「チャオ御岳」「おんたけ2240」スキー場が危ない! 2018年シーズンの営業が不透明に

長野・岐阜県境にある御嶽山麓の2つのスキー場で、2017-2018年シーズンの営業に不透明感が漂ってきました。「チャオ御岳スノーリゾート」を運営するマックアースが、来シーズンの営業準備の延期を発表。「おんたけ2240」では、次期指定管理者が決まらない状況が続いています。両スキー場とも、運営体制が整わなければ休業の可能性も浮上しています。

【追記】「チャオ御岳」「おんたけ2240」どちらのスキー場も、その後、2018年シーズンの運営継続を公表しました。チャオ御岳は、このうち1月9日~3月16日は平日の営業を取りやめます。

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JR東海が参画していたスキー場

チャオ御岳スノーリゾートは、岐阜県高山市の御嶽山北斜面に位置し、1988年にオープンしました。5本のコースとゴンドラ1基、リフト2基を備える中規模スキー場です。標高2000m前後にゲレンデが広がり、ゴールデンウィーク明けまで営業できる期間の長さが魅力です。2017年シーズンも、5月21日までオープンしていました。

スキー場の運営は飛騨森林都市計画企画という会社。当初はJR東海が経営に参画していましたが、保有していた株式を2013年にマックアースに売却し、撤退しています。

チャオ御岳スノーリゾート
写真:高山市公式観光サイトより

入り込み客が1万人減

運営を引き継ぐ形となったマックアースが、このほど、チャオ御岳スノーリゾートについて、「運営体制の再構築が完了するまで、2017-18年シーズンのスキー場営業に係る準備を延期」すると発表しました。「今後は、当社事業にご協力いただけるパートナー様を幅広く募り、同スキー場の再開に向けて、最大限の努力をして参ります」とし、新たな協力企業を求める姿勢を明らかにしています。

マックアースは営業準備延期の理由として、「御岳山噴火による風評被害」と「ツアーバスの規制強化」を挙げ、スキー場の入り込み客数が伸び悩んだほか、利用者の滞在時間も短くなり収益が悪化したとしています。

日本経済新聞2017年7月4日付によりますと、前シーズンの来場者は約9万人で、マックアースが経営参画した初年度の2013-14シーズンに比べ約1万人減ったとのこと。岐阜新聞7月5日付は、「体制が整わなければ休業もあり得る」と報じています。

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指定管理者が未定に

同じ御嶽山麓の長野県王滝村に位置する「おんたけ2240」についても、2018年シーズンの営業が危惧されています。おんたけ2240は御嶽山東南斜面に9コースとゴンドラ1基、リフト4基を有するスキー場で、チャオ御岳よりも大規模です。

スキー場を王滝村が所有し、マックアースが指定管理者となって2012年から運営してきました。この契約が2017年4月で終了し、次期管理者を公募したものの応じる企業がなく、次の指定管理者が未定となっています。4月以降、2ヶ月間は前契約を延長しましたが、それも6月末で期限を迎えました。

信毎ウェブ2017年7月1日付によりますと、これまでは指定管理料(委託料)を村が指定管理者に支払っていなかったのですが、この方針を変え、「次期指定管理者については指定管理料の支払いを条件に加え、改めて公募する」とのことです。

とはいえ、すでに7月になり、ウィンターシーズンまでは5ヶ月程度しかありません。スキー場の整備や宣伝などを考えると、2017-18年シーズンの開業は微妙な情勢になりつつあるといわざるを得ません。

おんたけ2240
写真:ontake.jpより

噴火に貸切バス規制が追い打ち

御嶽山麓のスキー場が不振となっている理由は、マックアースが指摘するように、2014年の御嶽山の影響が大きいのは間違いないでしょう。ただ、それ以前にも、JR東海が運営から撤退したことに象徴されるように、エリア全体のスキー場運営の難しさがあるともいえます。

御嶽山麓のスキー場の集客ターゲットは主に中京圏で、ライバルは高鷲スノーパークなどを擁する奥美濃エリアのスキー場です。東海北陸自動車道の開通で、奥美濃エリアの交通アクセスが大きく改善したのに対し、御嶽山周辺を含む木曽エリアのスキー場は、高速道インターから離れたままです。

チャオ御岳の場合、中津川インターから105km、おんたけ2240は同じく84kmあります。鉄道アクセスの最寄駅は木曽福島ですが、これも大きく離れています。

頼みの綱はバスツアーですが、貸切バスに対する規制強化が追い打ちをかけました。2012年の関越道バス事故を受けて、貸切バスのドライバーの拘束時間や運転時間に対する規制が強化され、バスツアーを設定しにくくなったのです。そのため、スキーツアーの入り込みが減ってしまいました。

さらに、最近のスキー場を潤しているインバウンドからも、取り残されていたようです。

マックアース関連なのに

今回の休業危機で衝撃的なのが、いずれもマックアースが関わっているスキー場であることです。マックアースはスキー場運営の最大手で、不振に陥っている地方のスキー場再生に定評があります。実際、これまでも多くの成功事例を積み重ねてきました。

そのマックアースが、協力企業を新たに募ったり、契約満了で指定管理者から降りてしまったりしたわけです。

それだけに、両スキー場の運営に加わる新たな会社が現れるのか、心配なのは筆者だけではないでしょう。チャオ御岳もおんたけ2240も、標高が高く雪質には定評があるスキー場です。新たな運営者が見つかり、なんとしても休業危機を乗り越えてほしいところです。(鎌倉淳)

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