国際線の手荷物が南海難波駅で受け取り可能に。「逆シティエアターミナル方式」は定着するか?

関西空港が、国際線到着手荷物を南海難波駅で受け渡しをするサービスを検討しているようです。実現すれば国内初の事例になりますが、定着するのでしょうか。

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関空運営会社が南海電鉄と交渉

産経新聞2016年10月23日付によりますと、関西空港を運営する関西エアポートが、「関空に到着した国際線の利用者を対象に、航空機に預けた手荷物を鉄道のターミナル駅で直接受け取れるサービスを導入する方針を固めた」とのことです。

てはじめに南海電鉄と交渉を開始し、南海難波駅での早期のサービス開始を目指しているそうです。

仕組みとしては、手荷物が南海特急「ラピート」などで難波駅まで運ばれ、利用者は難波駅のカウンターでピックアップする、という形です。

「関西エアポートにとっては、空港内での手荷物引き渡しが省略され、業務の効率化につながる。一方、南海電鉄では、乗客がスーツケースなどの大荷物を列車内に持ち込むことによる混雑やトラブルを防ぐ効果が期待される」ということです。

ラピート

「搭乗手続」サービスは存在した

こうしたサービスは、海外では導入している空港がありますが、日本国内にはありません。日本でも、かつては東京シティエアターミナルや大阪シティエアターミナル、南海難波駅などで、「搭乗手続」や「手荷物預け入れ」ができるサービスが存在しました。

しかし、到着手荷物を空港以外で受け渡しするサービスは、実現すれば日本で初めてではないかと思います。いわば「逆シティエアターミナル方式」とも言える形です。

飛行機到着時刻の何分後に受け渡せるか

では、実現したとして、このサービスは定着するでしょうか。ポイントは、「難波駅の受け渡し時刻が、飛行機到着時刻の何十分後に設定されるか」にかかっているでしょう。

荷物を飛行機から降ろして列車に積むには相応の時間がかかります。飛行機到着時刻からラピートへの積み込みには最長60分程度はみる必要があるでしょうし、関空~難波駅と難波駅での取扱時間もあわせるとさらに60分程度はみることになるでしょう。

そうなると、難波駅での受け渡しは、早くても飛行機到着後120分後くらいに設定されるのでは、と思います。

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荷物が難波に着いてない!?

一方、旅客は、入国検査が混雑していなければ、それより早く移動できます。したがって、スムーズに入国できれば、荷物より早く「ラピート」に乗れる可能性があり、荷物より早く難波駅に到着するかもしれません。

その場合、旅客は難波駅で「荷物が着いてない!?」と待たされるハメになります。

こうした事態を避けるため、航空券とラピートのチケットをセットで発売するという方法もあります。ただ、その場合、今度は関西空港駅で、旅客が待たされることになります。

大荷物が大変なのは「難波から先」

荷物の中継点が増えれば、時間は余分にかかりますし、ロストバゲッジの可能性も高まります。それに、大荷物の運搬が大変なのは「難波から先の地下鉄などの郊外電車」であり、「ラピード」ではありません。

そう考えると、日本人でこのサービスを利用する人は、それほど多くないのではないか、と思います。

ただ、外国人の場合は話が違うかもしれません。外国人の入国検査は日本人よりも時間がかかりますから、旅客が荷物より早い、というケースは少ないでしょう。「入国検査に手間取っている間に、荷物が先に難波に着いてしまった」ということすらあるかもしれません。

外国人にはありがたいサービスか

外国人にとっては、見知らぬ国の鉄道移動は不安でしょう。「鉄道と言えば治安が悪い」という国もありますし、そういう国の方は、荷物を市内まで安全に運んでくれるサービスは心強いかもしれません。

難波駅からはタクシーに乗る人も多いでしょうから、「難波まで運んでくれればありがたい」と考える人もいるにちがいありません。ならば、外国人には、このサービスは受けるかも。

いずれにしろ、旅行者の選択肢が増えることはいいことです。(鎌倉淳)

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