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九州新幹線長崎ルート

九州新幹線長崎ルートは、福岡市と長崎市を結ぶ整備新幹線です。「長崎新幹線」や「九州新幹線西九州ルート」と呼ぶこともあります。

博多~新鳥栖間は鹿児島ルートとの共用で、開業済みです。武雄温泉~長崎間は建設中です。新鳥栖~武雄温泉間はフリーゲージトレイン(軌間可変電車)でつなぐ予定でしたが、開発が難航しており、整備方式を再検討中です。

武雄温泉~長崎間の開業予定は2023年春です。武雄温泉で在来線特急と対面乗り継ぎをする形の「リレー方式」で博多~長崎間を結びます。

九州新幹線長崎ルートの概要

九州新幹線長崎ルートは、博多~新鳥栖間26.3km(営業キロ28.6km)が開業済み。武雄温泉~長崎間66.0kmが建設中で、2023年春に開業予定です。新鳥栖~武雄温泉間は未着工ですが、肥前山口~武雄温泉間の在来線複線化工事は着工済みです。

武雄温泉駅は、新幹線と在来線特急が対面で乗り換えられるホームが整備され、対面乗り換えが可能になります。2023年春に、博多~長崎間が、武雄温泉で新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」で開業する予定です。

本来は、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)を投入して、博多~新鳥栖~武雄温泉~長崎を直通運転する計画でした。しかし、フリーゲージトレインの開発が難航して、リレー方式に変更されています。

武雄温泉駅の在来線特急ホームと新幹線ホームは同じ平面とし、対面乗り換えとなります。博多~武雄温泉が在来線、武雄温泉~長崎間が新幹線となり、旅客は両列車を乗り継いで移動することになります。

九州新幹線長崎ルートの最高速度は時速260kmです。武雄温泉駅での対面乗り換えの場合、博多~長崎間の所要時間は最速1時間48分と見込まれています。現状の1時間26分に比べ、22分の短縮です。

開業後の列車名(愛称)は未決定です。九州新幹線鹿児島ルートの部分開業時に倣うなら、「かもめ」「リレーかもめ」となりそうですが、列車名で決定した事柄はありません。

JR九州の当初計画では、武雄温泉~長崎間でJR九州は1日上下64本の運転本数を計画していました。これについて、リレー方式になってからの情報はありません。

画像:長崎県

画像:「九州新幹線(武雄温泉・新大村(仮称)間環境影響評価に係る事後調査報告書」

武雄温泉~長崎間には、嬉野温泉(仮称)、新大村(仮称)、諫早の各駅が設置されます。嬉野温泉駅は、温泉街から北東に約1.5km離れた国道34号線近くに建設されます。

嬉野温泉駅位置。画像:嬉野市資料

新大村駅は、JR大村線と国道444号線の交点付近に建設されます。竹松駅の南約800mの位置で、大村線にも新駅が建設される予定です。諫早駅、長崎駅は在来線駅との併設です。車両基地は新大村駅の北側に設置されます

九州新幹線長崎ルートは「整備新幹線」として整備が進められています。 整備新幹線は、鉄道・運輸機構(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が新幹線施設を建設・保有し、営業主体であるJRに対して施設を貸し付ける枠組みです。貸付を受けるJR九州は受益の範囲内で鉄道・運輸機構に貸付料を支払います。九州新幹線長崎ルートの武雄温泉~長崎間の建設費(工事費)は、5,000億円です。

九州新幹線長崎ルートの開業後、並行在来線となりうるのは、JR長崎本線の肥前山口~長崎間です。このうち、諫早~長崎間はJR九州が引き続き運営します。肥前山口~諫早間については、経営分離される想定でしたが、沿線の鹿島市が新幹線開業の恩恵を受けないため強硬に反対。JR九州が譲歩し、同社が当面、継続して運行することになりました。

具体的には、新幹線開業時点から3年間、JR九州が一定水準の列車運行のサービスレベルを維持し、開業後23年間は運行を維持します。特急列車は博多~肥前鹿島間で上下14本程度、普通列車も現行水準の本数です。

新鳥栖~肥前山口に関しては、当初はフリーゲージトレインを走らせる予定でしたが、開発が難航し、事実上断念に追い込まれています。費用負担を嫌う佐賀県は、同区間のフル規格での建設を拒否しており、ミニ新幹線での建設も含めて方法が模索されていますが、結論は出ていません。

九州新幹線長崎ルートの沿革

1970年に全国新幹線鉄道整備法が制定され、1972年に九州新幹線長崎ルートとして福岡市~長崎市間の基本計画が公示されました。1973年には九州新幹線長崎ルートを含む、整備新幹線5路線の決定と建設の指示がなされました。

しかし、オイルショックや国鉄の経営悪化の影響を受けて着工は見合わせとなり、1982年9月24日に、九州新幹線を含む整備新幹線全線の着工凍結が閣議決定されました。ただ、計画の検討は進められ、1985年1月に、九州新幹線長崎ルートの経路について、国鉄が早岐経由とすることを公表しました。

1987年1月30日の閣議決定で整備新幹線の着工凍結が解除されましたが、JR九州は長崎ルートについて「早岐経由では収支改善効果は現れない」と意見を表明(1987年12月)。運輸省が1988年8月に示した暫定整備計画案でも、九州新幹線長崎ルートの着工は盛り込まれませんでした。

こうした事態を受け、早岐経由とされていた当初ルート案の見直しが行われ、嬉野経由に変更して距離を短縮し、建設費の圧縮を図る案(短絡ルート)が浮上。1992年にJR九州が武雄市から諌早市・大村市を経由して長崎市に至る短絡ルートについて、スーパー特急方式の収支試算結果を公表します。

