「ローカル路線バスの旅8時間SP」正解ルートを検証する【5】知られざるウルトラルート

めっちゃアナログなことやってますね

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅8時間SP」の正解ルートを探り、検証する記事です。最後は、仙台からの別ルートや、最速ルート、最適解を検討してみます。

【最初から読む】
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅8時間SP」の正解ルートを検証する

ローカル路線バス乗り継ぎの旅8時間SP
Ⓒテレビ東京

【注記】当初掲載していた最速解の部分は、徒歩の歩行時間を少なく見積もりすぎていましたので、再検討のため削除しました。

広告

岩手ルート

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅8時間SP」のルート検証、ここで話を4日目に戻しましょう。今回の究極の選択は、4日目夜の仙台にありました。

仙台にとどまるか、新庄に進むか。リーダー髙木は、さんざん逡巡したうえで、新庄ルートを選択しましたが、ここで仙台にとどまっていたら、どうなっていたでしょうか。

その場合、「3区」の太川チームは、土曜日の朝に仙台駅からスタートします。仙台は新庄に比べて、メンバーが集まりやすく、案内所も8時すぎからオープンしているようなので、午前8時30分出発と仮定して乗り継ぎを見てみます。

5日目は土曜日なので、新庄行きの「48ライナー」は11時05分発までありません。それを待つよりはと、古川から盛岡を目指す「岩手ルート」を選択することになるでしょう。その場合、たとえば、このような乗り継ぎとなります。

▽5日目(岩手ルート)
仙台駅前08:55→09:41泉中央駅09:47→10:35吉岡上町→徒歩9.2km→三本木音無14:58→15:34古川駅15:50→16:56栗原中央病院

▽6日目(岩手ルート)
栗原中央病院07:06→08:03一関駅前11:35→12:16イオン前沢店15:20→15:59水沢駅前16:20→16:42江刺バスセンター→徒歩14.6km→21:00北上駅

▽7日目(岩手ルート)
北上駅06:55→08:03志和口→徒歩4.9km→日詰駅08:59→10:02盛岡駅前

5日目は土曜日です。大崎市のコミュニティバスが土休日運休のため、仙台から古川に抜けるだけで、10km近くを歩かなければなりません。

6日目は、一ノ関、水沢を経て江刺まで、なんとか繋がりますが、そこから北上までのバスが途絶え、15kmほどを歩かなければなりません。

7日目にも5kmほど歩いて、ようやく盛岡駅に10時すぎに到着できる形です。

広告

岩手ルートの盛岡以北

「岩手ルート」の続きを見てみると、盛岡駅からは、以下のような乗り継ぎになります。

▽7日目(岩手ルート)
盛岡駅前10:15→12:52十八日町→徒歩0.2km→やませ土風館13:01→13:50陸中大野/大野14:34→15:35八戸中心街ターミナル15:50→16:15八戸駅前17:12→18:43十和田市中央

▽8日目(岩手ルート)
十和田市中央06:43→07:48野辺地駅前08:27→09:38(青森)市役所前10:29→11:19後潟→徒歩0.1km→中沢地蔵堂前→徒歩2.6km→蓬田村役場前15:05→15:30蟹田駅前市場ウェル蟹前→蟹田駅16:20→17:14三厩駅17:17→17:49龍飛埼灯台

このように、青森市内に9時30分ごろに到着します。その後、ゆっくり進んでも、龍飛崎に18時前にゴールできます。JR津軽線の代行わんタク定時便が使えれば、もう少し早い時間にゴールできますが、使えないと仮定すると、18時ごろになりそうです。

つまり、岩手ルートなら8日目に余裕でゴールできる、と考えてしまいそうですが、実はこの乗り継ぎには、非常に難しい乗り継ぎが含まれています。

ポイントは7日目の久慈です。盛岡から乗車したバスを、終点の久慈駅まで乗ってしまうと乗り継げません。その手前の十八日町で降りて、やませ土風館という別のバス停で、陸中大野行きに乗らなければならないのです。

いわゆるショートカットですが、発見するのは難しそうですし、そもそもバスが10分遅れたら間に合いません。したがって、実現可能性が高いとはいえません。久慈でのショートカットが失敗したら、岩手ルートでのゴールはできなさそうです。つまり、岩手ルートでゴールするのは簡単ではありません。

今回は、番組冒頭で、「有料道路禁止」を明言していました。高速道路ではなく、「有料道路」の使用禁止なので、青森県内のみちのく有料道路が使えないことを意味します。それが、岩手ルートの乗り継ぎを、より厳しくしています。

みちのく有料道路が使えれば岩手ルートの幅も広がりそうですが、使えない以上、野辺地を経由するほかなく、ゴールへのハードルは高かったといえます。

広告

大船渡ルート

これまでの「ローカル路線バスの旅」シリーズでは、宮城県から岩手県にかけて、三陸沿いに進むルートもありました。三陸にはJRが運行する気仙沼線・大船渡線BRTが走っていて、週末もきちんと運行しています。

