「ローカル路線バスの旅第22弾 水戸・偕楽園~長野・善光寺」の正解ルートを考える。関東平野横断の難題の最善解とは

テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」第22弾が放送されました。これは、太川陽介と蛭子能収がローカル路線バスを乗り継ぐテレビ番組です。今回のマドンナはアッキーナこと南明奈でした。26歳という史上最年少のマドンナです。

第22弾の目標は、茨城県水戸市の偕楽園から長野市の善光寺まで、路線バスを乗り継いで3泊4日で到達する、というものです。例によって、この正解ルートを検証してみましょう。

いつものことですが、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解のうえ、お読みください。

※以下、掲載時刻は確認しましたが、今回もルート検証が複雑で、間違いや勘違いがあるかもしれません。その場合はご容赦、ご指摘ください。

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実際に旅したルート

第22弾で実際に3人が旅したルートは以下のようになりました。時刻表上の定刻をわかる範囲で示しています。

▽1日目
偕楽園8:00→08:13水戸駅10:35→11:50石岡駅13:10→13:40土浦一高13:56→15:00下妻駅→徒歩6km→16:42菅谷17:22→18:00頃古河駅

▽2日目
古河駅06:15→徒歩10km→08:32中妻09:06→09:10間々田駅西口09:15→09:50小山駅西口10:10→10:28→徒歩5km→11:46栃木駅12:16→12:50道の駅みかも→徒歩2.5km→14:25佐野新都市BT14:33→14:56佐野駅BT15:42?→15:45?佐野厄除け大師16:14?→16:19?佐野駅

▽3日目
佐野駅07:35→08:01田沼庁舎08:10→08:59根古屋森林公園09:51→10:21やすらぎハウス10:31→11:37山前駅前→徒歩5km→イムス太田中央総合病院→徒歩5km→14:00太田駅北口14:30→15:08新田暁高校16:35→16:59伊勢崎駅南口・伊勢崎駅前17:25→17:55県立女子大学18:10→18:40田町18:58→19:40安中市役所

▽4日目
安中市役所07:18→07:45西松井田駅→徒歩6km→10:05横川10:15→10:49軽井沢駅10:50→11:31軽井沢病院11:35→12:06追分入口→徒歩4km→12:50御代田駅13:45→14:11岩村田15:37→16:03小諸駅16:15→16:57上田駅

ということで、上田で断念。目的地の善光寺には到達できず、失敗に終わりました。

ローカル路線バスの旅22弾
ローカル路線バス乗り継ぎの旅 第22弾 水戸・偕楽園~長野・善光寺
【出演者】太川陽介、蛭子能収、南明奈
【ナレーター】キートン山田

偕楽園近くのバス停から乗っていたら?

正解ルートを探してみましょう。

最初に、水戸駅に行かずに偕楽園の近くのバス停から乗っていたらどうでしょうか。番組内で映像が映し出された千波湖バス停から乗った場合を見てみましょう。同じ石岡行きのバスの1本前は水戸駅発06:40発なので、番組のスタートが午前8時であったなら、乗れなかったことになります。

そもそも、偕楽園からいきなり水戸駅以外の方向へバスに乗る決断をするのは無理ですし、これは水戸駅へ行くのが基本設定だったと思われます。

水戸駅の2時間待ちは正しかったのか?

番組では、水戸駅でいきなり2時間も待ちます。この時間が無駄だったのですが、もう少し早い時間に石岡方面に行くことはできなかったのでしょうか。

一つの方法として、水戸駅を8時20分の茨城空港へ行くバスがあります。これを使うと、以下のようにつながります。

▽1日目
偕楽園08:00→08:13水戸駅08:20→09:25茨城空港09:30→10:05石岡駅10:20→11:00土浦駅11:50→13:00下妻

ただ、水戸駅で7分で茨城空港経由の石岡行き経路を探し当てるのは難しく、現実的には無理だったでしょう。

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宇都宮ルートは可能だったか

では、水戸駅からの選択はほかになかったのでしょうか。番組では南西の石岡に向かっていますが、西へ向かうという選択肢もあったはずです。水戸駅からは、友部方面のバスが出ています。

▽1日目
水戸駅北口9:00→09:56友部駅11:15→12:09笠間ショッピングセンター14:52→15:27益子駅16:05→17:03宇都宮駅

このように、宇都宮駅までは徒歩なしで順調につながります。水戸駅での待ち時間も適度です。ただし、友部から笠間までのバスは月曜日運休なので、ロケ日が月曜だったらこの区間9kmを4時間ほどで歩かなければなりませんでした。

仮に一行がこのルートをとり、宇都宮駅に到達したとして、そこからどういうルートをたどるかは、かなり悩むでしょう。たとえば日光から中禅寺湖畔を経て片品、沼田へ抜けるルートがダイナミックですが、湯元温泉から丸沼高原まで17kmの峠越えが発生します。

