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松前城「木造天守」は再建できるか。期待する人は「ふるさと納税」でもしてみたら?

北海道の松前城(福山城)で、木造天守を再建する計画が浮上しています。実現すれば、最北の木造天守となりますが、実現にはハードルもあるようです。

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最北端の日本式城郭

松前城は北海道松前町にある、日本最北端の日本式城郭です。1854年に完工した後、戊辰戦争後に建造物の多くが取り壊されましたが、天守は取り壊しを免れ、第二次世界大戦の戦災も受けませんでした。1941年には国宝にも指定されています。しかし、1949年に失火により消失、国宝解除となりました。

天守は1961年に鉄筋コンクリートで再建されています。しかし建造50年を経て老朽化し、2011年の耐震診断では震度6の地震で倒壊する恐れがあると指摘されました。そこで、現在の天守閣を耐震補強するか、取り壊して木造で復元するかの検討が進められています。

松前町の「町史跡福山城保存整備審議会」が策定した新たな保存活用計画では、松前城の天守の耐震化策として、耐震補強と木造による建て替え案が併記されました。

松前城

木造復元には20億円

「鉄筋補強」か「木造再建」か。NHK4月17日放送によりますと、かつて、松前町が行ったアンケートでは、7割以上が「木造での復元」を支持したそうです。どちらがいいか? と問われれば、「木造」と答える人が多いのは当然かも知れませんが、木造再建はそう簡単ではありません。

文化庁の承認を得て「木造天守」の復元をするためには、いくつかの要件が必要です。『森林環境2017 木造再建か、名古屋城天守閣』(伊藤友章)によりますと、基礎の石が残っている、設計図類が残っている、内部写真が残っている、の3つが条件になるそうです。

戦後消失した松前城天守は、この3点をクリアできる貴重な存在ではありますが、問題は費用です。

松前町の見積もりでは、木造復元費用は約20億円とのこと。同じく木造復元が決定した名古屋城が約500億円と見積もられていますが、松前城は規模が小さいためか、事業費としてはそれほど高くありません。それでも、鉄筋補強に比べれば4倍程度の金額です。

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木材を調達できるか

木材の調達も課題です。木造天守の心柱には、直径1m以上、樹齢が数百年規模の巨大なヒノキが必要だそうです。しかし、日本には、こうしたヒノキはほとんど残されていません。

上記『森林環境2017』によりますと、再建中の奈良・興福寺の中金堂の梁はカナダ産で、柱はカメルーン産だそうです。世界的に見ても、天守の心柱に使えるような大径木は貴重になってきているようです。

さらに、名古屋城天守閣の再建が絡みます。計画中の名古屋城天守閣の木造再建では、4400立方メートルもの木材が必要だそうです。これだけの需要が他に存在すると、松前城天守を同時期に木造再建する場合、木材の調達費用がさらにかさむ可能性がありそうです。

森林破壊の批判も

日本式城郭の木造再建は最近ブームになっていて、名古屋や松前以外にも、各地で計画があります。それに対して、森林保護の視点で批判も出てきました。城郭復元は生活に必要不可欠な事業ではありませんので、森林を破壊してまで行う価値があるかと問われると微妙です。

そのため、今後は、森林保護にも、より配慮しなければならなくなります。具体的には、集成材を使うなどの方法を考えるべきかもしれません。

木造再建なら国宝復帰も?

とはいえ、木造再建には多くのメリットがあります。なんといっても、観光客の集客力がコンクリート天守とは段違いです。また、木造は、きちんと手入れを続けていけば、鉄筋コンクリートよりもずっと長持ちですし、耐震性にも優れています。

遠い将来には、「平成城郭」として重要文化財や国宝になる可能性だってあります。長い目で見れば、木造再建には、掛けた費用に対する見返りはありそうです。

なんであれ、松前町のような小さな自治体には、木造天守の再建費用はかなりの負担にみえます。「木造天守に期待!」という方は、松前城にふるさと納税でもしてみたらいかがでしょうか。「松前城の保存整備に関する事業」を使途とする寄付も可能です。(鎌倉淳)

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