ピーチとバニラのLCC経営統合で、日本の空はどう変わるか

国内LCCは2強体制に

ANA系の格安航空会社LCCのピーチ・アビエーションとバニラ・エアが経営統合する方針を固めました。ブランドは「ピーチ」が存続します。ダイヤモンドオンラインなど報道各社が報じました。

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国内LCCの2位、3位

ピーチ・アビエーションは日本初のLCCで、関西空港を拠点としています。2017年3月期の売上高517億円は国内2位。最終利益は49億円で、4期連続の最終黒字を計上しています。利益剰余金は50億円にまで積み上がり、LCC国内勢のなかで圧倒的な収益力を誇ります。

ピーチに対するANAの出資比率は当初38.7%でしたが、2017年4月に投資ファンドなどから株式を買い増して連結子会社化。現在は67%を出資しています。

一方、バニラエアは国内LCC3番手で、成田空港を拠点としています。もともとはマレーシアのエアアジアと共同出資したエアアジア・ジャパンという会社でしたが、エアアジアが早々に撤退したため、現社名に変えてANA100%出資の完全子会社になっていました。

バニラの売上高は239億円で、ピーチの半分以下です。2016年3月期に初めて黒字計上したものの、2017年3月期は7億円の損失を計上し、赤字転落しています。

ピーチA320
写真:ピーチ・アビエーション

バニラエア

国内で圧倒的首位に

ピーチが関西拠点、バニラが成田拠点と、両社は補完関係にあり、使用機材もA320型機で同じです。そのため、ANAがピーチを連結子会社化した当時から、バニラエアとの経営統合を視野に入れていると見られていました。

日本経済新聞電子版2018年3月17日付によりますと、両社は2020年までに経営統合するとのこと。売上高は合算で756億円で、ジェットスター・ジャパンの528億円を抜き、国内で圧倒的な首位に立ちます。

ANAは2018年2月1日に2018-22年度の中期経営戦略を発表しており、そのなかで、両社の「連携強化」を掲げていました。連携の意味についてはこれまで明確にされてきませんでしたが、経営統合という、最もわかりやすい形に落ち着くようです。

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国内地方路線と海外中距離路線に進出

ANAの中経では、LCC事業について、国内においてはローカル線を中心に需要を開拓し、海外においては中距離機を導入してアジア各国へLCC路線網を拡大するとしています。

となると、統合ピーチは、成田・関西のダブル拠点から、「国内のローカル線」と「海外の中距離線」に翼を広げていきそうです。

ピーチは2018年3月1日に関西~新潟線を就航させ、バニラエアは、2018年7月の成田~石垣線と那覇~石垣線の就航を発表しました。統合ピーチでも、新しい地方路線の開拓が期待できそうです。

海外路線については、ANA本体が維持しにくい、競合の激しい低単価の短中距離路線が、統合ピーチに徐々に移管されていくのではないでしょうか。

LCC国内2強体制へ

統合ピーチの出現により、日本のLCCは、統合ピーチとジェットスター・ジャパンの2強体制が濃くなるのは間違いなさそう。それが、どういう効果をもたらすのかはまだわかりませんが、国内線については、寡占が進めば低価格化が抑制される可能性が出てきます。

また、高収益のピーチが赤字のバニラを引き受けることで、現在のピーチ路線の運賃水準に影響が出るかもしれません。

ピーチとバニラの統合で、LCCの路線網が、より広まることは間違いなさそうですが、より低価格化が進むかは、わかりません。(鎌倉淳)

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