近江鉄道が「自社単独で維持困難」。自治体に協議求める

設備更新費用が重荷

滋賀県の近江鉄道が、鉄道事業存続へ向けて、沿線自治体などに協議を求めています。単独で鉄道を維持するのが将来的に困難になるとの見通しを伝え、上下分離などの提案していくようです。

広告

20年以上赤字が続く

近江鉄道は、米原~貴生川間の本線、近江八幡~八日市間の八日市線、高宮~多賀大社前の多賀線の3路線59.5kmを営業する地方私鉄です。もともと西武系の会社で、2016年に西武鉄道の完全子会社になりました。

西武グループにおいて、近江鉄道関連の事業は好調で、2015年度の決算短信では「近江事業では、訪日外国人の増加などによりバス事業を中心に好調に推移」と記されています。

ただ、近江鉄道の鉄道事業に関しては、1994年度に赤字に転落して以来不振が続いています。2016年度には営業費用約15億円に対し、約3億円の赤字を計上。赤字はバス事業などの利益で穴埋めしています。

近江鉄道

輸送密度は2000未満

近江鉄道の2016年度の輸送人員は約470万人。輸送密度については、2014年度の鉄道統計年報によると、全線平均で1,762と記載されています。

中日新聞2017年12月20日付によりますと、八日市線の輸送密度は4,000人を超えているものの、本線で2,000人を上回るのは彦根~高宮間のみ。それ以外は「第一特定地方交通線水準」といわれる2,000人を下回り、一部区間では1,000人を切っているそうです。

広告

公設民営を想定か

こうした状況から、近江鉄道では、鉄道事業を同社単独で将来にわたり維持するのは困難と判断。滋賀県と沿線10市町などに対し、協議の場を求めることにしました。

各社報道によりますと、鉄道存続をする場合、設備を自治体や第三セクターなどが保有する「公有民営方式」を想定。それが困難な場合は、バス路線への転換などを含めた検討を求める方針のようです。

朝日新聞12月21日付によりますと、同社で向こう10年間の設備投資を試算したところ、過去10年の1.5倍になる結果が出たそうです。つまり、廃止を打診しているというよりは、老朽化した設備の更新費用の負担を、各自治体に求めているようにもうかがえます。

大手私鉄・西武鉄道の100%子会社とはいえ、20年以上続く赤字事業のために、多額の設備投資ができないのは仕方ないところ。年間約470万人もの利用者がある以上、全線廃止になる可能性は低いと思いますが、部分的な廃止論が出てくる可能性はありそうです。(鎌倉淳)

広告
前の記事JR九州社長が「5年間はダイヤ改正しない」。運行規模を当面維持へ
次の記事白馬~志賀高原の直行バスが誕生。スノーモンキーパークも経由