ゆいレール延伸
ゆいレール(沖縄都市モノレール)は、那覇空港~首里間12.9kmを結ぶモノレール路線です。2019年10月1日に、首里から、てだこ浦西までの延伸区間が開業しました。そのほか、4方面5ルートの延伸構想があります。
ゆいレール延伸の概要
ゆいレールの浦西延伸は、首里駅から、石嶺駅などを経て、てだこ浦西駅へ至る約4.1kmです。首里から沖縄国際センター方面へ進み、浦添前田で浦添西原線に入り、沖縄自動車道との結節点に、てだこ浦西駅を設けました。てだこ浦西駅の手前は地下構造です。
新設駅は4駅で、石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅です。てだこ浦西駅には、パーク&モノライドが併設され、駅周辺までクルマで来てモノレールを利用することができます。また、高速バスターミナルも併設しますので、沖縄県中北部と那覇市内のアクセスが便利になります。
那覇空港駅~てだこ浦西駅間の所要時間は38分です。事業費は525億円で、2030年の需要予測は約5.1万人とされています。2019年10月1日に開業しました。
4方面5ルート延伸構想
そのほか、ゆいレールには、4方面5ルートの延伸構想があります。
- A 豊見城~糸満ルート(奥武山公園~糸満)8.9km 9駅
- C 首里駅接続ルート(県庁前~南風原町経由~首里)6.5km 7駅
- C 南風原~与那原ルート(県庁前~マリンタウン地区)9.9km 9駅
- D 西原ルート(てだこ浦西~マリンタウン地区)5.5km 4駅
- E 中城ルート(てだこ浦西~琉球大学前)3.6km 3駅
「B」は浦添方面、「F」は宜野湾方面ですが、いずれも沖縄鉄軌道の建設計画があるため、ゆいレールの延伸構想からは外れています。
上記4方面5ルートについては、2019年6月19日に延伸した場合の試算が発表されました。
ルート | 概算事業費 (億円) |
累積資金収支 黒字転換年 |
営業収益 (億円/年) |
費用便益比 |
豊見城~糸満 | 980 | 発散 | -5.3 | 0.17 |
首里駅接続 | 780 | 発散 | -4.7 | 0.18 |
南風原~与那原 | 1110 | 発散 | -7.3 | 0.08 |
西原 | 580 | 発散 | -4.9 | 0.09 |
中城 | 400 | 発散 | -3.3 | 0.23 |
沖縄鉄軌道が国道58号経由で建設された場合の試算数字を掲載しています。
上表の通り、全てのルートにおいて事業性、採算性に難があります。そのため、4方面5ルートの延伸構想については、実現の見通しは立っていません。
ゆいレール延伸の沿革
沖縄にモノレールを作る計画は、1972年の本土復帰以来、議論されてきました。1975年に、国・沖縄県・那覇市で構成される「都市モノレール調査協議会」を設置。1981年の「沖縄県総合交通体系基本計画」では、「モノレ-ルの計画は那覇空港~西原入口間(沖縄自動車道との連結)にわたり整備を図る」と位置づけられています。
このうち、那覇空港~首里駅を第1期とし、首里駅~西原入口を第2期としています。1982年9月には、運営主体となる第三セクター「沖縄都市モノレール株式会社」が設立されました。
着工へ大きく動き出したのは、1994年以降です。沖縄県・那覇市と既存交通機関のバス会社との間で基本協定や覚書が締結され、1996年3月に沖縄都市モノレールが那覇空港~首里間で軌道事業の特許を取得。2003年8月に同区間が開業しています。「ゆいレール」という愛称で、営業運転を開始しました。
第2期となる首里駅~西原入口については、開業後すぐに議論になり、2006年度に「沖縄都市モノレール延長検討委員会」を設置。延長ルートについて検討が行われ、2008年3月21日に「浦添ルート案」の推奨が決まりました。
その後、西原入口は「浦西」という仮称になり、2011年8月30日に首里~浦西(仮称)間の軌道事業の特許申請が行われ、2012年1月25日に認可されています。2013年に延伸工事着手、2014年12月26日には、延伸区間の駅名が、石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅に決定しました。
ゆいレールの首里~てだこ浦西間の開業予定は2019年春とされていましたが、その後工事に遅れが出て、2019年の「早くて夏頃」に修正され、2019年5月24日に「10月1日開業」と正式発表され、予定通り開業しました。。
一方、沖縄県では、2018年5月に「沖縄鉄軌道構想」について、概略計画をとりまとめまとめています。これは那覇~名護間に鉄道または軌道を建設する構想で、那覇市、浦添市、宜野湾市、北谷町、沖縄市、うるま市、恩納村、名護市を経由するルートが決定しています。
沖縄県では、この鉄軌道ルートを骨格とした、利便性の高い公共交通ネットワークの形成を目指していて、フィーダー交通ネットワークのあり方についても検討を行っています。
その一環として、沖縄都市モノレール(ゆいレール)延伸が、鉄軌道計画を含めた公共交通ネットワーク全体にどういう効果や影響を与えるかなどを調査しました。そのなかで、上記の4方面5ルートについての基本的な調査が行われ、その結果が2019年6月19日に公表されました。
ゆいレール延伸のデータ
営業事業者 | 沖縄都市モノレール |
---|---|
整備事業者 | 沖縄都市モノレール |
路線名 | 沖縄都市モノレール線(ゆいレール) |
区間・駅 | 首里~てだこ浦西 |
距離 | 4.1km |
種類 | 跨座式モノレール |
軌間 | -- |
電化方式 | 直流1,500V |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 2019年10月1日(開業済み) |
備考 | -- |
ゆいレール延伸の今後の見通し
ゆいレールの首里~てだこ浦西間の延伸工事は、多少の遅れが出たものの、順調に開業しました。
ゆいレールの当初構想は、沖縄自動車道への接続ですので、てだこ浦西までの開業で一段落となります。ただ、上述したように、てだこ浦西から先、沖縄市方面への延伸構想も存在します。
実際、てだこ浦西駅は分岐器が延伸に対応した構造になっており、沖縄自動車道と交差して琉球大学方面へ延ばすことができるよう設計されています。ルート選定でも、浦添案に決定した理由の一つとして、将来の宜野湾方向への発展性が挙げられていますので、さらなる延伸の可能性は十分残されているといえます。てだこ浦西から琉球大学への延伸構想は「4方面5ルート」の「中城ルート」に該当します。
一方、沖縄県では、沖縄鉄軌道の建設構想もあります。ゆいレールは、そのフィーダー交通としても位置づけられています。ゆいレールの延伸は、沖縄鉄軌道計画の進捗次第、という側面もあります。
4方面5ルートのなかでは、中城ルートで琉球大学までの延伸が、もっとも事業性が高いという結果になっています。そのため、延伸する場合、とりあえずは琉球大学エリアまでが当面の検討課題となりそうです。