東海道新幹線の次世代車両「N700S」デザイン発表。リニア開業前の「最後のフルモデルチェンジ」になるか

JR東海が、東海道・山陽新幹線の次世代車両「N700S」のデザインを発表しました。エッジの立った外観デザインが特徴的で、全席コンセントなどの客室設備を備えました。リニア中央新幹線開業前の最後のフルモデルチェンジ車両になりそうです。

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「最高」の自信作

「N700S」はJR東海が2020年に東海道・山陽新幹線への投入を予定している新型車両で、2016年6月に開発が発表されました。炭化ケイ素(SiC)素子のパワー半導体を駆動システムに使用した世界初の車両で、「S」は「最高」を意味する「Supreme」の頭文字とのことです。

産経新聞2017年6月28日付によると、開発に当たったJR東海の車両部長が「最新技術を全て盛り込んだ自信作」と胸を張ったそう。JR東海にとって、N700Sは「最高の自信作」のようです。

N700s外観
画像:JR東海プレスリリース

微気圧波や騒音を軽減

公表されたN700Sの外観デザインは、現行N700(N700A)と比べ、先頭部の形状に変化があります。N700の「エアロダブルウィング」を空力的に進化させ、左右両サイドにエッジを立てた「デュアルスプリームウィング」という形状に。走行時に生ずる風の流れを整え、トンネルに入った際に発生する「微気圧波」や走行時の騒音などを軽減するそうです。

ヘッドライト(前照灯)はN700に比べて20%拡大され、新幹線の前照灯では初となるLEDが採用されました。側面に入る2本の青いラインはN700と同じですが、先頭車両の運転室のドア付近に1本を付け加えています。これはN700Sの「S」を表現しているそうです。

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全席コンセント

車内設備では、グリーン車と普通車の全席にコンセントを設置。普通席コンセントは肘掛に配置されます。最近は高速バスでも全席コンセント車両が増えていますので、この仕様は当然でしょう。一方、Wi-Fiに関しての発表はありませんでした。

N700s室内
画像:JR東海プレスリリース

座席は、グリーン車で大きく改善されそうです。グリーン席のリクライニングシートを、足のくるぶを回転の中心とする構造に変更。座面と背もたれの角度を最適化することで、リクライニング時の太もも裏側への圧迫感を減らし、快適性を向上させます。

また、現状のグリーン車は意外と足元が狭いのですが、N700Sでは、グリーン席のフットレストを大型化するとともに、足元スペースを拡大します。読書灯の照射範囲も広げるそうです。

普通車でも、背もたれと座面が連動したリクライニングシートになり、着席時の快適性が向上するそうです。デッキはN700のレイアウトを踏襲し、曲面形状のパネルを採用しています。

グランクラス導入の発表はありません。座席総数1,323席の変更も告知されていないことや、デッキに大きな変化がないことから、荷物スペースは設けられないとみられます。

N700sグリーン席
画像:JR東海プレスリリース
N700S普通席
画像:JR東海プレスリリース

N700Sの「次」はリニア開業の頃

現在、東海道新幹線を走る車両はN700A(N700改造含む)、700系の2種類ですが、すでに700系は定期運用を外れています。JR東海では2019年度までに700系を退役させ、N700Aに車両を統一させる予定です。その翌年度となる2020年度に、次世代車N700Sが加わることになります。

N700の登場が2007年、N700Aの投入が2013年。そしてN700Sが2020年度に登場というタイムスケジュールです。つまり、最近の東海道新幹線では、6~7年おきに、「モデルチェンジ」といえる新型車両を投入してきています。

となると、N700Sの次の車両が登場するのは2026-2027年頃になるとみられます。リニア中央新幹線の開業予定は2027年ですから、N700Sは、リニア開業前最後の東海道新幹線の新型車両になるかもしれません。

リニア開業によって、東海道新幹線車両にどのような変化が起こるのかは、まだ分かりません。「N700Sの次の車両」はリニア開業を考慮した仕様になるかもしれません。N700Sでは1,323席が維持されると見られますが、その次の車両がどうなるのかも、少し気になります。(鎌倉淳)

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