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成田LCCは定着できるか? 定時性と価格のバランスが今後のカギに。顧客対応の改善も重要。

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2012年に参入した新規格安航空会社LCC3社が、このところセールを連発しています。エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーションが相次いで「秋のセール」を実施。国内線各路線で2000~4000円の激安チケットを販売しています。

利用者にとってはセールはありがたいもの。しかし、こんな安値で航空券を販売しているところをみると、実はLCCはガラガラなのではないか?と心配してしまいます。

とくに心配なのが成田拠点のLCC、ジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパンです。セールで販売している対象便が幅広く、集客に苦労している様子がうかがえます。成田でLCCは難しい、とは就航前から言われていたことですが、その懸念が当たってきたのでしょうか。ここでこの2社のこれまでの実績をみながら、成田でLCCが定着できるかをもう一度考えてみたいと思います。

筆者も成田LCCを数回利用してみたのですが、何度行っても「成田は遠い」ということを実感します。昔に比べたら交通は便利になりましたが、羽田もかなり便利になっているので、都心部からの比較では成田劣位は変わりありません。

LCCは既存航空会社(レガシーキャリア)に比べると、空港に早めに着かなければならないというのも難点です。さらに、成田へは列車やバスの本数も少ないので、アクセス交通機関に乗るにも早めに行かないといけません。そうした余裕時間を含めると、たとえば新宿から札幌駅まで、成田LCCを使うと5時間程度はかかります。しかも成田LCCは遅延が多いので、実際は6時間くらいかかることも少なくありません。羽田からレガシーを使えば、アクセス列車は頻発していますし、空港に早着する必要もなく、飛行機の遅延も少ないですから、新宿から4時間あれば札幌駅に着くことができます。

もし、定刻で運航され、所要5時間で札幌に着くのなら、羽田と比べての差は1時間程度で、価格差を考えれば多くの人には許容範囲でしょう。実際、筆者は一度だけ成田LCCの定時運航を体験することができましたが、このときはさほどストレスなく「安くて快適」と感じました。要するに、少々時間がかかっても、待たされる時間が少なければ快適なのです。

筆者の主観かもしれませんが、定時運航されてさえいれば、数千円で北海道や沖縄に行ける価格はかなり大きな魅力です。しかし、大きな遅延に巻き込まれると、「安くても二度と使いたくない」と感じてしまいます。ゆえに、定時性の確保は、成田LCCの大きなポイントといえます。

成田空港のような混雑空港を拠点にしながら定時性をあげるには、機材繰りに余裕を持たせるしか方法がありません。折り返し時間を長めにとる必要がありますが、そうなると輸送効率が落ち、必然的に運賃を高めに設定せざるをえなくなります。とはいえ、成田LCCは安いから魅力なのであって、高くなったら羽田のレガシーに客は流れるでしょう。定時性の確保と価格のバランスをどうとっていくかが、今後の成田LCCのポイントになりそうです。

成田までの距離が不利に働くのは、短距離路線です。具体的には成田・関西線などです。現状では、成田・関西便を利用すると、新宿から梅田まで5時間程度はかかります。新幹線「のぞみ」なら3時間、ぷらっとこだまで4時間、定価4200円の高速バスですら9時間程度で着くのですから、LCCとしては相当な低価格を設定しないといけません。成田や関空までの交通費を勘案すれば、片道5000円程度が限界と思われますが、それで採算が取れるのでしょうか。

価格を訴求するなら、成田よりも着陸料の安い茨城空港を使った方がよいかもしれません。茨城空港から都心へのアクセスはかなり不便ですが、着陸料の安さと折り返し時間の短さを活用すれば、成田より価格を2000円くらいは下げられるかもしれません。しかし、茨城からですと、時間的競争力は落ちてしまいます。

顧客対応についても課題があります。たとえば、筆者はこの2社のひとつから、予約完了していないのにカード請求が来て、実際に引き落とされたという体験をしています。

こうしたトラブルや、航空会社都合の欠航時には返金対応が行われますが、その手続きは簡単ではありません。これはエアアジア、ジェットスターのどちらにも言えることですが、問い合わせようにもコールセンターがあまりにもつながりにくい上に、問い合わせフォームがどこにあるかもわかりにくいウェブサイトの構造になっています。言い方は悪いですが、対応の形だけ整えておき、かかる手間と時間に利用者がうんざりし、諦めるのを待っているかのようにすら思えてしまいます。ようやく手続きを終えても、実際にはなかなか返金されない、という苦情もあるようです。

頻繁なダイヤ変更も問題でしょう。ジェットスター・ジャパンは、夏ダイヤから冬ダイヤに移行する際に、最大で10時間程度の時刻変更を行いました。これでは、予約した方はたまりません。10時間は例外的としても、10分や20分程度の時刻変更は頻繁に行われています。利用者は時刻表の細部まで見て、「これなら仕事が終わってからでも間に合うな」などと計算して予約しているものですが、そういう客の事情は無視しています。遅延を前提とするなら繰り下げは容認できますが、繰り上げは都合の付けられない人も多いでしょう。ダイヤの大幅な変更の場合は利用者は無料でキャンセルができますが、その際に返金を求めようにも、上記のような気の遠くなる請求作業をしなければならないのです。

格安航空会社LCCは、利用者にさまざまな制約を課していて、利用者が遅刻しても払戻不可、利用者都合のキャンセルも不可などとしています。一方で、航空会社都合で遅延しても欠航しても補償はなし。その非対称性が格安運賃の理由なのですが、利用者としてはリスクが高いため、これからは早期予約に躊躇する人も増えるでしょう。「早期に予約したら、その日は絶対に予定は変えられない、というプレッシャーになってしまった」とぼやく客もいるほどです。そういう経験をした客は、直前まで予約変更のできる、比較的手頃な運賃へと流れていくかもしれません。最近、スカイマークが導入した「フリー」というような運賃制度です。

そのスカイマークは、成田空港発着で1万円の普通運賃を設定し、好評を博しました。オペレーションも比較的安定していて、遅延も少なくなっています。機内販売の価格もスカイマークは良心的ですし、全体的なサービス水準はLCCより上です。とどのつまり、新規LCCの現状が、スカイマークの評価を高めている、という結果になっているようにも思えます。

現状の成田LCCの状況を見ていると、海外で成功したモデルがそのまま日本で通用するとは言い切れません。評価するには少し時間がかかるでしょう。格安航空会社LCCのモデルが日本で成り立たないとは思いませんが、海外よりは「高品質」にしないと持続できないのではないか、と思います。日本には海外と違って、新幹線という強力なライバルが路線網を張り巡らしていますし、高速バスのクオリティも低くはありません。青春18きっぷという伏兵までいます。おまけに同業には、スカイマークという低コストのレガシーキャリアが存在します。

「高品質」というのは高い定時性と、高い顧客対応を指します。定時性が低ければ、実質的な所要時間がかかりすぎて、高速バスと大差なくなり、航空機の速達性が意味を失います。顧客対応が悪ければ、トラブルに巻き込まれた利用者は次に使うのをためらうでしょう。

せっかく誕生した成田LCCですから、筆者としては根付くことを願わずにいられません。そのために、新規LCC2社にはより一層の改善を期待したいところです。


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