東京メトロ南北線延伸
東京メトロ南北線の白金高輪駅~品川駅を結ぶ地下鉄構想です。2016年国土交通省交通政策審議会答申198号に「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として盛り込まれました。
当初は、都心部・品川地下鉄構想とも呼ばれていました。2030年代半ばの開業予定です。
東京メトロ南北線延伸の概要
東京メトロ南北線延伸は、白金高輪駅と品川駅を結ぶ地下鉄計画です。
白金高輪駅には東京メトロ南北線と都営三田線が乗り入れており、2面4線のホームがあります。このうち外側2線が目黒方面に延びており、内側の2線が白金高輪止まりになっています。この内側2線を品川方面に延ばします。内側2線は南北線が使用していることもあり、品川延伸の際も南北線優先のダイヤが組みやすくなります。
2023年に公表された環境影響評価書によりますと、延伸線は白金高輪駅内側からの留置線を延ばし、目黒通りから白金台駅付近で東に向きを変え、都営浅草線高輪台駅をかすめた後、第一京浜(国道15号)に入り込む形で南方向に転じます。
途中駅は設けません。白金台駅や高輪台駅をかすめる部分も通りますが、既存駅と深さが倍くらい違うこともあり、駅を設けないという判断になったようです。
品川駅は南北方向にホームを設置し、JR線や京急線と平行する形となります。ホームは島式1面2線です。
計画区間は約2.8km。都市計画変更区間は2.5km。その差0.3kmは、白金高輪駅の既存の留置線部分に相当します。0.3kmは留置線を活用し、実際に建設するのが2.5kmということです。
開業後の運転計画は、毎時最大上下各12本。つまり5分間隔の運転です。終日で上下各195本を運転します。新線区間の所要時間は4分程度です。
1067mm軌間の複線で、軌条は60kg/mです。車両は20m車8両編成に対応し、工事予定期間は約10年を見込みます。 したがって、工事が順調にいったとして、南北線品川延伸の開業は2030年代半ばになりそうです。
整備主体は東京メトロで、第1種鉄道事業者となります。上下分離の制度は用いませんでした。
東京メトロ南北線延伸想の沿革
東京メトロ南北線延伸は、東京都が2015年7月10日に発表した「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」で、「都心部・品川地下鉄構想」(品川地下鉄)として、はじめて明記されました。
それを受けて、2016年4月20日の交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」と位置づけられました。
2019年3月には「東京圏における国際競争力強化に資する 鉄道ネットワークに関する調査」がまとめられ、「関係者間で事業化に向けたより具体的な検討が進められるべきである」と明記されました。
2019年3月に国土交通省の交通政策審議会が「東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査」の調査結果を発表。そのなかで、品川地下鉄の概要が初めて示されました。
それによりますと、品川地下鉄の路線延長は2.5km、途中駅は設置されません。事業費は800億円(建設費763億円、車両費37億円)、建設期間は10年間を要すると見積もられました。
新線区間の所要時間約4分で、運行頻度は全時間帯で毎時12本と想定しました。全ての列車が東京メトロ南北線(麻布十番方面)または都営地下鉄三田線(三田方面)と直通運転します。直通方向は両線に半数ずつを基本とし、日中のみ南北線方面を毎時8本、三田線方面毎時4本と想定しています。
品川地下鉄のルートは2つ検討されました。ひとつは、国道1号から東に折れ、整備中の環状4号の地下を抜けて、国道15号の地下を南に折れて、JR・京急線と平行に品川駅を配置するルート(Aルート)。もう一つは、国道1号を南に進み、柘榴坂の下を東へ向かい、国道15号やJR・京急線と直行する位置に品川駅を配置するルートです(Bルート)。
輸送人員を予想したところ、Aルートが1日13.4万人、Bルートが7.8万人となり、他路線との乗換移動距離が比較的短いAルートの方が多くなることが示されました。
運賃体系は東京メトロと同等とし、東京メトロの既存線とは通算運賃と考えています。つまり、この時点で、営業主体として東京メトロを想定していたことになります。
品川地下鉄の需要推計や事業性については、Aルートの場合で輸送人員が1日13.4万~14.3万人、費用便益比が2.5~3.1、収支採算性(累積資金収支)は16~19年目に黒字転換します。メトロの既存線の減収の影響を考慮した場合、24~28年目の黒字転換です。したがって、社会経済条件に拠らず、目安とされる開業後40年以内には累積赤字が解消される結果となっています。
品川地下鉄の整備により、南北線(目黒→白金台)の混雑率は17ポイント緩和し、銀座線(新橋→虎ノ門)は7ポイント緩和すると予想しています。新橋駅で銀座線に乗り換えて溜池山王方面に向かっていた旅客が、品川地下鉄経由で南北線に流れるという見通しで、これらの減収を考慮しても、24~28年目には黒字転換するということです。
こうした結果を受け、2021年7月8日に開催された交通政策審議会鉄道部会の「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会」において、東京メトロ南北線の白金高輪~品川間と、有楽町線の豊洲~住吉間の延伸について、それぞれ整備を進めるのが適切という答申が示されました。これにより、事実上、東京メトロ南北線延伸が決まりました。
答申では、延伸について、国や東京都が建設費を補助し、東京メトロに建設・運営を求めるべきとしました。一方で、国と都がそれぞれ保有する東京メトロ株の半分を売却し、上場する方向性も示しました。要は、東京都が東京メトロ株上場を認め、株を放出する代わりに、メトロが南北線と有楽町線の延伸を自力で建設するという取引をさせたわけです。これを都、メトロが受け入れ、南北線の品川延伸が実現することになりました。
2022年1月28日に、南北線品川~白金高輪間2.5kmと有楽町線豊洲~住吉間4.8kmの延伸について、鉄道事業許可を国土交通大臣に申請。2022年6月には東京都が都市計画の素案を公表しました。2023年6月には、東京都が環境影響評価書を公表しています。
東京メトロ南北線延伸のデータ
営業構想事業者 | 東京メトロ |
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整備構想事業者 | 東京メトロ |
路線名 | 南北線 |
区間・駅 | 白金高輪~品川 |
距離 | 2.5km(全体で2.8km) |
種別 | 第1種鉄道事業 |
種類 | 普通鉄道 |
軌間 | 1067mm |
電化方式 | 1500V |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 2030年代半ば |
備考 | -- |
東京メトロ南北線延伸の今後の見通し
都心部・品川地下鉄構想は、2015年に東京都が提案した新しい計画です。構想自体には無理はなく、リニア中央新幹線の起点となる品川の重要性は今後高まることからも、品川への地下鉄建設は必要であるという認識は衆目の一致するところ。そのため、計画は順調に進んでいます。
すでに、2022年に鉄道事業許可を申請して、2023年には環境アセスにも着手しており、いずれ完成することは間違いのない情勢となっています。
懸念があるとすれば、導入道路となる環状4号線の進捗状況でしょう。工事期間は、2032年度までとされていて、これが遅れると、南北線の工事にも影響を与えます。
路線全体の距離は2.5kmと短いので、着工してしまえば開業までは長い時間はかからないと思われます。しかし、都心の工事に遅延は付きものなので、2030年代半ばという予測の確度については、なんともいえません。