方、料金が高めのローカル路線では値上げになりそうです。
特割系の注意点は、これまでは出発時刻後でも、出発時刻前の4倍の手数料で払い戻しに応じていましたが(路線区分Cなら6,000円)、今後、出発時刻後は100%手数料になります。乗り遅れた場合は、払い戻し不可です。
普通運賃系は乗り遅れに注意
普通運賃系(片道運賃・往復運賃・プレミアム運賃・ビジネスきっぷ・株主優待割引運賃など)に関しては、これまでは出発時刻前までは取消手数料無料、出発時刻後は路線区分に応じて2,000円~8,000円でした(路線区分Cなら6,000円)。
2016年10月30日以降は、出発時刻前までの取消手数料無料に変更はないものの、出発時刻以降は一律で運賃の20%の取消手数料になります。
羽田~新千歳間の片道普通運賃の場合、これまで出発時刻以降の取消手数料は6,000円でしたが、今後は7,500円となります。他路線も実質的に値上げになるケースが多そうで、これからは「普通運賃」であっても、乗り遅れには注意しましょう。
消費者訴訟が影響か
全体的に見ると、旅割系のキャンセル規定を緩めながら、特割系と普通運賃系の取消手数料を若干値上げしている印象です。
なぜこういうルール改正になったのかについて、ANAから説明はありません。ただ、旅割に関しては、佐賀県の弁護士から「キャンセル料が高すぎる」と消費者訴訟を起こされた件が思い浮かびます。
この裁判では、旅割75を購入した原告が、搭乗62日前にキャンセルしたところ、運賃の約63%に相当する8,190円の取消手数料がかかり、消費者契約法に反するとして手数料の返金を求めていました(詳細は「ANA旅割の『キャンセル料が高すぎ』と弁護士が提訴。早期割引運賃は消費者契約法訴訟に耐えられるか」参照)。
判決は2016年4月26日にくだされ、ANA勝訴となり返金は認められませんでした。報道によると、原告は控訴したようです。
結果としてANAは勝訴しましたが、今回、取消手数料規定を「55日」で区切った点をみると、この裁判が影響しているのかな、と思わなくもありません。(鎌倉淳)