そうした知識があったとして、三陸BRTの起点となる前谷地を目指して進んだらどうなるでしょうか。

▽5日目(大船渡ルート)
仙台駅08:13→08:47岩切駅09:27→10:03利府駅前10:39→10:58二本椚→徒歩3.5km→文化観光交流館前11:55→12:35品井沼駅前→徒歩18.2km→前谷地駅19:15→21:35気仙沼駅

このように、5日目にうまく乗り継いで松島町内を通過し、品井沼駅から前谷地駅まで20km弱を歩けば、気仙沼に到達できます。前谷地からは、BRTと長距離バスを乗り継いで盛岡まで行けるという情報を、仙台駅で得られれば、不可能とまではいえない乗り継ぎです。

とはいえ、現実問題として、仙台駅で情報収集をしたうえで、朝8時13分に出発するバスを利用して、このルートをたどるのは難しいでしょう。次の時間帯の乗り継ぎだと、前谷地19時15分発には間に合わず、近隣に宿泊施設がないため路頭に迷います。さらに、日曜日は松島町内のコミュニティバスが運休します。

つまり、仙台駅08時13分に乗らなければ実現できない乗り継ぎのようです。実現は不可能ではないにしろ、机上論にとどまりそうです。

広告

大船渡ルートの盛岡以降

大船渡ルートを実現できた場合、6日目は、大船渡から盛岡への直行バスを利用して、夕方に盛岡駅前に達します。さらに、久慈駅までも足を伸ばせます。そのまま乗り継ぎをたどると、つぎのようになります。

▽6日目(大船渡ルート)
気仙沼駅06:21→07:32大船渡駅13:25→16:38盛岡駅前18:00→20:45久慈駅前

▽7日目(大船渡ルート)
久慈駅前07:55→08:45陸中大野/大野09:04→10:06八戸中心街ターミナル10:12→11:43十和田中央11:35→13:03馬門温泉口→徒歩3.2km→狩場沢13:55→14:41浅虫温泉/浅虫温泉駅15:50→16:39青森駅前

▽8日目(大船渡ルート)
青森駅前07:00→07:50後潟→徒歩0.1km→中沢地蔵堂前08:30→09:22外ヶ浜中央病院11:30→12:20三厩支所前13:06→13:27龍飛漁港

このように、8日目の午後早い時間に龍飛漁港にゴールできます。ただし、繰り返しますが、ほぼ机上論で実現は難しいでしょう。

※速報動画で、大船渡ルートでも久慈でのショートカットが必要になる旨の内容がありましたが、再確認したところ、勘違いをしておりました。訂正してお詫びいたします。

広告

ゴールからの逆算

仙台を5日目朝に出発し、北上するルートを探ってみましたが、誰もが納得するような最適解は見つかりませんでした。

それどころか、難易度の高いショートカットを実現しないと、ゴールは難しそうです。となると、4日目に仙台に滞在するのは正解とは言いづらく、新庄に進むのが正しい選択だったことになるでしょう。

では、仮に太川チームが北に向かい、「正解」が新庄ルートと思い直し仙台に引き返して、新庄行きの「48ライナー」に乗り直した場合、何時の便ならゴール可能なのでしょうか。

これは、ゴールからの逆算となります。驚くことに、次のような乗り継ぎでゴールが可能です。

▽6日目
仙台駅11:05→13:25新庄駅16:10→18:13酒田駅18:40→20:13本荘営業所

▽7日目
本荘営業所07:00→08:17秋田駅西口

仙台駅を6日目の11時05分発の新庄行き「48ライナー」に乗り、酒田ルートを採れば、その日のうちに本荘に到達できます。翌朝、始発のバスで秋田に向かうと、秋田駅西口着が08時17分です。秋田駅09時00分発の五城目行きに間に合い、実際ルートに追いつきます。

この乗り継ぎでカギとなるのは、酒田~本荘間で利用している高速バス「仙台・本荘線」の下道区間です。現在は日曜日しか運行していませんが、実際ルートで6日目は日曜日なので利用できます。これを使えば、「地獄の酒田ルート」が「天国ルート」に早変わりし、仙台からたった3回の乗り継ぎで、秋田まで到達できるのです。

ウルトラルート

この乗り継ぎをさらに逆算すると、6日目朝に蔵王町役場にいればゴールできることがわかります。成田から無理せず乗り継いでも、4日目夜には蔵王町役場に到達できますので、今回のお題には、丸一日の余裕があるわけです。

そう考えると、今回のお題では、前半戦で大きなミスをして滞ったとしても、挽回の余地があったことになります。仙台から北へ向かい、折り返して仙台に連泊したとしても、回復は可能です。逆転を演出する、ウルトラルートが隠されていたわけです。

