神戸にLRTは導入できるか。路面電車復活の夢は楽しいけれど、どこに線路を敷くの?

神戸市が次世代型路面電車「LRT」(ライト・レール・トランジット)の導入の調査を開始するようです。2014年度の市の予算案に約800万円が計上されます。2013年10月の市長選で、LRTの導入検討を公約に掲げた久元喜造市長が当選したことを受けたものです。

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南北方向のアクセス改善狙う

神戸市はもともと東西方向の交通手段は豊富です。JR、阪急、阪神、地下鉄西神・山手線、神戸高速線、地下鉄海岸線がすでに存在します。しかし、南北方向の交通手段に乏しいという特徴があります。

とくに三宮エリアから北野や旧居留地方面への南北アクセスは貧困で、バス以外に交通手段がありません。したがって、LRTの建設も南北方向のアクセス改善が主目的のようです。

神戸市はこれまでにもLRTの導入を検討しており、2007年には路面電車に見立てたバスを中心部で走らせ影響を調べる社会実験を実施しています。しかし、自動車交通や既存交通機関への影響、採算性などの課題もあり、進展はありませんでした。今回の調査の内容は明らかではありませんが、まずはルート案が検討されると思われます。

フラワーロード
写真:神戸市ホームページ

シティループのルートはたどれない

もし三宮付近にLRTを敷くのなら、ベースとなるのは、現在の巡回バス「シティーループ」のルートでしょう。シティループは、中突堤からハーバーランド、旧居留地、三宮、北野、新神戸駅と回り、再び三宮、南京町、メリケンパークを経て中突堤に戻ります。神戸市中心部の観光地を網羅し、南北方向のアクセス性も高いバス路線で、観光客には好評です。

しかし、シティループのルートをLRTがそのままたどることはできません。神戸市中心部は一方通行が多く、「シティループ」のルートも一方通行の制約を受けているからです。また、シティループの経路は細い道が多く、軌道を敷くのには現実的でない区間も多数含まれます。さらに、北野エリアへは急坂ですので、LRTで登り切れるかはわかりません。

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 フラワーロードにLRTを敷けるか?

シティループは、南北のメインストリートであるフラワーロードを経由していますが、ここにLRTを敷くのも困難でしょう。フラワーロードは自動車の交通量が多すぎて、軌道を敷けば交通渋滞を引き起こすことが明らかだからです。かといって、JRの高架をくぐって南北を貫く道路で、軌道を敷けるだけの幅があるのは、三宮にはフラワーロードしかありません。結局、三宮付近で南北方向のLRTを地上に建設することは不可能に近いように思えます。

となると、LRTを作るとしても、三宮駅付近から旧居留地を経て中突堤に至る程度の路線くらいしか現実的ではありません。しかし、それだけならシティループで十分ではないか、という結論になりそうです。それ以外のいったいどこにLRTの軌道を敷ける道があるのでしょうか。

より抜本的に三宮付近の南北方向の交通軸を考えるなら、地下か高架でJRをまたぐ軌道交通を作ることです。その場合は、地下なら地下鉄海岸線の延伸、高架ならポートライナーの延伸が合理的でしょう。

今さらの話ですが、LRTにふさわしい路線があるとすれば、地下鉄海岸線のルートだったような気がします。たとえば海岸線が地下LRTで建設されていれば、乗り入れる形で各所にLRTを地上で走らせることができていたかもしれません。

6種類目の軌道系交通機関を作るの?

そもそも、神戸には軌道系交通機関の種類が多すぎるという問題点があります。狭軌のJR、標準軌の阪急、阪神、神戸高速、西神・山手線、北神線、ナローの神戸電鉄、リニア式の海岸線、新交通システムのポートライナー、六甲ライナーと5種類もあります。これらと乗り入れできないLRTを、6種類目の軌道系交通機関として作るのは、効率的な施策には思えません。

「路面電車の復活」の夢は楽しいものです。筆者も、神戸にLRTができたら素晴らしいと思う気持ちはあります。しかし、これから軌道系交通機関を作るなら、既存路線に乗り入れできるものを作るべきではないでしょうか。

どうしても路面電車というのなら、交通機関としてではなく観光資源としてごく短距離で作ればいいでしょう。北野坂に路面ケーブルカーでも敷けば話題になるかもしれません。

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