あるいは日光から足尾へ抜けるバスもありますが、足尾から先はわたらせ高原鉄道と併走するので、この区間はバスが途絶えそうです。

となると、関東平野の北限をたどるしかありません。宇都宮駅からの方向は南西です。宇都宮駅からは東武日光線の楡木方面へのバスがあり、

▽1日目
宇都宮駅西口17:37→18:22楡木車庫

とつながります。ただ、楡木でバス便は途絶え、隣市の栃木市にある東武金崎駅までは徒歩になります。楡木の旅館に泊まると仮定して、2日目以降はこうなります。栃木からは実際ルートと同じ行程で旅したと仮定して確認してみましょう。

▽2日目
楡木車庫→徒歩4km→東武金崎駅前07:23→08:10栃木駅08:20→09:01道の駅みかも→徒歩2.5km→佐野新都市バスターミナル09:07→09:30佐野駅10:33→10:57田沼庁舎入口南10:59→11:47根古屋森林公園13:21→13:46やすらぎハウス15:12→16:11山前駅前→徒歩10km→太田駅泊

▽3日目
太田駅北口07:30→07:58新田暁高校08:05→08:29伊勢崎駅09:50→10:20県立女子大学10:40→11:15高崎駅前13:00→13:39安中市役所入口13:46→14:12西松井田駅→徒歩6km→横川17:15→17:49軽井沢駅18:15→18:27軽井沢病院18:42→19:08追分入口

▽4日目
追分入口→徒歩4km→御代田駅07:35→08:01岩村田09:42→10:48上田駅11:00→11:34信州上田医療センター14:03→14:47上山田力石公民館→徒歩2km→千曲市役所上山田庁舎16:47→17:15屋代駅17:20→17:46松代駅17:50→18:24長野駅18:45→18:52善光寺大門

ということで、午後7時前のいい時間に善光寺に到着します。2日目の徒歩が少ないため、徒歩距離は全部合わせても20km程度で、実際ルートよりは少なくなっています。

宇都宮に泊まっていたら失敗?

この宇都宮ルートは、初日に宇都宮で泊まってしまうと後が苦しくなり、楡木車庫まで行くことで4日目の到達が容易になっています。

そのため、このルートで宇都宮泊で失敗した場合、「宇都宮で午後5時に泊まってしまったから…」などという後悔が生まれたかもしれません。

宇都宮に泊まっても善光寺に到達することはできますが、それについては後述します。いずれにしろ、宇都宮経由でも成功することは可能で、これはスタッフの想定した「正解ルート」の一つではないかと考えます。

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下妻の徒歩6kmは避けられたか

実際ルートに戻りましょう。一行は土浦から下妻へのバスに乗り、下妻で行き詰まり6kmの徒歩を余儀なくされます。この徒歩を避ける方法はなかったのでしょうか。

これは、土浦から水海道へ抜ければ避けることができなくはありません。以下のような接続です。

▽1日目
土浦駅14:00→15:10水海道16:30→17:04岩井バスターミナル18:28→18:56猿島バスターミナル

▽2日目
猿島バスターミナル07:29→08:30境クリニック・境車庫09:02→09:45頃古河駅

徒歩移動は避けられましたが、2日目の古河駅の出発が午前10時頃になりますので、実際ルートより3~4時間程度の遅れが出てしまいます。したがって、古河を目指すなら下妻経由は正しい選択だったといえます。水海道経由でうまくいくには、土浦を13時に出るバスに乗る必要があったようです。

2日目はどうすればよかったか

一行は初日に石岡を経由して古河まで着きました。初日の距離としては順調ですから、石岡・下妻経由は間違った選択ではなかったといえます。問題は、2日目の行程が短すぎたこと。ここに、今回の失敗の原因があるとお考えの方も多かったのではないでしょうか。

では、2日目にどうしたらよかったのでしょうか。

ポイントとなったのは古河からのルートです。番組では、JRバスのスタッフに相談して、ルイルイは小山方面へ抜けることを決断します。しかし、古河から長野に向かうなら西へ向かわなければならないのに、小山は北に位置します。方向が違います。

順方向を目指すなら、国道354号線を軸に、館林、太田方向へ向かうのが合理的です。この方向へのバスは、JR古河駅からはありませんが、じつは、東武鉄道の新古河駅から出ています。

ところが、古河駅と新古河駅を結ぶバスはありません。古河駅は茨城県古河市に位置し、新古河駅は埼玉県加須市に位置します。両駅間にバスがないのは県が違うからかもしれません。とはいえ、距離は3kmほどで、歩いても40分あれば着くでしょう。

新古河から太田へ至るルート

新古河駅からは、以下のようにつながります。

▽2日目
新古河07:00→08:02加須駅南口08:42→09:13鴻巣駅東口09:18→10:00頃東松山駅10:05→10:50熊谷駅11:05→11:53太田駅12:53→13:31新田暁高校13:35→13:59伊勢崎駅17:25→17:55県立女子大学18:10→18:40田町18:58→19:40安中市役所

このルートでは東松山から熊谷を経由する大回りをしていますが、バスの終点やターミナルをつないでいるので、先が見通しやすく、太田までの難易度はそれほど高くはありません。鴻巣から東松山を経て熊谷というのは、第13弾でも通ったコースです。

