JR東日本がスキーのキャンペーン「JR SKISKI」で6年ぶりテレビCMを実施。「JRスキーブーム」は再来するか。

JR東日本が2012年12月12日から、6年ぶりにテレビCMによるスキーキャンペーンを展開しています。ターゲットは若者。「スキー離れ」が進む若者に向けてPRし、スノーレジャーの人気再燃を狙う、というものです。冨田哲郎社長は、「いまの若い人もスキーの楽しさを知って、青春を謳歌してほしい」と記者会見で思いをぶつけました。

昨年あたりから、スキー人気は復活の兆しを見せています。JRがそれを察知し、人気を盛り上げようとキャンペーンに力を入れ始めたのでしょう。

スキー人気の復活は、ゲレンデに足を運んでみればわかります。昨年、筆者はいくつかのスキー場を回ってみましたが、2000年代前半の閑散状況がウソのように混雑している状況に遭遇しました。すべてのスキー場が混雑しているわけではないでしょうが、不人気のスキー場はすでに淘汰され、一定レベルの有名ゲレンデでは客足は回復しつつある、という状況を実感しています。

ただ、スキーバブルの時代と比べると決定的に違う点があります。それは客層です。かつては若者グループやカップルがスキー・スノボ客の主力でしたが、現在はファミリーと外国人が台頭してきています。もちろん若者は今もいますが、目立つのはファミリーと外国人。若者に限って言えば、「スキー離れ」が進んでいる、というのは事実でしょう。

そこで、JRは開拓余地のある若者をターゲットにしたスキーキャンペーンを放ったと思われます。最近の若者はクルマを持たない人が増えたので、JRのターゲットとしても適しています。ファミリーはクルマでスキーに行くので、JRのキャンペーン対象としては適さない、ということでしょう。

JR skiski イメージキャラクターは本田翼

もう一つのスキー台頭層である、外国人に向けても、JR東日本はターゲットにしています。台湾をターゲットにした「東京+雪遊び」という訪日観光需要を狙ったキャンペーンも同時に展開しているのです。台湾の地下鉄での車体ラッピング広告やテレビCMも展開する予定のほか、「JR Kanto Area Pass」にガーラ湯沢駅まで行けるオプション券を設定したりしています。東京を訪れた台湾人に、日帰りでスキーをして貰おう、という戦略です。

こう見てみると、JR東日本のキャンペーンは、「スキー人気の回復に便乗して、JRの客層になりうる若者と外国人を狙ったもの」といえるのではないでしょうか。こうした狙いは正鵠を得ていると思いますし、スキー人気の復活に一役買うのは間違いないでしょう。

ただ、残念なことに、キャンペーンの内容が中途半端にみえます。お金のない若者を呼び寄せるための、「おトクなスキー用きっぷ」が何も発売されないからです。発売されないどころか、JR東日本は、今年「GALA日帰りきっぷ」を廃止しました。GALA湯沢スキー場を日帰りで訪れるにはとても便利で安いきっぷでしたが、これをなくしてしまったのです。

今回の「JR SKISKI」キャンペーンで設定されたのは「おトクなびゅう旅行商品」だけです。このうち、「インターネット限定!平日の新幹線自由席で行くびゅうスキー商品」はたしかに安いですが、肝心のウェブサイトで空席状況がわからない上に、購入手続きにはメールのやりとりが必要で煩雑です。そのほか、「スーパーモバトク」のガーラ湯沢設定などを追加していますが、これもJRを使い慣れていない人とって、わかりにくさは否めません。

ターゲットが若者なので、インターネット商品を中心に展開する、という意図は理解できます。しかし、決して使いやすいとはいえない「びゅう」や「えきねっと」のサイトで、席数限定で発売する割引プランだけで、「いまの若い人もスキーの楽しさを知って、青春を謳歌してほしい」という富田社長の思いは伝わるのでしょうか。

たとえば、「インターネット限定!平日の新幹線自由席で行くびゅうスキー商品」の「GALA湯沢」はリフト券込みで6900円で格安です。これをJRの自動券売機でも販売すれば利便性は格段に上がるのですが、そうするとスキー客以外のビジネス客にも使われてしまいます。そういう心配があり、「びゅう」のネット専用商品にしていると思われます。

ただ、「びゅう」のウェブサイトをキャンペーンの販売の主力に据えるなら、ウェブサイトの改善は不可欠でしょう。「自由席の日帰りプラン」なのに、「席数限定」で「空席があるかどうかオンラインではわからない」というのでは、売る気がないと思われても仕方がありません。このプランが今年の「JR SKISKI」の目玉だとすれば、JR東日本の本気度が疑われます。

それと、割引が「平日限定」というもの疑問が残るところ。ターゲットが大学生なら平日でもいいだろう、という考えは、昔大学生だった人の発想です。最近の大学生は授業にマジメに出るので平日でも忙しくなっています。JRの担当者は大学がレジャーランドだった時代に卒業したのかもしれませんが、今は大学生だって週末のほうが都合が良いのです。週末の若者に向けた割引プランを増やせないと、結局「JRスキーブーム」はやってこないのではないでしょうか。

JR東日本が、スキーキャンペーンに本腰を入れたのはとても喜ばしいと思います。ならば、もう少し客足を伸ばす商品設定を期待したいところです。

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