JR山田線宮古~釜石間の三陸鉄道移管が事実上決定。2016年にも復旧、運転再開か。

JR山田線宮古~釜石間の三陸鉄道移管が事実上決まりました。岩手県と三陸12市町村が集まった8月7日の山田線復興調整会議で、JR山田線宮古~釜石間の三陸鉄道移管案を「有力な選択肢」と位置付けたためです。正式決定ではありませんが、三陸鉄道による「久慈~盛間の一貫運行」を前提とする交渉が同意されたため、移管は事実上決定したといっていいでしょう。

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いわて国体が目標

今後は赤字補填などを巡るJR東日本との交渉に焦点が移ります。岩手県は2016年にいわて国体を控えており、地元にはそれまでに復旧したいという機運があります。となると、早ければ2016年夏頃までの鉄路復旧、運転再開が実現しそうです。

調整会議では岩手県がJRとの協議内容を説明。(1)関係自治体の負担を避けつつ早期鉄道復旧を目指す(2)三陸鉄道による山田線の運営を「有力な選択肢」として、JRとの詰めの協議を急ぐ、という2点を確認しました。達増拓也知事は「山田線や三陸鉄道の沿線の皆さんには『三陸沿岸が鉄道で一つにつながった姿を早く見せて』との思いが強く、これを共通認識として確認しました」と述べました。

三陸鉄道

将来的な鉄路維持のスキームはできるか

岩手県は今後、JRに(1)設備更新時などの費用補填(2)三陸鉄道が求める水準への鉄道施設の強化(3)復旧後の経営を安定させるのに十分な赤字補填(4)復旧後一定期間の運賃をJR運賃と同額にする差額負担、の4点を主に要請する予定です。同時に、国にも一定の支援を求めていきます。

これについて、地元もおおむね受け入れの方向のようです。大槌町の碇川豊町長は会議後、「県はJRに足元を見られないように交渉してほしい」と話し、山田町の佐藤信逸町長は「町の負担増や運賃の大幅値上げは受け入れられない」と述べました。いずれも、立場として厳しい姿勢を示しましたが、移管そのものに反対はしませんでした。

今後の日程は示されていませんが、関係者からは「震災から4年の2015年3月までに復旧工事に着工してほしい」「いわて国体や、釜石市が試合誘致を目指す2019年のラグビーワールドカップまでに復活した姿を示したい」といった声がでています。

山田線の2009年度の乗客数は、1キロあたり1日平均輸送人員が約400人。JR東日本管内では3番目に少ない路線でした。被災後、JRはバス高速輸送システム(BRT)導入を提案しましたが、地元は鉄路復旧を要求。JRは打開策として、今年1月、三陸鉄道へ運営移管を提案し「車両など無償譲渡」「現状復旧費はJR、用地かさ上げなどは自治体が負担」「10年間の赤字想定額5億円を一時金で補填」などの条件を提示しています。

会議では、5億円では少ない、という声や、将来的な負担増を警戒して、上下分離による下部施設のJR保持を求める声も出たようです。そのため、JRがもう一歩譲歩して、将来的な鉄路維持のスキームを提案できれば、最終的にはJRと合意、復旧工事にとりかかると思われます。そうなると、三陸鉄道は北リアス線と南リアス線がつながり、「南北統一」が達成されます。盛~久慈間を三陸鉄道が一帯運営することには、三陸鉄道にもメリットがあるでしょう。

 三陸鉄道 情熱復活物語

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