東急は「S-TRAIN」にどこまで本気なのか? 西武直通の座席指定列車は東横線に週10便。ホームに指定席券売機まで設置して

西武鉄道と東京メトロ、東急電鉄、横浜高速鉄道が、新しい列車「S-TRAIN」の運行について発表しました。「S-TRAIN」は、4社を直通する有料座席指定列車で、2017年3月25日に運行を開始します。

車両は西武鉄道のものですが、東急電鉄としては初の有料座席指定列車となります。ここでは、東急側の視点で、「S-TRAIN」をみてみましょう。

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西武・メトロ・東急・横浜高速直通列車

「S-TRAIN」は、ロングシートとクロスシートの両方で使用可能な西武の新型車両40000系による有料座席指定列車です。通常はロングシートとして一般列車で運用されますが、平日の混雑時間帯と、土休日には「S-TRAIN」の愛称で座席指定列車として運行されます。

「S-TRAIN」は、平日は西武池袋線・東京メトロ有楽町線経由で所沢~豊洲間、土休日は西武秩父線・池袋線・東京メトロ副都心線・東急東横線・みなとみらい線経由で西武秩父~元町・中華街間を結びます。

東急線に座席指定列車が走るのは、おそらく初めてのことです。東京メトロ副都心線、みなとみらい線でも初めての試みです。

S-TRAIN

「S-TRAIN」運行時刻表

「S-TRAIN」の運行時刻表は以下の通りです。

※元町=元町・中華街、秩父=西武秩父

【土休日】
1号 元町07:01→渋谷07:37→池袋07:49→秩父09:15
3号 元町16:55→渋谷17:32→池袋17:44→飯能18:34止
5号 元町19:55→渋谷20:31→池袋20:43→所沢21:11止

2号 飯能09:18→池袋10:02→渋谷10:15→元町10:53
4号 秩父17:05→池袋18:42→渋谷18:56→元町19:38

停車駅: 元町・中華街、みなとみらい、横浜、自由が丘、渋谷、新宿三丁目、池袋、石神井公園、所沢、入間市、飯能、西武秩父

【平日】
101号 豊洲17:00→飯田橋17:18→所沢18:00
103号 豊洲20:00→飯田橋20:16→所沢20:58
105号 豊洲23:00→飯田橋23:16→所沢00:01

102号 所沢06:24→飯田橋07:06→豊洲07:24
104号 所沢15:18→飯田橋16:00→豊洲16:18
106号 所沢18:20→飯田橋19:04→豊洲19:22
108号 所沢21:20→飯田橋22:02→豊洲22:19

停車駅:豊洲、有楽町、飯田橋、石神井公園、保谷、所沢

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池袋は乗車不能

元町・中華街行きは、横浜以南が降車専用、元町・中華街発は、横浜以南が乗車専用です。豊洲行きは、西武線内が乗車専用、有楽町線内が降車専用です。豊洲発はその逆です。

副都心線内のみ、みなとみらい線内のみの利用はできません。また、興味深いことに、池袋は上下ともに降車専用駅とされ、乗車ができません。

S-TRAIN運行図
S-TRAIN停車駅

実験的な列車

停車駅、時刻表を見ると、この列車は実験的であるように感じられます。

詳細を書き始めるときりがないのですが、停車駅をかなり絞った点、停車駅に意外性がある点、送り込みと思われる時間帯の列車でも有料運転している点、池袋からの乗車ができない点などなど。

平日、土休日ともに、どの区間にどんな需要があるかを探りながら設定されたダイヤ、と感じられた方も多いのではないでしょうか。今回発表されたダイヤが、「S-TRAIN」の最終形とは、とても思えません。

ちなみに、愛称の「S-TRAIN」は通勤通学などのさまざまな「シーン(Scene)」、全席指定で快適な「座席(Seat)」、乗り換えのない「シームレス(Seamless)」な直通運転などの「S」から命名したそうです。どんなシーンでシームレスな座席需要があるのか、試行錯誤という段階なのでしょう。

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停車駅の割に遅い列車

注目なのが、初の座席指定列車となる東急東横線内での運転です。東急線内の時刻表を見ると、渋谷~元町・中華街間が36分~42分の所要時間です。東横線の日中の同区間所要時間が特急36分、急行が39分ですから、S-TRAINは停車駅の割に所要時間が長くかかります。

ダイヤを見ると、急行に並行運転させる形になっていて、「S-TRAIN」は徐行運転の区間が長そうです。列車ダイヤというのは優等列車を優先するのが常ですが、東急では、現状の運行ダイヤを優先し、「S-TRAIN」はスジの隙間に放り込んだ、という印象です。

S-TRAINクロスシート
S-TRAINロングシート

西武線直通料金は860円~

料金は東急線区間が350円、メトロ線区間が210円、西武線区間が300~500円となっていて、直通利用では合算です。渋谷~横浜の座席指定料金が350円ときくと、まあそんなものかな、とも思いますが、メトロと直通が560円、西武線直通は860円~1060円にもなります。

クロスシート車両とはいえ、リクライニングもしない通勤電車の料金とみれば、高い、と感じられる人もいるかもしれません。

ただ、土休日のメインターゲットは、西武線と東急線を直通する観光客でしょう。快適な行楽旅行のためなら、片道1000円程度の追加出費は許容範囲と考える人は多そうです。

存外、本気かも

東急電鉄では、「S-TRAIN」運転開始にあわせて、東横線各駅の自動券売機でも指定券が買えるようにするほか、東横線内の停車駅である渋谷・自由が丘・横浜の3駅のホーム上に指定席券売機を設置するそうです。

週末に1日2往復半、祝日がなければ週10便だけの列車に対し、ホーム上に券売機まで設置するというのには、少し驚きました。

本格的な人口減少時代に入り、鉄道各社は新たな収益源の確保に奔走しています。東急も例外ではなく、いずれ訪れる通勤客の減少に備え、自社車両での座席指定列車の運行を検討しているのは間違いないでしょう。ホーム上の券売機設置は、その証左にも見えます。

「S-TRAIN」は西武の車両ですが、乗り入れ先となる東急は、お付き合い程度の気分ではなさそうです。存外、本気なのかもしれません。(鎌倉淳)

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