「フリーゲージトレインは2022年度に間に合わない」。JR西日本社長が断言。米原ルートには及び腰

JR西日本の真鍋精志社長は、2月19日の記者会見で、北陸新幹線への乗り入れ車両として開発中のフリーゲージトレインについて、2022年度の敦賀開業時までに「間に合わない」と断言しました。JR西日本が2022年度までのフリーゲージ開発が無理であることを明確にしたのは、これが初めてです。

また、米原ルートに関する問題点も指摘し、消極的な姿勢を示しました。

広告

2025年度だって難しい

北陸新幹線の金沢~敦賀間の延伸開業は、従来は2025年度とされてきました。従来計画では、2025年度までにJR西日本がフリーゲージトレインを導入し、湖西線経由で敦賀から北陸新幹線に乗り入れることを想定していました。

ところが、政府・与党が、敦賀開業を3年前倒しすることを決め、開業時期は2022年度となりました。となると、北陸新幹線仕様のフリーゲージトレインの開発も3年早めなければなりません。真鍋社長は、それが無理であることを明言したわけです。

真鍋社長は、「技術的に確立するにはどんなにがんばっても10年かかる」と述べました。10年後とは2025年度、つまり従来の敦賀開業予定時期です。真鍋社長の発言を斟酌すると、「2025年度だって難しいのに、2022年度なんてムリムリ」ということでしょうか。

フリーゲージトレイン画像:川崎重工

敦賀乗り換えが現実に

となると、2022年度に敦賀開業が実現した場合、関西~北陸は、敦賀駅で乗り換えになります。具体的には、大阪~敦賀が「サンダーバード」(あるいは「リレーつるぎ」などの名称)、敦賀駅ホーム対面で「つるぎ」に乗り継ぐ、という形が想定されます。

この場合、たとえば大阪~福井なら1度の乗り換えですみますが、松任や高岡のように新幹線の駅が設置されない在来線駅へは、2度の乗り換えが必要になってしまいます。

広告

米原ルートの問題点も指摘

真鍋社長は同じ日の記者会見で、北陸新幹線米原ルートに関しての問題も指摘しました。東海道新幹線のダイヤが過密である、東海道新幹線と運行システムが違う、などの点を挙げたそうです。

湖西ルートや小浜ルートに関しては、「主体的にルートを決める立場にない」としました。主体的にルートを決める立場にない、といいながら、米原ルートに関してだけは問題点を列挙しているわけです。JR西日本は、以前から米原ルートに及び腰でしたが、最近は、「米原ルート阻止」という姿勢を鮮明にしてきたのでしょうか。

フリーゲージトレインのほうが有利

JR西日本が米原ルートを避けたいのは当然です。米原~新大阪間がJR東海になるので、JR西日本の収入が減るうえに、JR東海との兼ね合いで北陸新幹線のダイヤが自由に組めなくなるからです。

JR西日本としては、フリーゲージトレインさえ完成すれば、関西と北陸を直結できます。フリーゲージトレインなら新大阪駅でなく大阪駅まで乗り入れることもできますし、関西空港への直通列車を走らせることもできます。湖西線の採算性も高いまま維持できるでしょう。

そう考えると、米原ルートができるよりも敦賀止まりのほうが、JR西日本には都合がよさそうです。他のルートも含め新大阪まで新幹線ができるより、フリーゲージトレイン乗り入れのほうが有利とさえいえるかもしれません。

「敦賀止まりでいい」が本音?

フリーゲージトレインの技術はまだ確立していませんが、実用段階が視野に入ってきたのは確かです。全くの想像ですが、それを踏まえて、JR西日本としては、フリーゲージトレインを使った運行形態が、関西~北陸の最適解と判断している可能性があります。

表向き、JR西日本は「大阪までのフル規格」を求めていますし、実際に小浜、湖西のどちらかで新大阪まで完成すれば悪い話ではないでしょう。しかし、両ルートは実現可能性が低いのが現状です。そういう前提で「米原ルートになるくらいなら、できないフル規格を求めて、実質的に敦賀止まり固定」を狙っている、とも考えられます。

極論をいえば、米原ルートが完成してもフリーゲージトレインを使った湖西線直通列車を残すこともありえます。米原経由の新幹線も、湖西線経由の在来線も、大阪~敦賀の所要時間の差はそれほど大きくはなりません。大阪駅直通ならそのほうが便利、と考える利用者もいるでしょうから、「新在直通」の需要は残るでしょう。

わかりやすくいえば、北陸新幹線は敦賀で終わりでいいんじゃないの? というのが、真鍋社長の本音なのかもしれません。

広告
前の記事北海道&東日本パスの2015年の発売期間、利用期間、新フリーエリアが発表。長野~直江津間は利用できず
次の記事JR東日本ローカル線の輸送密度は500以下が多数。実質最下位は陸羽東線。幹線も県境は苦戦