ANAホールディングスが2014年2月14日に「2014-16年度 ANAグループ中期経営戦略」を発表しました。
その冒頭の「中期経営戦略アウトライン」のなかで、「競合環境」として真っ先に挙げているのが「本邦他航空会社事業拡大(国内線A330導入/国際線A380導入)」です。どちらもスカイマークの事業拡大で、A330はグリーンシートという高品質シートを使った低価格運賃、A380はビジネスとプレミアムエコノミークラスの低価格運賃がポイントです。一方で、JALを強く意識した記述は見あたらず、JALの新シートについても触れられていません。ANAはJALよりスカイマークの展開に神経をとがらせているのかもしれません。
LCCと新幹線を意識
「競合環境」には、他に「国内外LCC参入・事業拡張」と「新幹線延伸(2015/3北陸、2016/3北海道)」が挙げられています。春秋航空やエアアジアの国内線再就航を意識しているとみられます。新幹線で影響を受けるのは富山、小松、函館の3空港で、これに対しての準備も怠りないようです。
中期経営戦略のなかで力点が置かれているのが国際線の展開です。羽田空港と成田空港を使った「首都圏デュアルハブモデル」を提唱し、2015年度に成田拠点の新規路線就航を明らかにしています。
一方で、国内線に関する記述は少なく、「あらゆる視点で低コストオペレーションを追求」「自助努力を超えるコスト変動に対応できる運賃政策を推進」「訪日外国人の国内線利用を促進」「羽田の国際線ネットワークとのシナジーを追求」といった具体性に乏しい文言が並びます。「国内線はとにかく安く運ぶ方法を考える」というのが基本方針のようです。
地方空港の記述はなし
地方空港に関する記述は一切なく、「小型機についてはANA WINGSへの移管スピードを加速する」とあることから、ANA本体の運航は大型機による幹線に絞っていくようです。
上記「アウトライン」で「国内線需要の成熟化」と明記していることからも、ANAは地方路線の新たな展開は考えていないのかもしれません。これまで、航空会社は地方路線にも力を入れないと羽田枠をもらえないことから、地方路線への展開もPRしていたものですが、その羽田枠の新規分配は当面ありません。そうした情勢が影響しているのかもしれません。
ANAはもともとは国内線主体の航空会社でしたが、今回の中期経営戦略で国際線について「2016年度には、ANAとして初めて国内線生産量(座キロベース)と同等の水準を計画」と記述されました。需要の頭打ちが見えてきた国内線主体から、国際線主体へ舵を切っているようです。