東急大井町・田園都市線「有料座席指定車」導入の背景を考える 

採算を取るのは難しい?

東急電鉄は、大井町線と田園都市線で、平日夜の有料座席指定サービスを開始すると発表しました。新型車両6020系のうち1両をロング・クロスシート転換設備とし、座席指定サービス車両として運用します。

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2018年冬、サービス開始

東急大井町線では、2018年2月に、6両編成だった急行列車をすべて7両編成に増強したばかりです。3月28日には急行用の新型車両6020系7両編成を2編成投入しますが、このうち1両をロング・クロスシート転換車両とし、座席指定サービスをおこないます。

座席指定車となるのは1両のみで、定員は40名程度です。他の6両はこれまで通り、一般車両として運転します。

有料座席指定サービスは2018年冬から開始予定で、大井町線・田園都市線を直通する大井町発長津田行の急行として運行します。平日夜の19時30分頃から23時台にかけて5本程度を設定。サービスの適用区間や、料金、販売方法などは未定です。

東急6020系
画像:東急電鉄ニュースリリース

自社車両では初めて

東急電鉄が自社車両で有料座席指定サービスをおこなうのは初めてです。有料座席指定列車としては、「S-TRAIN」が東横線内を運行していますが、西武40000系を使ったもので、週末のみです。平日夜に、自社車両を用いた有料座席指定サービスは、これまでおこなっていませんでした。

新サービスの詳細は未発表ですが、一般車両を併結しているため、停車駅は既存の急行と同じになるでしょう。座席指定区間の範囲はわかりませんが、当初は大井町~鷺沼あたりとしてスタートし、状況によって短縮または延長するのではないでしょうか。料金は「S-TRAIN」に揃えて350円になる可能性が高そうです。

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採算が取れるのか

有料座席指定サービスは、私鉄各社で広まっています。京王電鉄が「京王ライナー」を2018年2月に運転開始したことで、都内の大手私鉄で平日の有料座席指定サービスをおこなっていないのは東急だけとなっていました。

そのため、東急がサービスを開始することに驚きは少ないですが、それが大井町線であることに意外感をもった方は多いでしょう。

40席の座席指定車を1日5本程度運行するだけでは、料金350円と仮定して、満席になっても1日の実入りは7万円に過ぎません。年間収入は最大1,700万円程度です。車両や駅施設、システムなどへの投資を考えれば、採算が取れるのか? という疑問が湧きます。

東急6020系座席転換車
画像:東急電鉄ニュースリリース

試験的な導入?

そのため、大井町線での有料座席指定車運行は、将来のサービス拡大を見据えた、試験的な側面があるとみられます。また、大井町線の魅力を高めることで、田園都市線渋谷口の利用者を、少しでも大井町線に誘導したい、という思惑も透けてみえます。

大井町~長津田間の所要時間は40分程度。着席需要はあるでしょうから、「どうしても座って通勤したい」という人には朗報でしょう。

「渋谷口にも座席指定車を!」という声も少なくないと思いますが、現状の夕ラッシュ時の渋谷駅の混雑を見る限り、当面は難しそうです。(鎌倉淳)

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