ジェットスター・ジャパンが2015年6月期決算を発表しました。これで、国内LCC4社の2015年に発表される決算がすべて出揃いました。決算期にバラツキはあるものの、これらを比べてみましょう。
LCC4社の最新決算
まずは、2015年に発表されたLCC各社の決算を並べてみましょう。
■ジェットスタージャパン
第4期決算公告(2015年6月期) 2015.09.28官報
資本金170億円 資本剰余金170億円 利益剰余金-301.56億円
売上高419億円 営業損失79.45億円 経常損失75.29億円 当期純損失75.71億円
※参考:昨年度決算
第3期決算公告(2014年6月期) 2014.10.10官報
資本金115億円 資本剰余金115億円 利益剰余金-225.85億円
売上高290.91億円 営業損失107.29億円 経常損失112.85億円 当期純損失111.01億円
■ピーチ・アビエーション
第5期決算公告(2015年3月期) 2015.07.06官報
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金-7.04億円
売上高371億円 営業利益28.65億円 経常利益15.96億円 当期純利益10.68億円
※参考:昨年度決算
第4期決算公告(2014年3月期) 2014.07.11官報
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金-17.73億円
売上高305.95億円 営業利益20.07億円 経常利益17.10億円 当期純利益10.46億円
■バニラ・エア
第4期決算公告(2015年3月期) 2015.06.29官報
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-137.47億円
売上高123億円 営業損失37.56億円 経常損失40.20億円 当期純損失40.46億円
※参考:昨年度決算
第3期決算公告(2014年3月期) 2014.07.01官報
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-97.01億円
売上高65.91億円 営業損失56.90億円 経常損失59.88億円 当期純損失60.05億円
■春秋航空日本
第3期決算公告(2014年12月期) 2015.04.06官報
資本金69億円 資本剰余金9億円 利益剰余金 -66.07億円
売上高8.36億円 営業損失48.89億円 経常損失49.04億円 当期純損失49.18億円
ジェットスターは収支改善したが
2015年9月28日に発表されたジェットスター・ジャパンの決算は、売上高が419億円と、前年度に比べ44%も増加し、営業赤字は79億円で26%も減少しました。売上高ではピーチに50億円近い差を付けて、国内LCC首位の座を確保しています。
この決算の評価は難しいです。売上が伸びて赤字が減っているので、収支は改善しているといえます。とはいえ最終赤字は75億円にものぼり巨額です。累積赤字にいたっては、ついに300億円台に乗りました。
この穴埋めのため、ジェットスター・ジャパンは豪カンタス航空と日本航空から支援を仰いでおり、各社報道によりますと、2014年11月に70億円、2015年6月末に40億円、2015年8月末に70億円の増資を受けたそうです。このカンフル剤は続いているうちに、黒字転換を達成したいところでしょう。
ピーチは堅調
ピーチ・アビエーションの決算は、2015年7月6日に発表されました。それによりますと、2015年3月期の売上高は371億円でジェットスターには届かないものの、利益面では絶好調。10億円の最終利益を計上しています。2年連続の黒字決算で、累積赤字も7億円と少なくなってきました。
ピーチは2016年3月期決算で累積赤字の一掃を目指していますが、それも視野に入ってきたといえます。国内LCC4社で経営的にはもっとも健全な会社になったといえ、堅調といえるでしょう。
バニラは今期黒字目指す
バニラエアは、2015年3月期決算を6月29日に発表しています。売上高は123億円で、ピーチの3分の1程度の規模にまで成長したものの、利益を出すには至らず、最終赤字は40億円と少なくありません。
ただし、バニラエアは2016年3月期決算で黒字になる見通しを示しており、5億円程度の営業黒字に転換するとのことです。実現すれば、ジェットスター・ジャパンより先に、成田拠点LCCでは初の黒字計上となります。
春秋日本は苦戦
国内LCCのうち、最小規模の春秋航空日本は苦戦中です。決算は2015年4月6日に発表した2014年12月期が最新ですが、それによりますと、売上高8億円、最終損失が49億円です。この時点ではビジネスになっていません。
この決算は、春秋航空日本が運航開始をしてまもない時期でしたので、やむをえない側面もあります。ただ、春秋航空日本は今期も十分な運航本数を確保していませんので、今期決算でも大きな改善は見込めないとみられます。ジェットスター・ジャパン同様、親会社がどこまで支援するか、ということになってくるでしょう。
優勝劣敗ははっきりしたか?
単純に区分けをすると、国内LCCは、「黒字組」のピーチ、バニラと「赤字組」のジェットスター、春秋日本に分かれつつあります。
ただ、優勝劣敗がはっきりしたかというと、そうとも限りません。現在の日本のLCCは、各社いずれも国内線では稼げず、国際線で収益を上げています。ジェットスターの赤字の理由の一つは国際線に出遅れていたことですが、最近はアジア路線に本格進出を始めています。これが成功すれば、ジェットスターの収支が大きく好転する可能性はあるでしょう。
春秋航空日本も、親会社の春秋航空(中国)路線との接続が充実すれば、搭乗率は劇的に上がるかもしれません。そして今後、中部拠点の新生エアアジア・ジャパンも登場します。
どのLCCが今後生き残るのか、現時点で判断するのは早計です。さいわい、どのLCCも経営は改善の方向に向かっているようにみえます。利用者としては、全ての会社に頑張っていただき、健全な運賃競争を期待したいところです。