ホーム 新規開業・工事 京阪中之島線はどこへ行く。...

京阪中之島線はどこへ行く。「西九条延伸」の前に過去の検証を

失敗の挽回のための投資は危うい

シェア

京阪電気鉄道の中之島線に新たな延伸案が浮上しました。九条駅を経由して西九条駅まで延ばすというもの。夢洲IRとUSJへの両アクセスを得られるルートのようですが、実現するのでしょうか。

広告

IR誘致を視野

京阪中之島線は、天満橋~中之島間3.0kmを結ぶ路線です。もともとさらに延伸する計画があり、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号には「中期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として、中之島駅から西九条駅を経て新桜島、夢洲方面へ延伸する案が盛り込まれています。

しかし、開業10年を経た今も、延伸は具体化していません。2017年7月には、京阪ホールディングスの加藤好文社長が「夢洲への統合型リゾート(IR)誘致が決まれば、中之島線を九条駅につなげる」との考えを表明。西九条駅ではなく、九条駅へ延ばして地下鉄中央線と接続させる方針を明らかにしました。

地下鉄中央線は夢洲への延伸が計画されていて、中之島線が九条駅で接続すれば、京都と夢洲を乗り換え一度で結ぶことができます。IR誘致を視野に、観光客をターゲットにする方針を掲げたわけです。

京阪中之島線

訪日観光「ゴールデンルート」を

さらにこのほど、加藤社長は、九条駅を経由して西九条駅に至る計画を明らかにしました。日本経済新聞2018年2月15日付によりますと、まずは2024年に予定されている夢洲のIR開業に合わせて九条駅まで延伸、その後、西九条駅まで延ばす構想とのこと。西九条駅までの開業時期は利用予測を算出してから検討するそうです。

西九条駅には、JR大阪環状線のほか、桜島線や阪神電鉄なんば線も乗り入れていますので、延伸できれば中之島線からUSJや神戸へのアクセスが確保されます。

日経によると、「今回の計画は京都、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、夢洲を結び、京都―大阪間の訪日観光『ゴールデンルート』を完成させようという狙い」だそうです。

広告

低迷する利用者数

壮大な計画とは裏腹に、京阪中之島線の利用は低迷しています。2016年度「大阪府統計年鑑」によりますと、京阪中之島線の各駅の1日の乗降客数は、中之島駅8,871人、渡辺橋10,025人、大江橋6,003人、なにわ橋2,539人。合計で27,438人となっています。

淀屋橋駅の107,326人はもとより、北浜駅35,437人に比べても、その少なさは明らかで、中之島線が京阪の経営の重荷になっていることが察せられます。実際、開業時に乗り入れていた快速急行はほぼ廃止となり、日中時間帯に普通列車しか走らない路線になってしまいました。

この状況を打開するために、京阪としては、中之島線を九条駅や西九条駅とつなぐことで盲腸線状態を解消し、観光地を結ぶ路線に発展させようとしているのでしょう。

想定の2割

九条駅や西九条駅まで伸びれば西方向の旅客が増えますし、夢洲IRやUSJの訪問客の一部でも取り込めれば、中之島線の状況は改善するでしょう。ただ、延伸費用を回収できるほどの利用者増が見込めるかは、疑問も残ります。

中之島線の終点の中之島駅には、なにわ筋線の接続計画があります。なにわ筋線の開業により、利用者が増える可能性もありますが、中之島駅近辺の利用者を奪われる可能性も少なくありません。

中之島線は大阪市などが出資する第三セクターが整備しています。2013年度に作られた中之島線整備事業の事後評価表を見てみると、開業前に1日123,000人の利用者を想定していながら、実績値は27,000人(2012年)にとどまりました。わずか2割程度です。

全国市民オンブズマン連絡会議が2014年にまとめたデータによると、京阪中之島線は、過去10年間に開業した公営・第三セクター鉄道のうち、もっとも事前予測と実際の利用者数の乖離が激しかったそうです。

広告

延伸の前に総括を

中之島線整備事業の事後評価総括表では、「中之島線の輸送人員については、当初の計画に満たないものの徐々に定着が進んでいる」とし、開業後の実績値に基づいた需要予測として、2020年度に1日48,000人になると強気の見込みを示しています。しかし、現状の利用者数を見る限り、達成は困難でしょう。

事前予測値はもとより、事後評価表の予測値すら大きく下回る結果しか残せないのであれば、京阪中之島線は、事業として成功したとはとてもいえません。ならば、延伸を検討する前に必要なことは、「失敗の総括」ではないでしょうか。

中之島には1,300億円もの事業費が投じられ、そこには税金も含まれています。京阪電鉄が公金を使ってさらなる延伸を望むなら、「なぜ需要予測と実際の利用者数が、こんなにも異なっていたのか」をきちんと検証することが求められるでしょう。

鉄道事業は長期的な視野でみなければならず、短期的な利用者数だけで判断することは避けなければなりません。とはいえ、現状で想定の2割という利用者数は「長期的に見る」にしても少なすぎます。

巨額投資の失敗を挽回するために、さらに巨額の投資をすることは、傷口を広げることになりかねません。京阪が中之島線の延伸にこだわるなら、今度こそ間違いのない事業計画を練って欲しいところです。(鎌倉淳)


関連記事