LCCの利用者の平均年齢は43歳で、平均年収は322万円。こんな調査がまとまりました。国土交通省の関連団体「国土政策研究所」がまとめた「LCC の参入効果分析に関する調査研究」の報告書によるものです。
報告書の内容は、LCCにおける運賃低下の実態など多岐にわたりますが、ここでは利用者像についてのみ、ご紹介しましょう。
LCCは10代、20代の利用者が多い
利用者像の調査は、旅客アンケートに基づいたものです。過去1年間(2012年10月以降)にLCC利用経験のある旅行者、または国内LCC利用可能区間で FSC(Full Service Carrier)、高速バス、鉄道での旅行経験がある旅行者を調査対象としました。調査時期は2013年11月16日~17日で、サンプル数は各交通機関ごとに300です。LCCの定義はPeach Aviation、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンの3社、FSCはそれ以外の主要航空会社です。
まず利用者の平均年齢ですが、LCCが43.1歳、FSCが48.7歳、高速バスが38.8歳、鉄道が49.0歳でした。最多利用年齢層は、LCCが15~19歳(15%)、FSCが70歳以上(17%)、高速バスが15歳~19歳(18%)、鉄道が70歳以上(18%)でした。
年齢分布
全体に、LCCは15歳~29歳の利用者が多く、40代と70歳以上に利用者がやや少ない層があるほかは、まんべんなく利用者がいます。FSCも年齢による偏りは大きくありませんが、20代前半の利用者が少なく、60歳以上が多くなっています。高速バスは20代までの利用者が圧倒的に多く、30代以降の利用者数が全体的に少ないです。鉄道は50代以降の利用者が、他の交通機関より多めです。
無職は大手航空会社を利用する?
職業についても見てみましょう。調査対象全体で「無職・その他」(以下無職)が36%、会社員30%、学生16%となっていて、そもそも無職が対象者として多いアンケートであることにご留意ください。LCCでは無職が32%、会社員が31%、学生18%と続きます。FSCでは、無職43%、会社員30%、学生10%。高速バスは会社員32%、無職27%、学生が25%、鉄道は無職が44%、会社員26%、学生12%です。
職業分布
わかりやすく書くと、「無職ではFSC利用者が多く、高速バス利用者が少ない」「会社員はまんべんなく利用しているが、鉄道利用者がやや少ない」「学生は高速バス利用者が多く、FSCと鉄道の利用者が少ない」となります。無職はリタイア組が多いとみられますので、そういう方はLCCよりも大手航空会社のシニア割のほうが便利です。したがって、FSCの利用者が多いのかも知れません。会社員の鉄道利用率が低いのは意外ですが、マイラーが多いのでしょうか。また、会社員だからといって職務旅行ばかりしているわけではない点は留意する必要がありそうです。
年収は関係ない?
次に年収です。平均年収はLCC利用者が322万円、FSCが340万円、高速バスが303万円、鉄道が359万円です。全体平均は304万円です。全体平均が304万円で最低の高速バスが303万円、というあたりに、仮定値の取り方に難があると思われ、それぞれの数字の信頼性は今ひとつですが、全体的な傾向はわかります。「高速バス、LCC、FSC、鉄道」の順に利用者層が豊かになっていることを示します。鉄道利用者がもっとも年収が高い、というのはやや意外ですが、鉄道にはシニア層の割引が少ないためかもしれません。
年収分布
ただ、年収による交通機関利用率の差はそれほど大きくはありません。お金を持っていようが持っていまいが、多くの人は自分の旅に適した合理的な交通機関を利用しているということなのでしょう。また、大手航空会社もツアーや割引運賃を利用すればLCC並みに安い場合もあるので、所得と選択交通機関の間に明確な関連性を見いだすのは難しそうです。
サンプルの取り方をもう少し工夫してほしいと思わなくもない調査ですが、一つの傾向は示しているでしょう。