その後、地元自治体などで構成する九州新幹線長崎ルート建設促進連絡協議会も、短絡ルートによるスーパー特急方式を地元案として合意しました。この時点で、武雄温泉、新大村を経由する現ルートの骨格が固まったわけです。

1998年2月に、日本鉄道建設公団が武雄温泉~新大村(仮称)間の駅・ルートを公表。10月には環境影響評価に着手し、この区間のスーパー特急方式での建設に向け準備が進みます。

2000年12月の政府与党申し合わせを受けて、2001年12月に同区間の暫定整備計画が決定され、2002年1月8日には、鉄建公団が武雄温泉~長崎間の工事実施計画をスーパー特急方式で認可申請しました。

2004年12月の政府与党申し合わせでは、武雄温泉~諫早間をスーパー特急方式で着工し、その際にフリーゲージトレインによる整備を目指すことが取り決められました。

しかし、並行在来線となる長崎線肥前山口~諫早間の沿線自治体が在来線の経営分離に強硬に反対し、整備新幹線着工の条件の一つである「並行在来線の経営分離への沿線自治体の合意」が達成されず、着工は先送りとなります。

事態打開のため、JR九州が譲歩し、2007年12月に、JR九州と佐賀、長崎両県は、肥前山口~諫早間の全区間をJR九州が継続して運行することで合意。新幹線開業後の同区間の赤字は、JR九州と両県が20年間負担することになりました。

これでも鹿島市は反対を続けましたが、並行在来線の経営分離が行われないことにより「沿線自治体の合意」が不要になったとして、2008年3月に、武雄温泉~諫早間の工事実施計画が認可され、4月28日に着工しました。

この時点では、建設区間は「諫早まで」でした。しかし、長崎までの整備を求める声は根強く、2008年12月16日に、長崎駅部を2009年末までに認可する方向で政府・与党が合意。しかし、2009年の政権交代で未着工の整備新幹線についてが、いったん白紙に戻ってしまいます。

新政権での議論の後、2011年12月に「整備新幹線の整備に関する基本方針」が決定され、武雄温泉~諫早~長崎間が「一体的な事業」として整備されることになりました。佐世保線肥前山口~武雄温泉間を複線化し、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)方式(標準軌)により「諫早・長崎間の着工から概ね10年後に完成・開業する」との方針が決定しました。

フリーゲージトレインによる整備予定。画像:長崎県

これを受け、2012年6月12日に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が長崎ルート武雄温泉~長崎間の工事実施計画を国土交通省に認可申請。6月29日に認可され、フル規格による武雄温泉~長崎間が着工。博多~武雄温泉間はフリーゲージトレインで乗り入れることになりました。開業予定は2022年度末頃と決められています。

フリーゲージトレインの開発も進められました。2014年4月に、フリーゲージトレインの第三次試験車両での性能確認試験を開始します。

しかし、同年12月に車軸に摩耗などが発生し、試験が中断。これにより、2022年度末の武雄温泉~長崎間の開業時にフリーゲージトレインを全面導入することは困難になり、2016年3月、国や長崎、佐賀両県など関係6者は「リレー方式」で2022年度に開業させることで合意しました。

フリーゲージトレインは、2016年12月に検証走行試験を実施したものの、ふたたび車軸に磨耗が見つかってしまいます。2017年7月14日、国土交通省は、2022年度の長崎ルート暫定開業時に、フリーゲージトレインの先行車両を導入することができないことを認めました。

同7月25日には、JR九州の青柳俊彦社長が、与党の整備新幹線推進プロジェクトチーム(与党PT)の会合で、「フリーゲージトレインによる運営は困難」と述べ、長崎新幹線へのフリーゲージトレイン導入そのものを断念することを明らかにしています。

そのため、与党PTでは、新鳥栖~肥前山口間の整備方法を再検討。フル規格新幹線とミニ新幹線が候補にあがっていますが、現段階では決定していません。決定しているのは、2023年春の「武雄温泉リレー方式」での開業のみです。

九州新幹線長崎ルートのデータ

九州新幹線長崎ルートのデータ
営業事業者 JR九州
整備事業者 鉄道・運輸機構
路線名 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)
区間・駅 新鳥栖~武雄温泉~長崎
距離 66km(武雄温泉~長崎)
種類 第一種鉄道事業
軌間 1,435mm
電化方式 交流25,000V
単線・複線 複線
開業予定時期 2023年春(武雄温泉~長崎)
備考 --

九州新幹線長崎ルートの今後の見通し

九州新幹線長崎ルートは、歴史的経緯を追うだけでも大変で、複雑な合意の上で建設されてきた整備新幹線です。いったんはフリーゲージトレインでの整備が決まったものの、開発が上手くいかず、新鳥栖~武雄温泉間をどうするのか、という問題が解決していません。

同区間の整備には、佐賀県が消極的です。佐賀県としては、フル規格で新幹線を通せば、並行在来線問題が発生し、新幹線による博多方面への時間短縮も小さな効果しか得られないわけで、巨額な建設費の負担をする理由が見当たりません。

かといって、フリーゲージトレインの開発は暗礁に乗り上げて、実現性は低くなってしまいました。ミニ新幹線を建設する場合は、鳥栖~武雄温泉間を単線並列にするといった無駄が生じます。

佐賀県が同意しなければフル規格にはできませんが、現状の整備新幹線スキームでは、同意は困難です。整備新幹線スキームを変更すれば、他の地域の新幹線建設にも影響します。九州新幹線長崎ルートの建設は、その沿革を振り返るだけでムリを重ねている印象ですが、最終的にどんな地点に落ち着くのか、先が見えません。

仮に、全線フル規格で作るとすれば、予算の問題から新鳥栖~佐賀間の開業時期は2040年代以降になるとみられ、今後20年程度は武雄温泉での乗り継ぎが必要になりそうです。

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