▽6日目
蔵王町役場前06:35→06:55村田町役場前/中学校前07:46→08:02川崎役場前/かわさきまち08:40→10:00仙台駅11:05→13:25新庄駅16:10→18:13酒田駅18:40→20:13本荘営業所

▽7日目
本荘営業所07:00→08:17秋田駅西口09:25→10:16天王グリーンランド11:09→11:40天王橋11:54→徒歩1.2km→船越駅前12:55→13:39五明光13:50→14:25八竜ふれあいセンター

なお、秋田駅で9時発の五城目行きバスに乗れば実際ルートに追いつきますが、上記のように09時25分発のバスに乗って船越駅を経由すれば、ほとんど歩かずに八竜ふれあいセンターで実際ルートに収斂します。蔵王町から能代まで、ほとんど歩きません。こちらが真の「ウルトラルート」といえるでしょう。

広告

最適解は?

このように、今回のお題は、最速なら7日間で乗り継げるルートでした。しかし、ウルトラルートは曜日限定で、順当に乗り継いだ場合は使えません。

ふつうに乗り継げば、週末ダイヤが邪魔をして、8日間ギリギリになる設計でした。曜日配置も含めて、じつによく練られたお題といえます。

最適解については、選ぶのが難しいです。「7泊8日」のお題としてみれば、新庄駅を始発で出られるはずですので、「早朝酒田ルート」が最適解でしょう。

しかし、現実には、ロケは2回に分けて行われていて、「3泊4日×2」のお題になっています。そう考えると、新庄駅を10時に出発するのがデフォルトですので、早朝酒田ルートは最適解になり得ません。

となると、実際に太川が選択した、湯沢ルートしか選択しえないことになります。つまり、太川・髙木チームは、現実に選びうる最適解の正解ルートをたどってゴールした、ということになります。

広告

選択肢が限られて

見方を変えると、今回のお題は、長距離ながらも選択肢は限られました。とくに週末は選択するほどのバス路線がなかったともいえます。近年のバス減便の影響にも感じられますが、制作側が意図的に設定した側面もありそうです。

わかりやすく書くと、曜日と時間帯を調整することにより、制作側が上手に一行を誘導した、とみえなくもありません。

20kmも歩く湯沢ルートを「最適解」や「正解」と評するのには躊躇もあります。ただ、今回は、年末特番という性質もあって、盛り上がるようにメリハリを付ける必要があり、こういう乗り継ぎになるよう設計されていたようにも思えます。

また、湯沢ルートの「大曲~秋田」は、ローカル路線バスの旅シリーズで、おそらく初出です。既出の乗り継ぎルートが多いなか、新ルートを組み込みたいという、制作側の意図も感じられました。深読みしすぎかもしれませんが。

広告

振り返ると

全体を振り返ると、実際ルートで順当に進んだ場合、1日目が水戸、2日目が黒磯、3日目が郡山、4日目が新庄に宿泊する設計でした。

新庄から北上する場合、5日目は湯沢、6日目は秋田、7日目は能代に泊まる設計となります。しかし、7日目が能代だと、ゴールできません。つまり、どこかで無理をしないとゴールができないわけです。

それを果たしたのが髙木チームでした。7日目、能代に泊まらず、鷹ノ巣まで無理に進んだことで、ゴールへの道が拓けました。

もうひとつ重要な点として、4日目に仙台に泊まらなかったことも、大きな勝因でしょう。

4日目夜を仙台泊とすると、5日目の「48ライナー」の始発は休日ダイヤで11時過ぎとなっていて、新庄に到着するのが午後になってしまいます。

仙台で半日近く停滞することになりますが、それを嫌うと新庄ルートは選択しづらくなるでしょう。すると、仙台から北上することになってしまい、岩手ルートの厳しい乗り継ぎを決めきらなければ、ゴールできないという試練が待っています。

つまり、仙台で新庄行きに乗ったのは、超ファインプレーでした。全体を通じて、髙木チームはよく歩き、判断も的確で、奮闘が光ったといえます。

広告

力をあわせ

一方、太川チームも、1日目と2日目を無難にこなし、5日目は湯沢ルートの20kmを歩き切りました。「秋田空港ルート」では、神田がうまくアシストし、6日目に秋田駅に着いたことで、ゴールへのたすきをつなぎました。

新庄~秋田間は、今回最大の難路でした。先述したように、大曲~秋田間は、バス旅シリーズでおそらく初出の区間です。未知の道筋を切り開いたのは、ミスターバス旅の面目躍如といえそうです。

まとめると、今回は、両チームが力をあわせて、きちんと正解ルートをたどったと表現できるでしょう。

番組は8時間の長尺でしたが、飽きずに最後まで楽しめました。演者のかけあいも楽しく、バス旅シリーズの新境地を切り開いた作品といえそうです。(鎌倉淳)

広告