奈良線の複線化・改善計画の全まとめ。京都~城陽間が全線複線、京都駅ホームも大幅改造が実現。

奈良線は、京都と奈良を結ぶJR西日本の路線です。JR奈良線の1日平均の利用者数は、1990年度の約2万人から2010年度には5万人を突破。JR発足当初と比べると、利用者数は約3倍になっています。

一方で、踏切の多さやホームの混雑などの安全面から課題もあり、単線区間も残っていて、改善の余地が多い路線なのも事実。単線区間では輸送障害が発生するとダイヤ乱れが増幅されて回復に時間が掛かるという問題点もあります。

JR西日本では、過去にもJR奈良線の改善には力を入れてきましたが、今回、京都府および関係市町と高速化・複線化事業に関しておおむね合意し、新たな改善計画が実施されることになりました。

その概要をまとめてみました。(画像はすべてJR西日本より)
 
(1)複線化事業
まず、今回の事業の目玉は、大幅な複線区間の増加です。新たにJR藤森~宇治駅間、新田~城陽駅間が複線化されます。これにより、京都~城陽駅間が全て複線となります。また、山城多賀~玉水駅間の複線化も行われ、奈良線全線34.7キロメートルのうち、22.2キロメートル、全体の64パーセントが複線化されます。割合で表現すると、現在の3倍弱の区間が複線となります。現在は8.2キロメートル、全体の24パーセントが複線区間です。単線区間でも、棚倉駅で駅構内が改良され、1線スルー化されます。

奈良線1

複線化事業によって、列車の高速化や増発が可能になりますが、遅延対策にも大きな効果が見込まれています。JR西日本の最近の複線化事業としては嵯峨野線がありますが、嵯峨野線では、複線化によって、遅れる列車の割合が23%から8%になりました。奈良線でも遅れる列車の割合が3分の1程度に減少するのではないかと見込まれています。

(2)踏切保安度向上
複線化に合わせて、踏切の安全対策もすすめられます。まず障害物検知装置について。これまでレーザー光線を使って、「線」で障害物を検知する形でしたが、新たに、立体的に一定のエリアの障害物を検知する「3次元レーザーレーダー式障害物検知装置」が10カ所程度導入されます。

奈良線2

また、踏切警報時間の制御も改善されます。これまでは、列車が接近すると、通過・停車の区別なく、踏切警報装置が鳴動して遮断していましたが、これを通過列車と停車列車を区別します。それにより、踏切警報時間を短くすることができます。いわゆる「賢い踏切(通称)」で、これが10カ所程度導入されます。

奈良線3

(3)京都駅奈良線ホームの改良
京都駅の奈良線用8番・9番ホームの幅が4メートルから5.5メートルに拡幅されます。また、8番・9番ホームから橋上駅舎につながるエスカレーター・階段も新設されます。現在は8番・9番ホームから橋上駅舎へ行く場合、迂回しなければ上がれませんが、新階段・エスカレーターにより移動距離が短縮されます。合わせてエレベーターも新設されます。これらにより、8番・9番ホームから橋上駅舎まで移動するのに現在130秒程度要していますが、70秒程度に半減する効果が見込まれます。また、混雑も解消されます。

奈良線4

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(4)六地蔵駅の改良
六地蔵駅も改良されます。複線化事業に合わせ、ホームを京都方に移設し、ホームのが拡幅されます。六地蔵駅のホームは地形上、カーブが急で、列車とホームの間に隙間ができ、現在は櫛状ゴムにより隙間対策がされています。今回の改良工事で、ホームが京都側に移され、直線化されます。それにより、列車とホームの隙間が改善されます。

奈良線6

奈良線は、京都・奈良の2大観光地を結ぶ路線で、JRパスを使った外国人観光客利用者も多いです。ぜひ今後も改善を継続して、日本を代表する観光路線としても期待したいところです。

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