「マウントレースイスキー場」は知られざる駅前ゲレンデ。夕張駅徒歩0分、フラットな斜面は練習向け【ゲレンデ・レビュー】

1両編成のキハ40で夕張駅に着くと、駅前に大きなリゾートホテルが立ちはだかります。それがホテルマウントレースイ。ホテルの中を通ってブリッジを渡れば、すぐにマウントレースイスキー場です。これほどまでに駅から近いのか、とちょっと驚きました。

駅前ゲレンデとしてはガーラ湯沢が有名ですし、湯沢中里も古くから知られています。マウントレースイは、それらと変わらない便利さの「エキチカスキー場」です。ただ、接続しているのが石勝線の夕張支線で、特急列車やリゾート列車が一切来ない、というのがガーラや中里との違いです。実際、マウントレースイスキー場に夕張支線でやってくる人は、ほとんどいないでしょう。

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「小さくて高さがない」

マウントレースイスキー場は、ニセコやルスツに比べると、ややカゲの薄いスノーリゾートかもしれません。標高差は404mにすぎず、リフト・ゴンドラはあわせて5本だけです。

地元の人に言わせると「小さくて高さがない」というのがマウントレースイのイメージのようです。

夕張駅とマウントレースイ

練習をするのにもってこい

が、実際に滑ってみると、なかなか質が高いスキー場です。理由はいくつかありますが、何よりも斜面のねじれが少なくコース幅も広いため、滑りやすいことが挙げられます。斜面角度も適度なバランスで配置されていて、ボーゲンから高速カービングまで、練習をするのにはもってこい。人が少なく、ぶつかる心配をしなくていい点も練習向けのゲレンデといえます。

緩斜面だけを滑れるリフトもありますので、完全な初心者にも向いています。山頂からの迂回路も設定されていますので、ブレーキングをマスターすれば、初級者でも山頂から山麓まで滑り降りることができます。フラットな中斜面はどんなレベルの人が腕を磨くのにも向いていますし、上級者は林間コースで深いコブにチャレンジできるでしょう。ボードパークも広く、キッカーやボックス、レールなどが配置され、しっかり手入れもされています。リフト・ゴンドラ配置はとても効率的で、待ち時間も少なく、ストレスがありません。

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1日で満足してしまう

欠点を挙げれば、効率的にガンガン滑れるので、1日いれば満足してしまい、有り体にいえば飽きてしまうことでしょうか。コースのバリエーションは多くはありませんし、中級以上の腕前の人がロングクルーズを楽しめる場所もありません。

レンタルは一般とエキスパートが揃っています。一般レンタルの用具も新しく、品質はまずまずでした。レストハウスはやや狭いですが、人も少ないのでそれほど混雑しません。週末は混みましたが、平日はガラガラ。レストランのメニューは乏しいですが、価格はお手ごろです。施設は全体に清潔で、よく手入れされています。

ということで、なかなかにクオリティが高いスキー場なのですが、驚くほど空いています。日曜日は大会も開かれていたりして、それなりに人はいましたが、ガーラの平日よりはるかに人口密度は少ないでしょう。月曜日になると空のリフトが目立ち、これで大丈夫か、と思わせるほどの閑散ぶりです。水曜日などはどうなっているのでしょうか。

マウントレースイスキー場

偉大なるローカルスキー場

マウントレースイは松下興産がバブル期に開発したスキー場ですが、現在はルスツやサホロと同じ加森観光系になっています。ルスツやサホロと違って、外国人の姿が少なく、客は日本人がメインです。最近賑わっているスキー場は外国人客が下支えしている側面がありますので、マウントレースイが閑散としているのは、外国人客の少なさも理由の一つでしょう。休憩所では「近所のおっさん」的な人が弁当を広げていたりして、ローカル感が漂います。つまり、ここはまだローカルなスキー場なのでしょう。それにしては規模が大きいので、「偉大なるローカルスキー場」がマウントレースイの現在の姿、といえるのかも知れません。

それにしても、もったいない。これだけ練習向けのバーンが揃っているのですから、スキーに馴染みのない台湾や東南アジアの客は、ニセコやルスツよりもマウントレースイのほうが適している気がします。そういうスキー初心者の海外観光客を誘致すれば、ここはもっと賑わっていいスキー場ではないか、と思います。

近くに飲食店が少ない

ところで、夕張は財政破綻した街です。そのせいか、街に活気がありません。夕食を食べに行こうと街へ出ても、飲食店らしき灯りを探すのは大変です。ようやく市街地に一軒だけ営業していた「居酒屋やまひばり」という店で、地元客と話をしてみると、「北海道にはたくさんスキー場があるのに、なんでまた東京から夕張に来たの?」などと尋ねられました。どうも夕張の方は自虐的になっているようで、「いやもう、夕張なんかに来てくれてすいません」的なことをおっしゃる人が多いように見受けられます。けれども、これだけ立派なスキー場があるのですから、もっと胸を張ってほしいものです。

ちなみに、この「居酒屋やまひばり」は、とても価格が安く、ボリュームがあり、そして美味しい店でした。ビールを飲んで、食べたいものをたべて、1人2000円程度で満腹になり、北海道の地場居酒屋の実力を見せつけられたような気がします。ホテルマウントレースイの前には小さな屋台村がありますが、それよりは街に出て、こうした居酒屋に行ってみた方が楽しめるでしょう。

新千歳空港からクルマで1時間半。列車なら2時間ほどで、青春18きっぷでも行けます。成田からのLCCと青春18きっぷを組み合わせれば、都内から数千円で着けてしまうのがマウントレースイスキー場です。夕張は物価も安いので、エコノミーな北海道スキーを楽しみたい人にはおすすめできます。

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