「北陸フリーきっぷ」が2013年3月31日限りで廃止。「最後の激安フリーきっぷ」が消滅した理由とは

東京エリアから北陸エリアへの旅行に便利だった「北陸フリーきっぷ」が、2013年3月31日の発売を以て廃止されることになりました。北陸方面へ出かける旅行者やビジネスマンに広く愛用されているきっぷだけに、衝撃のニュースです。

「北陸フリーきっぷ」の代替として、「北陸フリー乗車券」が2013年4月1日より登場します。「北陸フリー乗車券」は、「北陸フリーきっぷ」と往復の経路・フリーエリアが同じで、特急料金が別途となったものです。

「北陸フリーきっぷ」は、特急料金込みで21,500円(普通車タイプ)でした。これに対し、「北陸フリー乗車券」は、特急料金は全て別で10,500円です。東京から金沢を例に取ると、北陸フリー乗車券を利用して指定席で往復すると計20,780円ですから、金沢単純往復の場合は値下げになります。また、自由席利用の選択肢もできますので、自由席でも構わないという人には、大幅値下げといえなくもありません。

そのため、単純往復の出張ビジネスマンには値下げといえますし、正規料金25,420円に比べるとさらに格安なきっぷの登場、と解釈することも可能です。しかし、「フリーエリア」を活用して旅行しようとしている人には実質的な大幅値上げといえます。なにしろ、北陸フリーエリア内は普通列車の本数より特急が多いのですから、特急が別料金になると移動がしづらくなります。

いずれにしろ、今回のきっぷを「値上げ」と表現するのは一面的で、もちろん「値下げ」と表現するのも正しくありません。

上越新幹線

ところで、「北陸フリーきっぷ」は、JR東日本が発売する「最後の激安フリーきっぷ」でした。かつて、JR東日本には「ぐるり北海道フリーきっぷ」や「青森・函館フリーきっぷ」など、往復の特急指定席とフリーエリアの特急自由席乗り放題がセットになった「激安フリーきっぷ」が豊富にあったのですが、年を経るごとに減少。「三連休パス」「土日きっぷ」といった特急乗り放題の全線パス的なフリーきっぷも消滅しており、最後まで残っていたのが「北陸フリーきっぷ」でした。

同じ2013年3月31日に周遊きっぷも廃止されますので、こうした「往復とフリーエリア内特急乗車可のきっぷ」は、JR東日本の販売分としてはほぼ消滅します。

つまり、北陸フリーきっぷの廃止は、このきっぷに何か問題があったというよりは、JR東日本の販売政策の修正の延長上にあるといえるでしょう。特急券は基本的には別料金で購入して貰う、というのがここ数年のJR東日本の基本方針といえます。

ただ、だからといって一概に値上げというわけでもありません。上述したとおり、北陸方面へは使い方によっては値下げになる代替きっぷが発売されていますし、他のエリアでも似たような特急券別の格安きっぷの販売は続けられています。年末年始の繁忙期にも、「ふるさと行きの乗車券」という、割引率の高い乗車券が発売されました。

JR東日本がなぜこういう方針を取り始めたかについては、はっきりした理由はわかりません。「特急を乗り回す鉄道ファンの排除」と解釈する人もいますが、「一列車あたりの採算の透明化」「各支社の採算性の向上」と説明する関係者もいます。特急・新幹線はJRの運輸部門の屋台骨ですから、それを安売りするのは止めよう、という意思決定がなされたのかもしれません。

また、JR東日本では、2012年10月30日に「グループ経営構想Ⅴ」を策定していますが、そのなかで、「えきねっと」の利便性向上や、旅行商品の「ダイナミックパッケージ」化を実現することを目指すことが記されています。2020年までの目標として、インターネットや機器を利用しての商品購入割合を7割にするとしています。

実際、「えきねっと」では新幹線の格安プランの販売が拡充されています。「ダイナミックパッケージ」はまだ実現されていませんが、「びゅう」による新幹線・特急利用の格安な旅行商品は豊富に存在します。インターネットを利用した低価格の旅行商品は今後も拡充されていくとみられます。

そう考えると、「紙の格安きっぷ」自体が、旅の道具としての曲がり角を迎えつつある、といえるのかもしれません。

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