しかし、こんな大回りをしない、という可能性もあります。その場合は、館林を目指すことになりますが、以下のようなルートがあります。

▽2日目
新古河07:00→07:12柳生駅→徒歩1km→金蔵院前08:38→09:35館林駅前10:15→10:42千代田町役場11:45→12:30太田駅(以下同じ)

このルートの成否は、柳生から金蔵院前までの歩きルートを発見できるか、にかかっています。現地の人の情報がなければムリだったでしょう。

館林駅前へは、東武線柳生駅の隣駅の板倉東洋大駅からバスが出ています。そのため、柳生から板倉東洋大まで3km程度を歩くという方法もあります。

▽2日目
新古河07:00→07:12柳生駅→徒歩3km→板倉東洋大前08:43→09:20館林駅前10:15→10:42千代田町役場11:45→12:30太田駅(以下同じ)

こちらも現地の人から情報を得なければわからないルートですが、鉄道駅から鉄道駅まで歩けばいいので、発見しやすかったかもしれません。

いずれにしろ、新古河からバスに乗れば、2日目に安中までたどり着けます。実際ルートの3日目の宿泊地が2日目になるわけで、後の行程が断然楽になります。

新古河ルートが「正解」だった?

では、新古河ルートで太田へ出て、以下、実際ルートと同様にたどったとしてどうなるでしょうか。3日目に上田泊、さらに4日目まで見てみましょう。

▽3日目
安中市役所07:18→07:45西松井田駅→徒歩6km→10:05横川10:15→10:49軽井沢駅10:50→11:31軽井沢病院11:35→12:06追分入口→徒歩4km→12:50御代田駅13:45→14:11岩村田15:37→16:03小諸駅16:15→16:57上田駅

▽4日目
上田駅08:20→08:28信州上田医療センター08:58→09:42坂城10:40→10:49上山田力石公民館12:00→12:04千曲市役所上山田庁舎12:04→12:38屋代駅13:30→13:58松代駅14:00→14:29長野駅14:40→14:47善光寺大門

4日目に余裕で到着できます。これも「正解ルート」の一つでしょう。

こうしてみると、「新古河駅」を発見できたか否かが、今回の成否を大きく分けたポイントといえそうです。つまり、初日に石岡へ向かったことは間違いではなく、2日目に小山に向かってしまったのが間違いだった、ということです。

佐野から挽回できたのか

実際ルートでは、2日目に疲弊し佐野泊を余儀なくされて、3日目を迎えます。「佐野脱出」に手こずったのが敗因の一つでしょう。

では、佐野に泊まった段階で、すでに挽回はムリだったのでしょうか。

いろいろ検討してみましたが、逆算してみますと、3日目に軽井沢に入っていなければ、ゴールは難しかったようです。となると、3日目の横川発の終バス19:01発に乗るのが最低条件です。安中市役所が16時発、高崎駅13時のバスに乗る必要があります。そうなると、2日目に太田に着いていなければならず、佐野泊では挽回できません。

一行が佐野についたのは午後3時頃。体力的な問題で宿泊を決めましたが、時間的にはまだ動けます。仮に先を急いだらどうなったでしょうか。

佐野から足利へは、実際ルートでは田沼を経由する大回りをしています。しかし、佐野市との市境近くまで、足利市のコミュニティバスが来ており、市境近くに寺岡町というバス停があります。佐野駅から寺岡町までは約4km。ここまで歩くことができれば、東武足利市駅までは行けます。

さらに、足利市南端の南大町までバスを乗り継げば、太田市境近くまではたどり着けます。そこから5kmほどで太田駅に着けます。

▽2日目
佐野駅→徒歩4km→寺岡町17:32→18:26東武足利市18:45→19:15頃南大町→徒歩5km→太田駅

時刻表はこのようになり、佐野からの挽回は可能だったわけです。しかし、現実問題として、あと9kmも歩けなかったでしょう。

なお、前述の「宇都宮ルート」で、宇都宮に泊まった場合は後が苦しいと書きましたが、この「寺岡町ルート」を使えば2日目に太田に着くことが可能です。そのため、宇都宮に泊まったら不可能だった、というわけではありません。

宇都宮ルートを使った場合、古河での長距離徒歩がありませんから、実際ルートに比べれば一行は疲弊していなかったとみられます。そのため、2日目に足利から太田まで歩ききることはできたでしょう。

平野部横断は難しい

今回は、水戸から長野という、距離的には短いお題でした。ただ、平野部を突っ切る設定は、ルートの可能性がたくさんありすぎて難しいものです。

今回、無理なく探せる最善解は、水戸→石岡→古河→館林→太田→伊勢崎→高崎→軽井沢→上田→長野と思います。正解を一つあげるとすればこれになるでしょう。また、宇都宮経由も不可能ではありませんでしたので、次善解だったと思います。ここには紹介しきれませんでしたが、他にもルートはありますし、時刻表上だけの乗り継ぎなら、もっと早く着くことも可能です。

まとめると、今回のお題は、さまざまなルートの可能性がある、という点で興味深い目的地設定だったと思います。そして、実際に旅をする出演者にとっては、かなり難解だったに違いありません。(鎌倉淳)

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