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九州新幹線長崎ルート整備に新局面。「フル規格優位」で再検討か

費用対効果でFGTとミニを上回る

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九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)の建設問題が、新たな局面を迎えそうです。国交省は、開発中のフリーゲージトレイン(FGT)について、実現見通しは立ったものの、山陽新幹線乗り入れはできないとの見解を示しました。また、フル規格で建設する場合は、6,000億円規模の建設費がかかるものの、費用対効果は高いとしています。

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2022年度に暫定開業

九州新幹線長崎ルートは、新鳥栖~長崎間を結ぶものです。2008年に武雄温泉~諫早間がスーパー特急方式で着工され、2012年にフル規格に変更のうえ、諫早~長崎間の建設も決まりました。武雄温泉~長崎間66kmは、2022年度に開業予定です。

残る新鳥栖~武雄温泉間は、沿線自治体の佐賀県が費用負担に難色を示していて、着工予定はありません。新たにFGTを開発し、博多~長崎間を運行するとしています。

しかし、FGTの実用化は難航しており、2022年度の武雄温泉~長崎間開業には間に合わないことがわかっています。そのため、博多~武雄温泉間の在来線特急と、武雄温泉~長崎間の新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」で、暫定開業が予定されています。

九州新幹線

FGTの山陽新幹線乗り入れはできず

FGTの開発遅延を受けて、国土交通省は長崎ルートの整備方式を再検討。2018年3月30日に、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会に報告します。

国土交通省が公表した資料によりますと、FGTの整備費用は800億~1,400億円。安全対策に一定のメドが立ったとして、2027年度に導入可能とされました。

しかし、FGTは最高速度が260km/hで、他の車両が300km/hで運転する山陽新幹線区間を走るとダイヤ編成で問題が生じます。FGTが300km/hで走行するのは現時点では困難なため、国交省は、FGTの山陽新幹線乗り入れはできないとの見解を示したとのことです。

山陽新幹線のFGT乗り入れについては、JR西日本が否定的な姿勢を示してきましたが、国交省がそれを追認した形です。

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フル規格は6,000億円規模に

新鳥栖~武雄温泉間をフル規格で建設する場合、整備費は概算で6,000億円になる見通しです。

沿線自治体である佐賀県の負担額は1,000億円を超えてしまいます。同県は独自試算で、負担額を800億円以上と計算してきたため、それを上回る金額がはじき出されたことで、受け入れは一層困難になったといえそうです。

フル規格で建設する場合、環境アセスメントに約4年、工期は約12年と見込まれました。仮に建設決定したとしても、完成は早くても2030年代半ばになりそうです。それまでは、リレー方式での営業が続くことになります。

ミニ新幹線も1,000億円以上

新鳥栖~武雄温泉間を改軌するミニ新幹線方式も検討されました。複線のどちらかだけを改軌して単線並列とする案と、複線とも三線軌条とする案です。

ミニ新幹線の整備費はフル規格よりも抑えられるものの、1,700億~2,600億円程度はかかります。工期は整備方法により異なりますが、約8~18年とされました。

整備費はFGTと大きく変わらないようですが、ミニ新幹線は山陽新幹線に乗り入れられるというメリットがあります。しかし、在来線への影響が大きいというデメリットもあります。

佐賀県の費用負担が比較的小さく、長崎線の並行在来線化も防げるので、実現可能なら落としどころにはなりやすそうです。

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費用対効果が高いのはフル規格

工費だけ見ると、おおざっぱにいって、フル規格が6,000億円、ミニが2,000億円、FGTが1,000億円という試算です。フル規格が最も高額ですが、費用対効果でみればフル規格が優れているという結果になったそうです。

「カネはかかるが、フル規格優位」という、至極当たり前の結論を、国土交通省が出したとも受け取れます。とはいえ、現行の整備新幹線の建設スキームでは、佐賀県が負担に同意しなければ作れません。

佐賀県を例外として負担を軽くすれば、今後の新幹線建設でも「例外適用」を求める自治体が出てきかねません。難しい問題で、最終的な決断は、政治に委ねられることになりそうです。(鎌倉淳)


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